行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
尾瀬戸倉の鳩待峠行きバス乗り場「尾瀬第1駐車場」を利用。収容台数280台。駐車料金:1000円/1日。綺麗なトイレあり。GPS座標(36°50’18.7″N 139°15’01.7″E)
この登山記録の行程
鳩待峠・鳩待山荘(06:30)・・・小至仏山(08:12)・・・至仏山(08:37)(休憩~09:00)・・・至仏山登山口(10:30)・・・尾瀬ヶ原散策・・・山ノ鼻キャンプ場(11:10)・・・鳩待山荘・鳩待峠(11:55)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
この時期だけの突別な尾瀬へ行きたくて、数年、チャンスを狙っていたが、天気が悪かったり等あってなかなか実現に至らなかった。
今年こそはと、早めにスケジュール調整を行い万全で当時痛を待つ。てんくらは生憎の「Cマーク」だったが、強風による影響で天気自体は晴れ予報となっていた。強風は厳しいが、これはもう「無理をしてでも行くしかないだろう」と決行を判断した。
特別な時期と書いたのには2つの理由がある。
1つは、雪解けを迎える至仏山の登山道は7月の山開きまでの間、植生保護のために登山禁止となるが、残雪期の僅かな期間だけ特別に登山が許される。しかも、その期間は鳩待峠までの交通制限も解除されるので、直接、車で登山口まで行くことができるため手軽に雪の尾瀬を楽しむ絶好の機会となる。
もう1つは、至仏山は通常、尾瀬側から登り鳩待峠へ降るという、山では珍しい一方通行となっているが、この時期だけは逆周りが許される。逆回りだと何が嬉しいのかというと、通常、尾瀬を背にして登るのに対して、雪景色の尾瀬を眺めながら降ることができるという贅沢な登山が楽しめるスペシャル感は半端ない。
金曜日の仕事を早々に終わらせて、速攻で帰宅と同時に出発しようと計画していたが、定時30分前に飛び込んできた仕事のせいで、結局、会社を出たのが21時という既に出発前から心が折れかけたが、「どうしても行くんだ!」と奮い立たせ22時に車に乗り込んだ。
車を走り出した時点であくびが止まらず眠くて仕方がなかったが、距離を走るにつれ徐々にアドレナリンが放出され、無事、居眠りをすることもなく走り切ることができた。
それにしても、金精峠が冬季期閉鎖(今年度は4月25日まで)だったため群馬周りの経路を強いられたため、いつも以上に遠く感じた。
片品村の看板を見てホッとしながら、続いて尾瀬戸倉から鳩待峠へ続く林道へと進んでいく。いつもだと戸倉でバスに乗り換えなければならない規制ルートを、自分の車で走るのはとても新鮮だった。ただ、規制が解除される特別な期間だけに、日本中から登山者が集まってくるため、相当早くいかないと直ぐに駐車場が満車になってしまうのが最大の懸念だった。
結果、焦る気持ちを押さえながら車を走らせたが、3時到着時点で既に駐車場は満車になっていた。ここに来て、残業のしわ寄せが致命的だったと言える
幸いスマホが入ったため、なにか対策はないかと検索してみたところ、この特別な時期に合わせて戸倉からのバスも運行を開始しているという。折角、鳩待峠までやってきてバスに乗るのは悔しかったが、ここは大人しく戸倉まで戻ることにした。
その前に、車を停めて外へ出てみたら、空いっぱいに高密度の星空が広がっていた。さすがは尾瀬。これだけ見事な星空は久しぶりに見た気がした。写真を撮ろうかとも思ったが、指先が痛くなるほど冷え込んでいたので、記憶の中だけに留めることにした。明日は、相当、冷え込んでいるかも知れない。
くねくねした長い道のりを戸倉まで戻った時には、だいぶ空が明るくなってきていた。バスの利用を考えて、第一駐車場へ車を停める。この時期は6時が始発だという。少し仮眠をとも思ったが、時間が中途半端だったので、朝食をとりながら待つことにした。
6時少し前に発券機がOPENになったのでチケットを購入。
「帰りは鳩待峠で購入してください」とあったので片道分として1,000円のチケットを購入した。チケットはバスと乗り合いタクシーの両方を兼ねているのでどちらにも使えるのは便利な仕組みだ。ちなみに、もし鳩待峠に駐車できたとしたら、鳩待峠の駐車料金は2,500円/日。戸倉の場合は、駐車場代が1,000円/日で、バス代往復が2,000円なので、鳩待峠に停めた方が500円お得ということになる。もっとも、バスの時刻に左右されず気ままに歩ける特典を考えると、是が非でも鳩待峠に間に合わせるべきだったと悔やまれた。
6時ちょうどにバスに乗り込み、いざ、鳩待峠へ出発。
バスの揺れが心地よかったが、登山モードに意識がシフトしたのか、不思議と眠気はなかった。
