沿道の庭先にチューリップが咲き誇って水仙の縁取りが美しく、春爛漫の雰囲気が満ち溢れている。どの家も申し合わせたように赤や黄色のチューリップで、岩手県の政策かと思う程だ。
八幡平アスピーテラインを上がって行くと「夜間凍結の恐れがある為、17:00～8:30通行止」の立看板に気付き、「後生掛温泉からのコースタイムは５時間だから、焼山から下山するのは17時頃になり、戻るのにギリギリだ」と慌てる。
県境付近は雪の回廊になっており、スキーやボードを楽しむ人の姿が見える。秋田県に入って下って行くと焼山連山が白く輝いて見える。緩やかな纏まった山容から、「手頃な山だ」という感じを受ける。「土曜日の午後だし、トレースが付いてスピードアップ出来る」と期待しながら車を走らせる。
　後生掛温泉は一軒家だが20台ほどの車が停まっており、訪れる人は多いようだ。売店で登山道の入口を教えてもらい、建物の間を通り抜けて赤川上流の澄川を左岸へ渡り、夏道に入る。
　直ぐに雪に埋まり、今日登った人が居ないと判明する。地形図を頼りに1,017ｍの鞍部まで慎重に進んで尾根に乗る。尾根の背を外さないように注意して歩いて行くと、適当な間隔で赤布が現れる。「樹間は広いし傾斜が緩いから、山スキーがあれば下りはあっと言う間だ。残念！」と、膝の不調で今シーズンはスキーに乗るチャンスが無いまま終ってしまうのを惜しむ。国見台が近付くと、スキーのトレールが残っているのに気付く。
　国見台に直登すると３つのピークを連ねた栂森が目の前に展開する。鞍部へ下り、東側に続く雪原を歩いて栂森を目指すと、山頂部は藪が出ている。左手に見える夏道へ向かって藪を漕ぎ、夏道に出て進むと毛せん峠の道標が立っている。栂森山頂へは直ぐだ。
　夏道を辿り、Ｐ1,354を下った鞍部で夏道を外れて尾根通しに焼山を目指す。Ｐ1,335に立つと雪庇を擁する焼山が間近に見え、奇岩の名残峠や鬼ヶ城の火山地形が目を奪う。人気は無く、避難小屋は静まり返っている。