行程・コース
天候
初日:快晴、2日目:快晴、3日目:曇り時々晴れ
利用した登山口
登山口へのアクセス
バス
その他:
往路:茅野駅→美濃戸口(午前・午後共、1便のみ)
復路:美濃戸口→茅野駅(午前・午後共、1便のみ)
この登山記録の行程
【1日目】
美濃戸口(11:00)・・・美濃戸(12:03)[休憩 5分]・・・行者小屋(15:33)
【2日目】
行者小屋(04:10)・・・中岳分岐(05:55)・・・中岳(06:35)[休憩 5分]・・・中岳のコル(07:10)・・・阿弥陀岳(07:58)[休憩 25分]・・・中岳のコル(08:51)[休憩 5分]・・・行者小屋(09:40)
【3日目】
行者小屋(05:40)・・・美濃戸(07:20)[休憩 10分]・・・美濃戸口(08:12)
高低図
標準タイム比較グラフ
登山記録
行動記録・感想・メモ
前回の雪山山行から既に40日余りが経過し、痛めた足の親指の爪もキックステップに耐えられる様になったものの、中々タイミングが作れないまま3月の飛び石連休でようやく山行できた。
今回のテーマは阿弥陀岳の冬期登頂と雪山テント泊での滞留訓練と決め、当初は3月18日~20日で計画していた。この計画だと帰宅翌日の休日を道具の片付けに当てられるメリットがある一方、帰宅日が平日のため美濃戸口のバスが運休であることからタクシーを呼ぶ必要があるのでコストが掛かる。
しかし、約1週間前の予報で17~18日が南岸低気圧による雨予報となったため、降雪日の翌日は表層雪崩の確率が高いので、登頂日をその翌々日にするため、予定を一日遅らせる事にした。
当日の茅野駅からのバスはガラガラで、座席の埋まり具合は8割くらい。前回の混み具合はアイスキャンディーフェスティバルの影響だったのかな。美濃戸口到着後、少し早い昼飯を八ヶ岳山荘のキーマカレーで味わい、装備を整え出発した。
美濃戸までの美濃戸林道は、車道の部分の雪はほとんどなかったが、前日に雨が降ったので泥だらけだった。美濃戸の手前辺りから雪の場所が増え始め、南沢の登山口に入るとアイスバーンの様に固まった雪道だった。
1900m位から上は完全に雪だが、この日は気温が高くて手袋なしでも平気なくらいで、高い気温のため樹上の雪が至る所で降り注ぎ、時折降り注ぐ大きなカタマリに直撃されない様に、釣行となるサラサラと雪が落ち始めたら少し泊まるという子とぉ繰り返しながら進む。
行者小屋に到着した15時くらいの時点では、それほど寒い感じではなかったが、16時に近づくとドンドン寒くなっていき、ここが雪山だという事を感じさせた。
まだ明るかったので、前回見つけられなかった水場を確認した。このため今回の山行では水作りに精出す事はなくなった。
夕方、気温が低くなってから、それほど寒くなかったことから素手で作業を続けていたが、気がつくと左手の人差し指が指サックを付けたみたいな感じに感覚がなくなっていた。
凍傷の一歩手前、雪山は油断できない。
夕食は、今回から取り入れてみたモンベルのリゾッタシリーズ。3分でできるのが売りで、思った以上に美味かった。調理などをしているとテント内は3℃くらいになり、2月のテント泊の時には決して氷点下以上にならなかったのに、今回はだいぶ暖かい。なお、雪山はそれほど喉が渇いていなくても、思った以上に脱水しているのでお茶などを飲んで給水に努めた。食事を終えて19時鴫に就寝した。
翌朝は、3月後半で雪が緩んでいる事を考慮して、早い時間に阿弥陀岳に登ってしまおうと考え、当初考えていた赤岳から阿弥陀岳のコースから赤岳は除外、文三郎から中岳経由で阿弥陀岳を目指す事で行動時間を短縮するため4時にテン場を出発した。
