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雲海に浮かぶ穂高連峰(2日目)

槍ヶ岳、大喰岳、中岳、南岳、長谷川ピーク、北穂高岳、北穂高岳南峰、涸沢岳( 北アルプス・御嶽山)

パーティ: 4人 (Yamakaeru さん 、ほか3名)

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行程・コース

天候

1日目:晴れ、2日目:晴れのち雨、3日目:雨のち曇り

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 県有公共駐車場(P3)。新穂高センター(奥飛騨温泉郷観光案内所、綺麗なトイレあり)の正面にあり、笠ヶ岳や槍ヶ岳の起点としてもっとも便利な駐車場。しかし、盛期のみ開設で、16時になると閉鎖されるため、下山が遅れると出庫できなくなるため要注意。1泊1,200円×3日分(HPには1,000円と書かれていたが値上がりした模様)。

この登山記録の行程

1日目:新穂高センター(03:00)・・・穂高平小屋(03:50)・・・チビ谷(05:24)・・・滝谷避難小屋(05:50)・・・藤木レリーフ(06:01)・・・槍平小屋(06:48)・・・千丈沢分岐(08:52)・・・千丈沢乗越(09:44)・・・槍ヶ岳(12:08)・・・槍岳山荘(13:28)
2日目:槍岳山荘(03:59)・・・飛騨乗越(04:08)・・・大喰岳(04:38)・・・中岳(05:22)・・・南岳(06:38)・・・南岳小屋(06:45)・・・大キレット・・・最低鞍部(08:04)・・・長谷川ピーク(08:36)・・・A沢のコル(08:58)・・・北穂高小屋(10:40)(休憩~11:10)・・・北穂高岳(11:27)・・・北穂高岳南峰(11:48)・・・涸沢岳(14:02)・・・穂高岳山荘(14:15)
3日目:穂高岳山荘(05:20)・・・荷継沢・荷継小屋跡(07:27)・・・白出沢口(09:20)・・・滝谷避難小屋(10:03)・・・新穂高センター(10:49)

コース

総距離
約7.5km
累積標高差
上り約1,371m
下り約1,463m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

