行程・コース
この登山記録の行程
【1日目】
上高地バスターミナル(12:40)・・・河童橋(12:48)・・・明神(13:35)[休憩 8分]・・・徳沢(14:20)[休憩 13分]・・・横尾(15:35)
【2日目】
横尾(02:25)・・・一ノ俣(03:20)・・・槍沢ロッヂ(04:04)[休憩 6分]・・・ババ平(04:50)・・・水俣乗越分岐(05:15)・・・天狗原分岐(06:22)[休憩 16分]・・・グリーンバンド(07:45)・・・槍ヶ岳殺生ヒュッテ(08:53)[休憩 7分]・・・槍ヶ岳山荘(10:00)[休憩 134分]・・・槍ヶ岳(12:38)[休憩 15分]・・・槍ヶ岳山荘(13:14)
【3日目】
槍ヶ岳山荘(03:55)・・・槍ヶ岳殺生ヒュッテ(04:33)・・・グリーンバンド(05:00)・・・天狗原分岐(05:25)[休憩 25分]・・・水俣乗越分岐(06:25)・・・ババ平(06:44)・・・槍沢ロッヂ(07:12)・・・一ノ俣(07:45)[休憩 10分]・・・横尾(08:35)[休憩 30分]・・・徳沢(09:53)[休憩 15分]・・・明神(10:48)[休憩 87分]・・・河童橋(13:15)[休憩 16分]・・・上高地バスターミナル(13:36)
高低図
標準タイム比較グラフ
登山記録
行動記録・感想・メモ
数十年ぶりの北アルプスということで選んだのは槍ヶ岳の槍沢コース。槍ヶ岳登山コースでは王道のコースだが、上高地からの距離が非常に長く、槍ヶ岳までの標高差も大きい。そのため装備は軽いのが望ましい。
軽量化と言えばUL(ウルトラライト)スタイルだが、稜線のテン場でのタープ泊は現実的ではないのでそれなりのテントは必要だ。非自立式のツェルトでは風をはらんで分解しそうだ。そこで山岳縦走では実際に使っているという話を聞いたことはない、モンベルの重量約600gの非自立式のシェルターであるULモノフレームシェルターを3000m級の稜線上のテン場で使ってみようと考えた。
あとは決行の日にちだが、天候のリスクを考えてお盆休みを長くとっていたものの、海の日以降の天気が悪い。槍ヶ岳山荘のライブカメラを連日確認したが、常にホワイトアウトで何も映っていない状態なので、今期は無理かと思ったが、長期予報で前線の切れ間に日本海からの高気圧が北陸・中部地方に入る19日に核心である槍ヶ岳へのアタック日を設定すればいけると判断したため、日程を18~20日にで決定した。
初日は上高地へは通常交通機関を使って向かったが、始発で出ても上高地到着は11時55分とかなり遅い。一般的に初日は朝一スタートで槍沢ロッジかババ平のキャンプ指定地泊、翌朝、槍ヶ岳山頂を目指す。しかし、スタートが遅いため、ババ平への到着が遅くなることから、初日は横尾の野営場に宿泊し、翌朝早立ちすることでギャップを埋めた。
上高地バスターミナルをスタート後、明神を過ぎたあたりから小雨が降りだした。横尾の野営場に到着した頃にはおおむね止んでいたものの、屏風岩から上はガスに包まれて見えない状態であった。手続きをしてモノフレームシェルターを設営、時折雨が降るような天候だったが、幕営しているテントは多かった。
翌朝は確実に槍ヶ岳山荘のテン場を抑えるため2時出発の計画だったので、早々に管理棟で購入したビールを飲みながら夕食のアルファ化米のお湯を沸かして、蒸らしている間にレトルトの焼き鳥を湯煎した。今回の行動の夕食はこの組み合わせで、レトルトの焼き鳥のゴミが軽いという利点と、これをアルファ化米に入れることで油分の追加によってパサついたアルファ化米にコクが出ることを期待した。また、アルファ化米を食べた後の袋はそのままフリーズドライの味噌汁の容器として使用し、ゴミをまとめて入れて占めてしまえば匂いも出ずに便利だった。
食後、再び雨が降り始めたためシェルターにこもり、雨音を聞きながら18時ごろ就寝した。シェルターはシングルウォールのため、湿度の高い状態では結露がひどく、時々、ふき取る必要があった。このシェルターは5月の蛭ヶ岳南稜でも使用したが、その時はシュラフカバーの内側も結露して効果がなかったことから、今回はシュラフカバーを持参せず、シュラフの足元をレインウェアの下に突っ込み、その他のシェルター内壁に触れそうなところはレインの上を布団の様にかけて水濡れを防いだ。本来であれば換気用のメッシュ窓を開けたいが、雨なのでそれができなかった。
