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無道二千m峰3/126/768

編笠山(鋸岳)( 南アルプス)

パーティ: 2人 (1357 さん 、ほか1名)

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行程・コース

天候

晴れ/晴れ

登山口へのアクセス

マイカー

この登山記録の行程

戸台川(6:50)六合石室(14:35/5:50)三ツ頭(6:20)烏帽子岳(6:40)三ツ頭(6:55)中ノ川乗越(8:00)鋸岳(10:30)P2,607(12:00)編笠山(12:45)P2,607(13:30)横岳峠(14:50)戸台川(16:30)車(17:50)

コース

総距離
約22.0km
累積標高差
上り約2,364m
下り約2,364m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

 戸台の川原の駐車場に幕営する。先着の車が1台あり、夜半と早朝に更に2台がやって来る。

 おにぎりの朝食を済ませて1kmほど先の道路が洗堀された通行不可能地点まで、川原の砂利道を走る。ここにも車が2台停まっている。
 右岸の砂利道は白岩堰堤まで続いているが、数か所で途切れている。堰堤には上下流ともに立派な階段が付いている。上流の黒い堰堤を越えてさらに右岸を歩く。尾根が迫った岩場のヘツリが2か所あるが、ここで同じように鋸尾根を目指す名古屋の男女2人組に追い付く。我々が左岸へ渡渉して靴を履き終っても彼等は姿を見せないので、「尾根を高巻いたか、若しかしたらヘツリで落ちて流されたのではないか」と心配する。
 丹渓山荘跡で大休止する。ブルで均した車も通れる広い砂利道の跡はここまで続いているが、左俣の戸台川本谷に入ると、全く踏跡が無い巨岩の中の歩き難い川原となる。所々に赤ペンキの印があり、心配していた尾根への取付点を探し回る事も無く見付け、左の急な尾根へ上がるひっそりと目立たない踏跡に入る。
 道の崩壊個所を修復してある丸太は古く、「体重に耐えるだろうか」と心配するが、予想以上に踏まれて確りした道が続いている。稜線が間近になる頃、ガスが垂れ込めて薄暗くなり雨がパラつくが、濡れる程の事もなく稜線に達して、右へ少し歩いて六合小屋に着く。
 長谷村の手入れで石を積み直し、立派に雨露を凌げる石室に変身している(71年に泊った時は、半ば倒壊していた)。上の方の岩小舎にツェルトが1張り見え、水場を教えてもらい、小屋のPBを拝借して合羽を着込んでガレ場を下り、水を得る。雨はしばらくの間降り続き、そのうちに岩小舎の住人も石室へ引っ越して来ていろいろと話をする。
 夜半、雨音が止み、やがて戸台川の沢音が微かに聞こえてくる。静かな夜で、時々ドーンと言う落雷とも発破の爆発とも思える様な音が、地中からとも空中とも思える密やかで不思議な響きで聞こえてくる。母の胎内にでも居るような錯覚に捉われ、妙に心が落ち着く響きを夢見心地に聞きながら眠る。