3時に起床。
と言っても快適な起床ではなく、あまりの暑さに何度も目が覚めてしまい、眠れた感じがしなかった。3,000メートル級の山小屋なので、むしろ寒いと思っていたが大間違いだった。
音を立てないようにそっとベッドを抜け出して出発の準備を整える。
4時少し前にザックを背負い、山小屋の玄関に集合した。
小声で「じゃ、行きますか?!」と声をかけ、外に出ると満点の星空が広がっていた。槍の上空には白く輝く天の川があった。
槍の黒いシルエットにヘッドライトの点がいくつか揺らめいて見えた。既に何人かの登山者が頂に向かって登っているようだった。
暑かったのは部屋の中だけかと思っていたが、外の空気にも前日の熱気が残っているようで、半袖・短パンでも全く寒くは無かった。
全員に声を掛け合い、準備が整ったことを確認して歩き出す。冒険2日目の開始。
今日の工程は、昨日に比べて距離は短いものの、山のグレートとしてはワンランク上となるため、十分気を引き締めて行かなければならない。
テント場の横を通り過ぎ、飛騨乗越を目指して岩稜地帯の中を降っていく。岩にヘッドライトの光が当たり生じる影のゆらつきで、かえって足元が見えづらく足を挫かないよう慎重な足運びが求められた。
ほどなくして「大喰岳」へ到着。
振り向くと朝日を待つ槍ヶ岳のシルエットが見えた。先ほどまでは星空を背景に真っ黒なシルエットに見えていたが、今は朝日がもうすぐそこまで来ていて、ほんのりと縁が赤く浮き上がっていた。
ゴロゴロした岩の道を歩きながら、次のポイント「中岳」へ向かう。
真っ赤な日の出を心待ちにしていたが、太陽が顔を出すと予想される位置には、よりによってぶ厚い雲の塊が張り付いていて、残念ながら日の出の瞬間は見えないことが明白だった。
中岳に到着。頂からは、周囲360度に雲海が広がっているのが見えた。これから向かう先には、実際に歩く穂高連峰がまるで雲海に浮かぶ列島のように延びていた。3,000m級の日本でもっとも贅沢な稜線と言える。
荒々しく、険しさの中に美しさがある稜線。
「この景色が見たかったのだ」と感動がこみあげてくる。
「さぁ、天空の稜線を思いっきり楽しもう!」と再び歩き出した。
南岳小屋で小休止を入れて、いよいよ2日目最難関エリア「国内屈指の難易度を誇る大キレット」に突入していく。
大キレットは真横に位置する蝶ヶ岳から見ると、その尋常じゃない落差が良く見て取れるが、実際に稜線上に立って見下ろすと臨場感が半端なく、「本当にこんなところを降って、あんなところを登り返すのか!」と武者震いとともに変態としては顔がにやけてしまう。
「いざ!」と鎖を握りしめ、目印を頼りに岩場を進んでいく。切れ落ちた崖の先は、遥か下まで続いていて足元がスースーする。スケールの大きさを前に、まるで自分が岩の上にしがみついたアリンコになった気分だった。
バランスを崩した途端、即「死」の世界。しかし、不思議と恐怖は感じず、むしろ感動の方が大きい。日常からかけ離れた非現実的な世界に身を投じていることが、山屋にとってはとても貴重でかけがえが無い時間と言える。
底部まで降ったところで振り返ると、歩いてきた南岳南壁が反り返るように聳えているのが見えた。荒々しいという意味では昨日の槍ヶ岳よりも迫力がある。
しかし、本当の難所はこれから。
続いて「長谷川ピーク」に向かって登り返していく。まさに巨大な岩の塊。しかも、ピーク付近はナイフリッジとなっていて、ゴジラの背びれを歩いているようだった。
時々、前方からくる登山者と場所を譲り合いながら進んでいく。岩場の上で身体を入れ替える瞬間、お互い緊張が走る。
登り切ると、尖った岩の上にペンキで「Hピーク」と書かれていた。長谷川ピークの事だなと思ったが、なんと雑な目印だ。そう言えば、西穂のピラミッドピークとかもこんな感じだっと思い出した。
再び行く手に目をやると、次のボス「北穂高岳」の壁がさらに険しく聳えていた。どこにルートがあるのか、一見しては判別できないほど険しい岩肌をしていた。
長谷川ピークを降り、「A沢のコル」で小休止を入れてから、いよいよ最後の登りに入る。暫く上ったところで、目を引くのが難所として名高い「飛騨泣き」。崖にせり出した大きな岩。その根元はえぐられていて今にも崩れ落ちそうなアンバランスな状態で立っている。飛騨泣きとは、なんと絶妙なネーミングだと思った。
鎖でしっかりサポートされているため実際にはさほど危険はなかったが、高度感があるため、人が登っているのを見ている方がハラハラした。
飛騨泣きを過ぎて、更に高度を上げていく。
登ってものぼってもその先に新たなピークが出現する。
無間地獄だと少し嫌気がさしてきた。鎖場の緊張感で忘れがちだが、コルセットで耐えてきたが、重いザックに腰が悲鳴を上げている。そこに空腹も加わって、さすがに足が止まりそうになった。一息つこうと、見上げた先に建造物が見えた時は、嬉しくて素で「やったー!」と叫んでしまった。一気に気力が回復して、壁のような最後の岩壁をよじ登り、小屋の前に立った。この達成感は文字にできないと思った。
空腹で限界だったため、小屋前のテーブルを1つ陣取り、昼食をとることにした。
眼下には見覚えのある涸沢が見えていた。色とりどりのテントが小さく並んでいた。
お湯を沸かして携帯食を食べ、コーヒーを飲む。北穂高小屋のテーブルがあまりにも快適だったため、つい長居をしてしまった。業を煮やした仲間の一人が「午後から天気が崩れるよ!」と少し苛立った一言で慌てて歩き出す。しかし、雨が降るような空模様ではなかったため、なんとなく全員の機敏さが欠けていた。これが、後々、災いとして降りかかってくることになるが、この時点では誰も知る由は無かった。
北穂高小屋の後ろに周り北穂高岳の頂に立ち寄る。
北穂高岳は北峰と南峰に分かれていて、小屋側の方は北峰となる。続いて、北峰からすぐのところにある南峰へ立ち寄る。こちらは、ルートから僅かに外れているためスルーする人が多いが、北峰よりも迫力があるので是非立ち寄るべきだと思う。
コースに戻り、更に進むと「奥壁バンド」のエリアに突入した。
