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無道二千m峰17/126/768

蕎麦粒山( 中央アルプス)

パーティ: 1人 (1357 さん )

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行程・コース

天候

晴れ/曇り

登山口へのアクセス

タクシー

この登山記録の行程

駐車場(8:35)金沢土場(9:45)倉本分岐(10:10)林道終点(10:40)川原(11:00)幕営1,660m(17:00/5:10)出合(6:45)奥の二俣(1,970m/7:15)稜線(2,300m/8:35)蕎麦粒岳(9:25)デポ(10:00)三ノ沢岳(13:20)宝剣岳(15:25)千畳敷(16:10)

コース

総距離
約18.4km
累積標高差
上り約2,536m
下り約973m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

 『アルプス号』の臨時急行も今週で終りとなる。定期便の方はほぼ座席が埋まっているが、臨時列車は出発間際でもガラガラで、急遽そちらに移って一桝を占めて横になり、10人程と塩尻の待合室で一眠りして、始発電車に乗って須原駅まで南下する。
 予約したタクシ-で伊奈川ダムのゲ-トまで入ると「貸し切りになります」と言われ、訳の判らぬ内にメ-タ-よりも高い 5,000円と消費税を請求されて出鼻を挫かれた気になる。駐車場の車には三河ナンバ-に混じって湘南の名も読み取れる。
 北沢と別れて林道を左折し、伊奈川本流の深いV字谷を見下ろしながら歩く。流れが林道と同じ高さになると金沢土場で、右へ木曽殿越への道が岐れている。木陰で一本立てて暫く行くと倉本駅への分岐となり、直ぐ上流に在る取水堰の点検を終えた車が下って行く。ジグザグに高度を上げると間も無く林道が終り、金網を越えて急な笹の斜面を川原へ降り、渓流足袋に履き替える。
 目の前にはよく澄んだ硬質の水が滔々と流れており、岩魚への期待が膨らみ勇んで竿を出す。随所に在る釜には如何にも魚が居そうだが、案に相違して全く当たりは無く、魚影も見当らない。「魚は居ないんだ。もういい加減で止めよう」と思いつつ、「これが最後だ」と言い聞かせて竿を振ると「ぐっ」と手応えがあり、上流へ下流へと盛んに逃げ惑うのを慎重に川原へ引き上げる。8寸の丸々と太った岩魚で、お腹の下の方に掛けての黄橙色が魅力的ですっかり嬉しくなる。
 夢中になって釣り上がるがその後はさっぱりで、魚影を認めたのも1回だけである。4時前、気が付くと直ぐ後から一人遣って来ていて、「前回、下流では全く釣れなかったので、沢に1泊する予定で上流を釣りに来た」と言う。「自分は蕎麦粒岳の沢登りが目的だ」と言うと、やや安心した様子だ。2匹目を上げた処で川原の砂地にテントを張り、コンロに点火してお湯を沸かしながら釣りをする。
 餌に喰い付き、針から逃れようとして身を捩る岩魚の鮮やかな橙色が薄暮の水面の下に一瞬間煌いて姿を消す。次の釜でも合わせが早過ぎてバラすが、餌を付け直して再度投げると期待に違わず喰い付いて来る。これも見事な色と形をしている。さらに上流では、身半分を水中から抜き上げるがまたしてもバラし、危険を感じた岩魚は水底深く逃げて沈黙を守る。釣果の3匹は共に8寸の雌で、流木を集めて焚火を起し、美味しくご馳走になる。

 早朝の空には少し雲が浮かんでいるが、薄い。明るくなってから出発する。昨夕餌を紛失したので川虫を探して釣るが、朝まづめの期待に反して当たりが無く、今日の行程の長い事を思って早々に釣りを諦め、遡行に専念する。
 釣人が残したツェルトを遣り過ごす(彼が先行したので釣れないのだ!)と、直ぐに二俣に着く。水量は三分の一位で、不安定な岩の積み重なった荒れた様相の沢に入ってぐんぐん高度を上げる。
 目指す右俣の出合には10mの滝が垂下しており、滝を見上げながら未知の上流部の心配をする。シラビソを頼りに右手から滝を登って進むと沢は左に90度曲がり、7mのナメ滝が懸かっている。右壁を慎重に登るとナメ床の先に20mの大滝が現われる。水流の左は見た目よりは難しく、途中で右に移って乾いた壁を快適に登る(滝上 2,050m、7:50)。
 上流は流木の詰まった平凡な源流となり、穏やかな溪相に心が和む。最後は、疎らな藪を漕いで目標とした鞍部よりやや北寄りの標高 2,300mの稜線に登り着き、大息を吐く。靴を履き替え(渓流足袋をここの樹に残す)、食事をして寛ぐ(~9:00)。
 樹間から覗かれる蕎麦粒岳は魅力的な岩山で、微かな踏跡が付いた尾根を空身で往復する。頂上には10年は前の物と思われる岐阜歯大の標識が在り、駒ヶ根山岳会の昭和59年の登頂記録の入った壜も見出す。ここから見る三ノ沢岳は幾つもの尾根の隆起の向こうに在り、今日は長い一日になりそうだ。
 デポに帰り(10:00)、微かな踏跡を行く。P2,485mのギャップの先には 2,525mの岩峰が盛り上がっており、岳樺をびっしり付けた斜面の踏跡は判読し難く、北面をトラバ-スして省力する。この先にも岩峰が幾つも続き、這松も現われる。踏跡は稜線の少し下の西斜面に細々と続いている。熊のものと思われる艶のある黒々とした糞を藪漕ぎの最中に目撃して俄然緊張し、「けろよーん、ヤッホー」と連呼しながら進む。喘ぎながら小さい上下を繰り返し、 2,600m付近で尾根の上に出て一息吐く。
 100m程の間成木の這松漕ぎを強いられて難儀するが、枝の下にはかつての道が明瞭に認められる。標高が上がると名前通りの背丈の低い這い松に変って楽になるが、足は重くなる一方である。小平坦地に出ると三ノ沢岳の頂上が見通せ、這松の斜面に白い砂岩が屹立した眺めは北アの燕岳にも似た印象を与える。
 踏跡は判然とせず、這松を避けて岩稜状の所を岩登り擬いに高度を稼ぐ。岩と這松の頂稜へ出ると100m程先の頂上に数人を認め、三ノ沢岳へも一般登山者の足が伸びている事を知る。
 若いペア-と共に三角点の岩の上で小憩を取る。天気は今一つで、陰影のコントラストが無い宝剣岳は迫力不足であまり見栄えがしない。「最低鞍部まで下って300mを登り返すのか」と思うと、縦走路まで2時間で行けるかどうか自信が持てない。
 若くして逝った岳人を悼む大きなケルンが在り、「自分は生き過ぎたか」と言う思いが何故か唐突に頭を掠める。傾斜が緩いので思ったより早く縦走路に出て(15:10)、「20年振りに遣って来たのだから」と、宝剣岳を往復してから千畳敷に下る。
 ロ-プウェイは架け替えのために来年は休止するそうで、夏休み最後の日曜日と言う事もあって利用者が多く、乗るのに小1時間も待たされる。臨時の『梓号』の指定席は空いており席に座ってゆっくりするが、疲れ過ぎて眠る事が出来ないまま新宿駅に帰着する。

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装備・携行品

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登った山

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