翌朝、2時出発のため、1時に起床しシェルターの中でパッキングを済ませた。ザックを持って外に出ると雲が抜けて満天の星空。シェルターを撤収し、夜露でビショビショだったが、5月の蛭ヶ岳での経験から外付けのメッシュバッグをザックの背面につけており、気にせずメッシュバッグに収納する方式にした。
荷物をまとめ、予定より遅れて横尾山荘を出発、真っ暗な森を槍ヶ岳に向けて進む。ババ平を通過した時にはテン泊の人たちがごそごそやっているのを横目に通過した。ババ平の辺りで夜が白み始め、森の中を出たことから山の稜線が開け始めた空にくっきりしたシルエットを映し始めた。5時過ぎに谷の切れ目から見えてきた大喰岳が朝日に照らされ燃えるようなモルゲンロートを見せてくれた。
槍沢大曲まで来ると、谷の中にも朝日が差し始め、久しぶりの日差しに盛りを過ぎたお花畑の中から大量のハナアブが飛び立ってまとわりついてくる。天狗原分岐の手前で腰かけられる岩を見つけたのでアブを追い払いながら、前夜戻したアルファ化米で朝食をとった。食後、歩を進めグリーンバンドの手前から槍が穂先を見せ始めた。この辺りから、若干高山病の兆候が出てきたため、ペースを落として口を窄めて息を深く吐く呼吸を意識してするようにした。
坊主岩小屋の下辺りから槍ヶ岳や槍ヶ岳山荘がはっきり見えるもののなかなか近づかずにじれったい思いが続いた。この辺りから岩に1200などと小屋までの距離が記されるようになるが、ひたすら無心に歩くしかない。この数字が200くらいになると、比較的整った石が組まれた石畳の様な九十九折となっていくので、やや歩きやすくなったように感じた。(本人の主観です。)当初の計画より40分遅れの10時丁度に槍ヶ岳山荘に到着した。
槍ヶ岳山荘到着後、荒い息が収まらないまますぐにテン場の申し込みを行い、計画通りテン場の獲得に成功、しかも小屋に近くて目の前に槍の穂先が広がるAのエリアを取ることができた。思えば数十年前、小屋番さんに「今日はもう一杯です。殺生小屋のテン場へ行ってください。」と告げられ、「そんな殺生な!」と言っても取り合ってもらえなかった雪辱を四半世紀ぶりに取り返した痛快感があった。
テン場のAエリアは220×130のステラリッジ2サイズのテンと向けのエリアであったが、今回持参したULモノフレームシェルターは、居住スペースのサイズはその寸法に収まるが、スカート状になった末端を伸ばした部分でのサイズが300あったため、若干の不安はあったが、長方形のスペースに斜めに設置すれば問題ないことが分かったので安堵した。
シェルターはフルにペグダウンする場合、8本のペグを打つ必要があるが稜線のテン場でそれが可能なところは少ない、そのため、重要な前後のペグを打つ個所のループにトレッキングポールを通し、岩を乗せてがっちり固定、他の部分は雪上にテントを張るときの様に張り綱を反転させてペグを打つ側に小さなループをこしらえて、岩を固定し、本体側の自在で長さ調整できるようにした。てんくらでは翌朝14mの風が吹く予報だったが、これで飛ばされることはないだろうと確信した。
設営後、少し早かったがキッチン槍へ向かい、昼食に槍ヶ岳黒キーマカレーを注文、小屋前のテラスで外を見ながら食べた。食後、デザートに小屋番の気まぐれプリンを注文しに行くが「14時からです。」と断られたので、登りの疲れが回復できず、少々、足腰が震えるものの高度順応もできた頃なのでヘルメットやグローブなどの装備を持って穂先の登り口へ向かった。
昼食時間で少し人が減った頃合いを見て根本に取り付く。登りのダメージから回復しきれていなかったので足揚げがきつかったが、使ってない腕力に任せて登頂した。山頂で不思議に思ったのは祠の前においてある「槍ヶ岳」の木製の銘版。確かに重いのだが、荒天時に飛ばされないのか気になる。山頂では3mほどある物干竿の様な棒にカメラを付けて撮影している人がいて、面白そうなアイテムだと感心した。
穂先から下山後、14時ちょっと前だったのでキッチン槍に行ってプリンを注文。小屋前のテラスで食べていると、周囲の人が「プリンおいしそう!」などと言っている中、小屋からプリン発売を告げるアナウンス。しばらくするとテラス周辺はプリンが売り切れて買えなかった人たちの落胆の声で満ちていた。プリンはお早めにだ。
その後、小屋で購入した700円の高級ビールをちびちび槍ながら、テントのわきの地面にマットを引いて、槍の穂先と流れる雲を見るだけの自堕落タイムに突入。日が陰り始め、寒くなるまで贅沢時間を満喫した。