 4時起床。満天の星に元気が湧く。歩けるほどの明るさになったら出掛ける心算が、20分ほど遅くなる。ポリタンに水2ℓを満たして出発する。隣の単独者は既に出発した。
 丹渓山荘への道を分け、灌木の迫った尾根を歩く。木の枝が茂っているもののよく踏まれており、稜線をほぼ忠実に辿る。三ッ頭に着く頃には朝日が射して落葉松の黄葉が眩しく輝く。
 少し下って、ザックを置いて烏帽子岳を往復する。踏跡ははっきりしているが、這松が茂って歩くのに梃子摺り、朝露で膝から下は直ぐに濡れてしまう。大岩のある烏帽子山頂は360度の眺望が気持ち好い。南に甲斐駒を見上げ、東には釜無川が足元まで切れ込んでいる。甲州側の奥秩父は見えないが、八ヶ岳の稜線は赤岳から蓼科山まで雲海の上に黒い線を描いている。
 赤岳と阿弥陀岳が重なって鋭角に切り立ち、ちょっと変わった風貌の八ヶ岳を見る事が出来る。正面には釣鐘の様な特徴のある鋸岳第一高点が誇らしげに立ち、手前に第二高点と中ノ川乗越のギャップが望見され、やや緊張の面持ちで眺める。
 熊穴沢ノ頭へは尾根東面の樺の林を掻き分けて進む様なか細い道が続いており、踏跡は新鮮で、南アの光岳以南の様に「何時人が歩いたのか判らない」と言う感じではないが、歩くには体力を使う。
 頭で一息入れて(7:30)、急な草付きを中ノ川乗越へ下る。天気は良く、紅葉の仙丈ヶ岳が朝日に明るく輝いている。ここからいよいよ鋸岳の縦走と言う訳で、これまでの樹林に替わって、両側が切れ落ちた岩稜を歩く事になる。
 急なガレを登り詰め、尾根が合わさった付近を登ると直ぐに第二高点に着く(8:45)。目の前に鋸岳の第一高点が端正な三角錐を見せ、大ギャップがその手前に見えている。ギャップの先の高度感のある細い岩稜の上を、こちらの方へ2人が歩いて来るのが見え、魅力的な稜線に心が踊る。岩稜から草付きを真直ぐ下るとギャップの真上に出て、対岸に捨縄の付いた垂壁が見える。この頃、縦走している人のものと思われる多少緊迫したコールが盛んに聞こえるが、姿は見えない。
 足元が切れて覗き込んでもギャップの底は見えないが、樺の木を頼りにアプザイレン出来ない事も無さそうだ。「鋸尾根を縦走した」と胸を張って言うには、ここをアプザイレンして15m程の垂壁を登り第三高点の岩稜を歩けば完璧だろうが、岩場は細かそうに見え、心の準備が出来ていないので気後れしてパスする事に決める。
 踏跡を辿って草付きを左へ行ってルンゼに入り、ボルトの支点を頼りにザイルいっぱい20mアプザイレンする。数mの滝が2個あり、ザイル無しでは下れない。さらにフリーで少し下ってギャップに通じるガレた沢に降り立つ。この先は、ガレを少し下り第三高点から派生する尾根を回り込むのだが、ここから見えるバンドは狭く外傾しており、Kurが通れるか非常に不安に思う。かと言ってギャップの垂壁はさらに手強そうに見える。
 近付いて見ると何とかなりそうで、慎重にトラバースする。先へ進むとバンドが広くなり、潅木も生えていて落ち着く。ここからの中央稜周辺の眺めは穂高の岩場の雰囲気があり、紅葉と相俟ってなかなか素晴らしい。時々、綿雲が千切れて流れてくる。さらに尾根を大きく回り込み、急な草付をガレたルンゼへ下りる。ここからは上に登るしか無さそうだ。落石を起こさないように注意しながらKが先頭で登る。次第に岩場となり、傾斜も増して岩登りの領域に入る。
 頂稜は岩峰になっており、その真下に穴が開いているのが見える。ここが鹿窓(風穴)と言われる所だろう。穴を抜けて東面に出ると明るく、一息入れる。目の前に水平に横たわっている数mの長さの岩の稜へ登って上に出ると足下が小ギャップで、対岸に10m弱の垂壁が現れる。急な草付を真っ直ぐ下り(10:05)、この岩を観察すると節理が多く走って積木の重なりのように見え、力を掛けるのが憚られる気がする。
 倉品は「ノーザイルで大丈夫」と言うが、念のためにアンザイレンして思ったより快適にこの壁を登る。その先は第一高点まで気持ちの好い稜線が続いており、念願の鋸岳を踏み少し遅れて来たKと握手して健闘を讃える。
 登頂を喜んでゆっくりと休み、紅葉を楽しむ(10:30~11:20)。第二高点はガスに包まれてピークだけを見せている。60歳に手が届くと思われる男女が横岳峠の方から登って来る。「大阪から出て来て昨夜は甲府に泊り、釜無川にタクシーで入って峠を目指したが、途中で迷って峠より東寄りの地点で稜線に出て登って来た」と言うが、その元気さに吃驚して呆気に取られ、次第に羨ましくなる。「2人一緒に写真を撮ってやろう」と言うが、互いに撮り合っている。「夫婦ではないのかも知れない」と自らの事を棚に上げて下衆の勘繰りをする。
 コル(11:30)から見下ろす角兵衛沢は、開けた斜面にずっと下まで長く見事なガレが続いて、なかなかの見物である。ガレはあまり綺麗でないのが一般的だが、ここのガレは明るい色の均一な大きさの岩片が大量に沢筋を埋めてスッキリしている。
 コルから先の道は、今までとは見違えて薄くなる。角兵衛ノ頭(11:35)を過ぎて、三角点ピークに荷を下ろす。時間的に苦しい気もするが、二千m峰の編笠山を往復すべく背丈の這松の中を進む。道の跡は比較的判り易いが、木の枝がすっかり覆い被さって歩き難い事この上無く、薮漕ぎでヘトヘトになって編笠山に到着する。
 一息入れて引き返すと、登りの薮漕ぎは一層手強くヨレヨレになってKの待つ三角点に戻る。一休みして呼吸を整え(~13:45)、「残るのは下りだけだ」と、いくらか気を楽にして歩き出す。
 横岳峠まで600m強の下り出のある所を頑張って1時間で歩き、ここで一息入れる。横岳の方へ少し行くと微かな踏跡が付いている。横岳から先の方へも続いているか如何かは不明だが、良い兆候だ。
 峠から戸台川までさらに700mを下る。記録等を調べると昔は峠への登山道があったようだが、廃道になってしまって踏跡も定かでない。横岳から落ちている寝木小屋沢の1つ東寄りの沢の左俣を下る訳だが、沢状地形に沿って高度を下げると旧い踏跡が断片的に認められ、気を強くする。
 途中から流水が見られ、転石等が現われて歩き難くなる。林の中を左へ少しトラバリ、右俣のガレを下ると左俣と合流して次第に深い谷状を呈してくる。左岸沿いの急な斜面を木の根に掴まり、崩壊地を急降下し、戸台川に合流する手前では2、3の滝を巻いて穏やかだが判り難い出合に降り立つ。本流は水量が多くて転石伝いには渡れないので、靴を脱いで左岸に広がった川原へ渡渉する。
 今日は、縦走路を外れた二千m峰2座を往復して余分な体力と時間を費やしたので、「自分の身勝手からヤバイ事になると拙いなあ」と気にしていたのだが、何とか暗くなる前に戸台川本流に下る事が出来て大安心する。
 川原で野性の椎茸を採り、残す処4kmの川原を痛くなり出した足の裏に我慢しながら歩く。白岩堰堤を越え(17:15)、車で入山した単独者を追い越して、暗くなって足元が覚束ない頃、車に帰り着く。
 高遠町営の『さくら湯』に入って汗を流してさっぱりして(~19:25)から杖突峠を越え、諏訪インターで中央高速に乗ル。

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装備・携行品

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登った山

鋸岳

鋸岳

2,685m

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