暗い文三郎には前々日の雪が積もり、階段から上はトレースが消えていた。中岳との分岐の道標がシルエットで見えていたので道標を目指して登っていく。途中、中岳側へ直接トラバースしてしまおうかとも考えたが、その下の沢の斜面に滑落するリスクがあるためトラバースせずに道標を経由するルートとした。
道標から赤岳と中岳のコルへ下降し中岳へ登っていく。顕著な山頂を目指して登りやすい様にジグザグに登った。山頂手前から雪深くなり、山頂に見えたピークは雪の塊。南側に大きく雪庇が張り出し、ピッケルを斜め南側へ刺して地面がある事を確認しながら中岳のコルへと向かった。北側斜面は積もった雪の上に灌木の枝が飛び出していて、容易に滑落しそうな感じではなかったが、何所までも深そうなふわふわの雪面だけに落ちたくなかった。
中岳のナイフリッジ上、コルの手前で中岳沢から上がってきたという登山者2名とすれ違う。中岳沢は有名な雪崩の巣窟なので、基本的に積雪期には使うべきではない。その後、中岳沢のトレースの付いたコースをカモシカが上ってくるのを見て、雪深い時期は動物でも楽をしたいのだなと微笑ましく思った。
中岳のコルから見上げる雪の付いた阿弥陀岳は、赤岳山頂から見ても壁の様に見えていたが足下から見上げると一般登山道とは思えない位に立ちはだかった壁だった。取付きにある梯子はほとんど雪に埋もれており、梯子の所から日中の暖かさで溶けた雪が夜の寒さで凍り付いた氷の壁になっていた。夏山の登山道でもあるルンゼは完全に脆い氷に覆われ、氷瀑をシングルアックスで登る様な感じであり、正直登りたくないなと思った。
梯子を越えると鎖の一部が顔を覗かせていたが、ほとんど埋もれて掴めなかった。掴める岩がある所は岩を掴んでいくが、2700m付近と2750m付近の斜面は完全に凍った雪に覆われていたため、アイゼンの前爪とピッケルをダガーポジションで突き刺して登った。空いている左手は何所も掴む場所がなかった。2750m付近を越えるとようやく傾斜が緩み、露出した岩に掴まって休んだ。
しばらく休んだ後、雪の積もった斜面を登るとすぐに山頂に到着した。山頂に人影はなく、山頂標識や石仏等は雪に埋もれて何所にあるのか分からなかった。南稜側は雪解けが進んでいる様で南稜方向を示す道標が雪の中から露出していた。
この日は風もなく非常に穏やかな天気だったので、強い日差しに汗ばむくらいだった。南稜のピークの峰から響いてくる声を聞きながら、行動食を食べて給水した。
下山ルートは、当初の計画では来た時同様、文三郎尾根を下降するピストンで考えていたが、8時過ぎでこれだけ気温が高くなっているので、中岳の雪庇の崩落や昨年4月に発生した文三郎尾根での雪崩などを考えると、中岳沢のルートを使い、短時間で行者小屋のテン場へ戻る方がリスクが少ないと考えた。先程見たカモシカに野生の勘というものがあるのなら、そうしたリスクが少ないと感じていたので中岳沢を上がってきたのではないかとも思えた。
中岳のナイフリッジを行動中に北側の斜面を見た限りではクラックや不自然な雪面の皺は見られなかったし、阿弥陀岳の中岳沢側にもそうした状況は見られなかったことから中岳沢の下降を決断した。
中岳沢を下降中は左右を見ながら雪崩の兆候を気にしながら進んだ。時折転がり落ちてくる雪玉にヒヤリとした。途中、2名の登山者とすれ違う。この日すれ違った登山者は併せて4名のみだった。
幸い、雪崩に遭遇せずに行者小屋のテン場に到着し、装備を外してテントの中でグッタリした。この時点でまだ10時で充分に下山して、美濃戸口発、午後のバスに間に合う時間だったが、今回の山行のもう一つの目的は雪山停滞訓練だったので下山を考えなかった。
行動中にかいた汗でインナーが湿っていたため、着干ししようとテントの入口を閉めると、強い日差しにテント内は30℃を越え、湿っていた衣類等を完全に乾かす事ができた。