日没まで2時間ほどあったがテントの外にぶら下げた温度計は7℃となって、8月後半の槍ヶ岳山頂は、例えるなら平地の11月末の天気のいい晴れた日の様だった。調理用の天水の販売は18時頃までだったので、天水を購入し夕食の支度を始めた。風が強くなりバーナーの熱効率が悪くなったこと、高所で水が沸騰する温度が低くなっていることを差し引いても、今回の食糧計画に問題はなかった。夕食の準備と併せて翌朝分のアルファ化米にもややぬるいお湯を注いて、シェルターに籠り、シュラフの中で湯たんぽ代わりに抱いて眠りにつく。風はさらに勢いを増し、シェルターの中はガンガン叩かれている様に動いていたが、前夜と違って外気が激しく入ってくることから、まったく結露することなく朝まで過ごせた。
最終日、4時出発のため3時に起床、撤収準備を始め、4時に槍ヶ岳のテン場を出発した。横尾と違ってこちらはガチの山屋が多いためか、一様に早出の人が多い。暗い中進むモレーンの堆積した浮石の多い地形はリスクが大きいのでスローペースで後続に道を譲ってゆっくりと確実に進む。そんな中、「こっちでいいんですかね?」なんて聞いてくる夫婦連れの人。駅前の店を探すんじゃあるまいし、山で行先分からないからと安易に見知らぬ人に聞いてくるなんてのはヒヤリハットの典型。「30回やったら事故るよ。」と思いながらも「あそこに立っている竹棒の方です。」といって先に行ってもらった。
リスクの多いモレーン帯を抜け、無事に下山路を進む中、明るくなって辺りが見えるようになってくると、登りは暗闇をカモシカの様に来たために、見覚えのない場所が多いのには参った。そうして横尾を通過、徳澤園でソフトクリーム休憩をしている頃から雨が本降りに。こちらも山行決定時の気象予報の通りで、横尾までの足元の悪い個所を通過する間は天気が持てば良しとした計画通りで残りの経路はほぼ平坦な上高地までのコースだ。
誤算だったのは明神館で昼食にイワナの塩焼き定食を食べようとしたところ、人手が足りないのでやっていませんとの事だったため、岩名定食を食べるために予定外の嘉門次小屋まで遠回りしたことだったが、本来はこちらが本家だし良しとする。
雨は更に強くなり、小梨平キャンプ場の入浴施設に着いた頃にはもう施設から出たくない程だった。ここの入浴施設は非常に快適で、しゃんぷ等は完備、バスタオルをレンタルし、体を3回洗って湯船に浸かると悪いものがすべて出ていく心地よさ。残りはバスの時間までの時間調整で、ビジターセンターや、土産物屋へ立ち寄った。基本的に野良犬の様な山行を続けている身としては、「やっぱり上高地はいいなぁ」と久しぶりの観光登山の様な気分で今回の山行を終えることができた。
フォトギャラリー:48枚
装備・携行品
シャツ | アンダーウェア | ダウン・化繊綿ウェア | ロングパンツ | 靴下 | レインウェア |
登山靴 | バックパック | スタッフバック | 水筒・テルモス | ヘッドランプ | タオル |
帽子 | グローブ | サングラス | 着替え | 地図 | コンパス |
ノート・筆記用具 | 腕時計 | カメラ | 登山計画書(控え) | ナイフ | 修理用具 |
ツエルト | 健康保険証 | ホイッスル | 医療品 | 虫除け | 熊鈴・ベアスプレー |
ロールペーパー | 非常食 | 行動食 | テーピングテープ | トレッキングポール | GPS機器 |
ストーブ | 燃料 | ライター | カップ | クッカー | カトラリー |
【その他】
装備重量:約11.9kg(水1.5L)40LザックでULスタイル(帰宅時9.6kg) 食料:1日昼食@上高地で外食、夕食@アルファ化米(ドライカレー)+汁物+レトルト焼鳥 2日朝食@アルファ化米(赤飯@前夜に水出し)、昼食@山小屋で外食、夕食@アルファ化米(チャーハン)+汁物+レトルト焼鳥 3日朝食@アルファ化米(赤飯)+野菜カレー、昼食@上高地で外食 非常食:カルボナーラ+行動食残り 水使用量:初日:0.3L/1.0L(ポカリ×2)、2日目:0.8L/3.0L(ポカリ×2+2L)、3日目:1.0L/1.5L(ポカリ×2+0.5L) 真水の運搬はハイドレーションで携行、2日目調理用の水は槍ヶ岳山頂で購入。 2日目以降のポカリは経口補水液の500ml用粉末で自作 日出/日没(04:59/18:47) エスケープ:槍沢コースを引き返して上高地へ下山する。 |
みんなのコメント