行程・コース
天候
1日目:雪 2日目:曇り時々雪
登山口へのアクセス
バス
その他:
まいたびの貸切バスで移動
この登山記録の行程
「まいたび」のツアーの集合場所は、竹橋の毎日新聞社
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
合掌造りの集落の雪景色と里山歩き。雪深い山里で、かつての暮らしぶりや、日本海の暖流から湧き上がった水蒸気が山岳にぶつかって豪雪をもたらすことを肌で感じるこんな旅もいかが?
<白川郷の合掌造り集落>
合掌造り集落の雪景色をこの目で見たいと思っていた。年に4日だけ行われる白川郷のライトアップイベントに合わせて、「まいたび」がツアー行うので参加してきた。自分が調べた限りでは、この時期に自分で合掌造りの住居に宿泊を予約するのは困難で、「まいたび」のプランだけが白川郷集落内の宿泊が組み込まれているようだ。おまけに(本来ならこちらがメインだろうが)同じく合掌造りの集落で有名な五箇山でかんじきを履いて雪山ウォークもできる。
新宿を出発してバスで中央高速を進むと、山に差し掛かるたびにガスがかかり、山に囲まれた盆地に出ると再び晴れることを繰り返す。海と山と、それが織りなす天候の変化を実感しながらバスは西へと進む。甲府盆地はよく晴れて八ヶ岳や甲斐駒ケ岳がよく見える。松本平は晴れだが、そこから見る北アルプスは、上部がガスに覆われている。東側は晴れているのだから、山一つで天候は大きく変わるものだと改めて思う。野麦街道を上高地方向に進むと雪がちらつき始める。まさか釜トンネルを素通りすることがあるなんて。すぐそこに上高地や穂高の山々があるというのに。複雑な気持ちを乗せてバスが安房峠を越えて飛騨側に下っていくと、雪は一段と深くなるが、高山市街は再び晴れ。偶然通りかかった造り酒屋さんで見学や大吟醸酒の試飲をさせてもらったり、食事の注文に苦労している中国人家族の通訳をしたり、なんだかいつもとは違う「山旅」だ。
高山から再び山に差し掛かると文字通りの豪雪地帯。それでも地元の方に言わせれば、「今年は少し雪が少ないかも」というのだからすごい。世界遺産の白川郷、それも年に4日だけというライトアップイベントだからか、駐車場に向かう道路は諦めて引き返す車も続出する渋滞。どうやら見学許可を事前にもらう必要があるらしく、一般車両が駐車できるのは午後3時までに制限されていたらしい。集落内も中国からの観光客を中心に外国人観光客でごった返している。いささかげんなりだが、小さな子供から大人まで雪に大はしゃぎしている中国人観光客を見ているとなんだか微笑ましく感じた。外国で見たことのない景色や体験をすれば、誰だって興奮しますよね。集落の様子は写真で。
合掌造りの民宿は、内部はリフォームされていて暖かく快適。合掌造りの住居がどのようなものだったかは、内部が公開されている重要文化財の和田家住宅(300円)などを見学すると、イメージが膨らむ。
<五箇山に移動して雪の里山歩き>
翌朝は観光客が嘘のように消えた静かな集落内を散歩した後、囲炉裏が切ってある広間で朴葉みそやマスの甘露煮などの郷土料理で朝御飯をいただき、バスで五箇山へ移動。いよいよメイン(?)の五箇山かんじきウォークに出発。
かんじきを履くのは、蔵王に登って以来二度目だが、スノーシューに比べて浮力に劣るものの、軽く取り回しがいいこと、下りが確実であることなど利点もたくさんあることを再認識。自分がどれくらいトレースが期待できないような雪山に行くのかわからないけれど、実はアルミ製のかんじきを持っていたりもするのだけど、あれこれ考えながら歩いた。それにしても膝まで沈む深雪をラッセルするのは大変。これまで雪山登山も何度かしたが、いずれも人気のあるコースでトレースもしっかりついていた。雪山でトレースがなければ、ルートファインディングはもちろん体力的にも負担が大きく、自分で計画するときにはよくよく考慮しなけらばならないなと思った。でもね、新雪を歩く楽しさが大きいのも、また事実ですよね。
ガイドさんは時折立ち止まって、豪雪地帯での暮らしを子供時代の思い出話なども絡めて話してくれるのだが、それもまた興味深かった。厳冬期の白川郷や五箇山集落は、昭和30年代くらいまでは陸の孤島だったそうで(道路が整備されている現代でも容易に想像できる)、タンパク源が不足する。おまけにウサギは農作物を食べる害獣で、捕獲して耳を一対持って行けば役場から報奨金も出たのだという。だから子供時代は、雪の裏山に罠を仕掛けてうさぎ獲りをするのが、ご馳走やお小遣い、さらには冬の楽しみだったのだという。罠の仕掛け方、舞茸採りの極意、ウサギとテンの命をかけた知恵比べ・・・。
イヌワシの話も興味深かった。かつては薪炭を取るために雑木の枝打ちをしたため、新芽がちょうど深く積もる雪の上に出たのだそうだ。うさぎはそれを食べる。さらにうさぎを餌するイヌワシも生息できた。ところが人が森に入らなくなると新芽は高い梢に吹いてうさぎには届かず、うさぎは数を減らし、イヌワシもまた減ってしまったのだという。屋久島に行ったときにも、人とは何かを壊す(変えてしまう)代わりに別の何かを作り出しているのだなと感じ入ったが、これも似たような話であるように思う。
年明け以来、なかなか山に行けていないし、今回も登山と呼べるほどのものではないけれども、公共交通機関でのアプローチが一層困難になる積雪期、経験が足りていない雪山を味わうにはこうしたツアーを積極的に活用するのもありだと、改めて感じました。
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