その後、昼食にチキンラーメンを食べテン場周辺で写真を撮ったり、粉末の経口補水液をペットボトルで溶かしたものを雪に埋めてシャーベット状にして、汗ばむ雪上でのデザートにしたりと、デジタルデトックスな状態を楽しんだ。
日中はテント外で10℃を越える暖かさだったが、16時近くになると急速に冷え始め、陽が落ちる頃には氷点下になった。二晩目の雪上テント泊の夜を過ごし、翌朝は5時出発の予定で撤収作業にかかったが、日中の暖かさで溶けた雪がテントにしっかりと凍り付いており、氷を取り除くのに時間がかかってしまったため出発時間がかなり遅れてしまった。今回はテントをザックの中に納めるのは諦め、雨蓋に挟み2時間半程で美濃戸口に下山した。
今回は、出発時にスマホで写真を撮っていたところ本体が冷えすぎてしまい、電池残量が24%になりGPSが作動しなくなるトラブルが発生した。原因は、いつもはポーチにカイロを入れているのだが、この日は撤収作業中の手を温めるのに使って、ポーチに入れていなかったためであった。幸い、スマホを暖めて再起動したところ、89%に回復して復活した。
スマホは非常に便利であるが、こうした脆弱性があるため、地図を携行する必要性と、現在位置の特定を容易にするため、確実に高度が分かる場所での高度計の修正が重要であると再認識させられた。
また、残雪期故の不安定な環境条件への対応を余儀なくされた山行であり、ここ最近でもっとも生命の危険を感じた山行でもあった。
フォトギャラリー:39枚
装備・携行品
シャツ | アンダーウェア | ダウン・化繊綿ウェア | ロングパンツ | 靴下 | 登山靴 |
バックパック | サブザック | スタッフバック | スパッツ・ゲイター | 水筒・テルモス | ヘッドランプ |
タオル | 帽子 | グローブ | サングラス | 着替え | 地図 |
コンパス | ノート・筆記用具 | 腕時計 | カメラ | 登山計画書(控え) | ナイフ |
修理用具 | ホイッスル | 医療品 | ロールペーパー | 非常食 | 行動食 |
テーピングテープ | 軽アイゼン | トレッキングポール | GPS機器 | テント | シュラフ |
シュラフカバー | テントマット | スリーピングマット | ストーブ | 燃料 | ライター |
カップ | クッカー | カトラリー | ローソク・ランタン | アウターウェア | オーバーパンツ |
バラクラバ | オーバーグローブ | 雪山用登山靴 | アイゼン | ピッケル | ショベル |
ゴーグル | ヘルメット | ||||
【その他】
装備重量:約22kg(白湯0.75L及びペットボトル600ml含む) 食料:1日昼食@八ヶ岳山荘でキーマカレー、夕食@アルファ化米+干し芋+ジャーキー+スープ 2日朝食@アルファ化米+味噌汁、昼食@行動食+チキンラーメン、夕食@アルファ化米+干し芋+スープ 3日朝食@アルファ化米+味噌汁、昼食@八ヶ岳山荘で山賊焼き定食 非常食:パスタ、チキンラーメン 水:白湯0.75L(行動時) (使用量/保有量@初日:0.6L/0.75L、2日目:0.3L/0.75L、3日目:0.3L/0.6L(ペットボトルの経口補水液) ガス使用量:28g(調理回数5回+コーヒー沸かし他、雪からの水作りはせずに水場使用) 気温:日中:16℃(美濃戸口)~8℃(美濃戸)6~12℃(行者小屋) 夜:-10℃(テント外)3℃(テント内) 明け方:-12℃(テント外)~-6℃(テント内)※2日目の日中テント内は締め切りで36℃まで上昇 日没/日出:18:05/05:45 エスケープ:行動可能な場合、美濃戸口へ下山する。 その他:エアピロー、ウォームアップシーツ、ジェットボイル、保温ボトル0.9L |
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