奥壁バンドとは、滝谷ドームから涸沢のコルへ続く岩壁(高低差300メートルの大きな壁)をトラバースするルートを指し、特に滑落が多い危険なエリアと言われている。しかも、結構なアップダウンに加えて浮石も多く、ある意味、大キレットよりも神経を疲労した。
涸沢のコルで小休止を入れて大きく登り返す。
まるで垂直の壁を登っているようで、重い荷物にスピードが出せず、もたついているうちに完全に4人の列がバラケてしまった。
そこへ最悪のタイミングで、恐れていた雨がぽつぽつと降って来た。
小雨程度かと空を見上げた途端に、大粒の雨となって勢いよく降り注いできた。
慌ててレインウエアを着込んだが、上を着込むのが精いっぱいで、僅かな間で濡れてしまったので、ズボンは諦めて履かないことにした。
困ったことに、まだ岩山の半部にも来ていない。
雨で濡れた岩は危険度が増し、鎖を握ってもずるっとスリ抜けてしまう。
「雨が上がるまで待つべきか?」とも思ったが止むような雨ではなかったため、覚悟を決めて登ることにした。
みんな無事だろうか。
岩山の上までたどり着く。この先にもピークがあったらさすがにやばいと思ったが、どうやら急所は過ぎたようで、そこからは普通の登山道が続いていたのを見て安堵した。
後ろにいる仲間の一人を心配して、崖の下を暫くのぞき込むながら待ってみたが、一向に来る気配がなかった。激しい雨の中で立ち尽くしていても状況は変わらないので、先にとりあえず山小屋まで移動して残りの仲間と合流することにした。
雨がどんどん強さを増していく。
レインウエアの帽子を手で押さえて雨をよけながら歩いていると、目の前に見覚えのある涸沢岳の標識が見えた。
即ちゴールが近いことを意味する。
記憶の通り、すぐに赤い屋根が眼下に見えてきた。穂高岳山荘だ。
雨が靴の中まで侵入して、ぐちょぐちょ状態。すこぶる気持ちが悪かったが、赤い屋根が見えたことで、再び心の中に灯がともった。
元気が出たので、ピークに立ち寄り標識を写真に収めてから、小屋へと向かった。
小屋に着くと、先行していた仲間2人が心配そうな顔で待っていてくれ、自分を見つけると、乾いたタオルでレインウエアの上から拭いてくれて「大丈夫だったか?」と気遣ってくれた。
ザックを降ろして靴を脱ぐと、足の指がすっかりふやけてシワシワになっていた。
そうこうしているうちに、心配していた最後の仲間が無事到着した。今度は自分がタオルで拭いてあげる。全員無事でよかった。
全員揃ったところでチェックインを済ませ、部屋へ移動する。昨日と異なり、開放感のある畳部屋の一角が割り当てられていた。
荷物を全部取り出して、濡れたものを乾燥室へ持っていくと、沢山の服や下着がぶら下がっていて干す場もないくらいだった。
落ち着いたところで、談話室へ移り酒を酌み交わしながら明日の計画について相談する。
雨は止むどころか勢いを増すばかり。
試しに明日の天候を調べてみると、午前中は完全な雨マークで、午後に一部晴れマークがついていたが、終日ぐずついた予報になっていた。
天気予報を見て「中止だ!」という者。
「小雨なら行けるだろう?」という者。
様々な意見で完全に意見が割れた。
正直、ジャンダルムには行きたい。正確には今回のミソは、槍からジャンを歩き切ることに意味があった。ここまで来てそれを中断するというのは断腸の思いと言える。しかし、計画を実行に移す際、心に決めていたことがあった。全員が万全の状態で挑むから価値があるのであって、危険要素があれば速やかに中止すると。その時、判断がブレないように雨マークが少しでもあったら即中止にしようと条件を決めていた。
そう仲間に伝えると、全員快く了解してくれた。こういう時、全員がプロ(熟練者)でよかったと有難く思った。
よって、ジャン中止を決定して、代わりにエスケープルートとして、穂高岳山荘から直接「白出沢コース」を使って新穂高温泉側へ下山することにした。
17:45。
山小屋スタッフの「二回目の夕食開始」という合図で食堂へなだれ込む。
槍ヶ岳山荘の夕食がイマイチだったので、半分期待していなかったが、テーブルに座った瞬間、プレートに乗った豪華なおかずと種類の多さにびっくりした。
「これぞ山小屋ご飯だ!」
ただ、ご飯をかき込もうとしたが、久しぶりの縦走&連泊で水のコントロールを誤ってしい、胃液が薄まったことで食事を前にしても全く箸が進まなかった。頑張って食べたが、結局、おかずの一部を残してしまったのは自分らしからぬ失態だった。
夕食後、暫く談話室で自由時間を過ごしてから、部屋へ戻り就寝。
穂高岳山荘の寝具は、かつてないほどに快適で、正直、山小屋でこんなに熟睡したことはなかったと思う。深い眠りとともに、冒険2日目を終えた。

1日目の記録:
https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=303859&preview_flg=1
2日目の記録:
https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=303860&preview_flg=1
3日目の記録:
https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=303861&preview_flg=1

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装備・携行品

みんなのコメント

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  • 2日目から、だんだんと荷物が身体の一部になってきました。

  • 自分は2日目も重くて死にそうでした。

登った山

大喰岳

大喰岳

3,101m

中岳

中岳

3,084m

南岳

南岳

3,033m

北穂高岳

北穂高岳

3,106m

涸沢岳

涸沢岳

3,110m

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