バスを降りると、あまりの寒さにブルブルと身体が震えた。
寒いはず。スタッフのおじさんが、「マイナス3度です。凍っているので転ばないように!」と声をかけていた。
雪山のマイナス3度と言えば、まだ温かく感じるレベルだが、すっかり春の麓とのギャップが大きかったことに加えて、樹々がしなるほどの強風が吹いていたこともあり、きっと体感的にはマイナス10度くらいに感じていただろう。
おじさんの注意を聞いていなかったのか、テカテカに凍った路面で「ドシン」と大きな音を立てて転んでいる人がいた。かなりの衝撃だったが、大丈夫だったのだろうか。
鳩待山荘の手前でアイゼンを装着。登山口は山荘の反対側。緩やかな斜面を登っていく。憧れていた至仏山逆周りの始まりだ。
登り始めて直ぐに小至仏山が右前方に見えた。
今日は尾瀬の風景を堪能しながらゆっくり歩くことにしよう。
オヤマ沢田代まで来ると、尾瀬ヶ原と燧ヶ岳がはっきり見えるようになってきた。
雪がかなり解けているようで、所々、地面が露出して黒くなっていた。自治体のホームページによると例年4mあるところが、今年の積雪はその半分しか無いという。尾瀬の雪解けもかなり早く進んでいるようだった。
小至仏山へは、斜面をトラバースしながら進んでいく。遥か下の方まで斜面が広がっているので滑落したら一気に落ちてしまいそうだったが、気温が低いためクラスト状の雪面にはしっかりアイゼンの歯が食い込んだので歩きやすかった。そもそも先日の笈ヶ岳に比べたらお茶の子さいさいだ。
小至仏山まで来ると至仏山の頂はもう目前。
岩場を左巻きに迂回しながら山頂へ立つ。
最初に目に入るのは、やっぱり尾瀬。至仏山の頂から眺める尾瀬ヶ原は、長方形の奥行きを持ったフランス式庭園のように整って見える。その先には双耳峰の鋭い頂を持つ燧ヶ岳と、その左奥に会津駒ケ岳が鎮座している。どちらも今すぐにでも登りたくなるような魅力的な山だ。
尾瀬ヶ原の中央付近には、隣接するように「景鶴山(けいづるやま)」も見えた。百名山の至仏山や燧ヶ岳に挟まれているため、あまり知名度は低いが、三百名山の一つで残雪期しか登れない稀有な山として、これも一度は登ってみたいと思っている。
その頂の奥にも一段と存在感を放つ、大きな山が白く聳えていた。百名山の中でも頂までの距離が長いことで有名な「クラシックロード」と呼ばれる痺れるルートを持つ平ヶ岳。弁当を買い忘れて、シャリバテになりながら登った記憶が懐かしい。
尾瀬側だけでもなんと豪華な風景だろうか。これだけでも一睡もせずにやってきた甲斐があるが、至仏山からはまだまだ360度の素晴らしい眺望が楽しめる。
振り返ってみると尾瀬ヶ原の反対側には別な感動が待っていた。
雪深いと思った平ヶ岳よりも更に純白の雪を冠した山々が連なっている。あまりの美しさに思わず「うぉーーー」と唸ってしまった。
純白の中でもひと際目立つのは谷川岳。武尊も確認できた。尾瀬とこんなに近かったのかと改めて思った。
ずっと眺めていたかったが、強風で身体が冷えてきたので、いよいよ下山モードに入る。
ある意味、今回の目的は登ることよりも降ることにある。
緩やかな鳩待峠からのルートに比べ、尾瀬側の斜面はかなりの急登で、頂から降っていくと下の方が見えないほどハングしているため、まるで尾瀬ヶ原上空を滑空しているかのような風景が楽しめる。
「これは最高!」
想像していた以上に最高だ!
数週間後には、雪解けが進み水芭蕉が尾瀬を包んでいく。
何度来ても飽きない、大好きな尾瀬。
「今年は鳩待峠からアヤメ平を抜けて歩いてみるか、、、」とまさに実物の鳥観図を眺めながら想像を膨らませた。この期間限定の逆周りが歩けて本当に良かったと思う。
下山後、余韻を楽しむべく尾瀬ヶ原を少し散策したのち、鳩待峠までゆっくりと戻った。
余談として。。。
鳩待山荘まで戻り、一番最初に帰りのバスの時間を確認した。
時刻表を示すプレートには「12:00」とある。腕時計は「11:55」。
なんとラッキーなタイミングだろうか。急いで帰りのチケットを購入する。
おばちゃんもニコニコしながらチケットを手渡してくれた。
ザックを下ろし荷物の整理をしながら、バスの到着を待っていたが、5分過ぎてもバスが来る気配がない。苦い過去の記憶が甦ってきて、チケット売り場の説明を改めて読み直してみると「バス乗り場はここではありません」と書かれているではないか。
そういえばそうだった。
「あーまたやってしまった」と急いで下の駐車場まで走るが、既に時計は「12:02」。無情にもバスは走り去った後だった。チケット売り場のおばちゃんも「5分後だから急いで下の駐車場まで行ってね」と一言、言ってくれればよかったのに。。。
3度目はもう同じ失敗はしないと誓った出来事だった。




























