行程・コース
天候
雪/快晴/快晴
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
この登山記録の行程
層雲峡(9:00)黒岳五合目(9:10~14:45)七合目幕営(15:30/4:15)黒岳(5:45~6:15)石室(6:35)桂月岳(6:45)石室()烏帽子岳(8:40)五色岳(9:10)夏道・デポ(9:45)白雲岳(10:50)小白雲岳(11:25)鞍部(12:25)東岳(12:45)赤岳(13:20)小泉岳(13:55)デポ(14:20)幕営(15:30/7:55)北海岳(8:10)松田岳(8:55)新井岳(9:20)間宮岳(9:30)旭岳(10:30~11:25)旭岳温泉(12:20)旭川(13:30)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
羽田空港の手荷物検査でガスボンベが引っ掛かるが、灯油コンロは無事通過して予定通りに出発する。新千歳空港で手荷物が出て来るのが遅い様な気がしてやきもきするも、間一髪で目指す列車に乗り、予定より1.5時間早く旭川駅に到着する。
若山さんの叔父さんが出迎えてくれ、忠別川向こうの家へお邪魔する。タラバガニとズワイガニ、フキの煮付け、シャケの焼身、イクラ、アイヌネギの御浸しと醤油漬けと山海の珍味を腹いっぱい御馳走になり、お酒で好い気分になって寝る。
翌朝、外はまだ雨が降っており落胆するが、予定より少し遅れて層雲峡まで送ってもらい、ロープウェイの箱に2人だけで納まって五合目へ上がる。服に着くと直ぐに融けてしまいそうな雪が降っており、「これでは、すっかり濡れてしまう」と、駅舎で様子を見る事にする。
待つ事5時間余、「やっと好転する様だ。黒岳まで行こう」と、丸1日待機する破目から救われてほっとしながら小降りになった雪の中を出発する。
リフトは背丈の長い夏季用に架け替え中で、残雪を削り取った溝が2本、鉄塔の両側のリフトの下に続いている。ガスって見通しの利かない中、「格好のルートだ」と溝の中をシールで登って行くと作業中の鉄塔の上から声が掛って、「危険だから、外の斜面を歩いて下さい」と追い出される。
練習するに程好い斜面で、「好いスキー場だなあ。一度来なくては」等と考えながら登って行くと、次第に傾斜が増して山頂駅に着く。休憩舎で一本立てる。降雪が多くなっているのに気付き、今日の行動を諦めて、ロープウェイ山頂駅の快適そうな板張りの上にテントを張る。
テントの外はガスに包まれて薄暗く、夜明け前の沈んだ空気に満たされている。天気予報を信じて予定通り行動する事にして、板張りの上にラジウスを据えて朝食を取り、テントを畳んでパッキングする。気が付くとガスは雲海となって足下に沈み、正面の山の端が赤金色に輝きを増し、明けの明星が澄んだ空に一際強く光を放っている。快晴だ。黒岳の大斜面が朝日を受けて輝いている。一昨日からの新雪が10cm以上積って、銀世界が眩しい。
シールとスキーアイゼンが雪面をよく捉え、大きくジグザグを切りながら左上して進み、山頂直下のデブリを気にしながらも気持好く登る。低気圧が通過した影響で西寄りの風が強めだが、ズボン下を着用してノーヤッケでちょうど好い具合だ。
黒岳山頂の雪は融けて無いが、真っ白い大雪山の展望が広がる。御鉢の縦走路や、今回踏破を目論んでいる烏帽子岳、五色岳、赤岳へのアプローチの状態を熱心に観察する。ここは2回目だが、前回は終日雨に降られて全く視界が無かったので、初見参と言う次第だ。沢筋には雪が詰まっている様子なので、夏道通りに北海岳を経て行かなくても、沢を2本程横断すれば烏帽子岳へ近道出来そうだと見当を付ける。
石室への道は風が強そうなので、ヤッケの上衣を着て歩く。夏道には水と雪と氷が混在し、ザックのスキーが突風に煽られてバランスを取るのが難しいので、斜面の途中からスキーを履いて滑り降りる。
3~4mの雪に埋まって屋根だけ出ている黒岳石室にザックをデポして桂月岳を目指す。絹の様な新雪面にスキーを滑らせるのはほんの一瞬間だけで、裾に広がる這松が姿を現した夏道を登って山頂を踏む。
石室へ戻り、御鉢平から流下している沢の二俣付近へ下降する。西風に乗ってガスの匂いが流れて来るので、急いで沢底を横断して対岸へ上がる。黒岳山頂から見当を付けた如く沢は雪で埋まっており、将に山スキーに打って付けの世界である。P1,909の裾を巡って細い沢を詰めると、雪の下に水音が聞こえる。左手の岩尾根を越えると、澄んだ水を湛えた池が複雑な熔岩地形の間に姿を現わす。
昨年トムラウシを縦走した折も、北海道の残雪の多さとそれに伴う小池の散在する地形が印象的だった。地図を睨み、少し下流へ行って小尾根を越えて烏帽子岳西面の沢身に入り、緩い源頭の斜面を詰めて五色岳へ連なる尾根の上に達する。
烏帽子岳は本物の烏帽子そのもので、ザックを置いて山頂を目指す。裾は風化した細かい熔岩に覆われているが、山頂は大岩から成っている。沢の直ぐ向こうには赤岳が手の届く近さに在るが、一先ず五色岳へ向かい、縦走路へ出る事にする。
五色岳は縦走路と烏帽子岳の途中に在るだだっ広い丘で、雪景色を眺めながら歩いて難なく山頂を踏み、縦走路に出て一本立てる。「こんな上には熊は出ないだろうが、キタキツネが食料を荒らすと困るなあ」と心配しつつ、ザックの中身をテントに包んで雪の下にデポし、白雲岳へ向かう。
雪質も良く、軽装で快調に歩き、夏道を無視して2,150mの肩へ登る。白い稜線の奥に見える白雲岳山頂は外輪山の最高点で、火口原は雪融け水で浅い池と化している。夏道沿いに鞍部へ登り、純白の斜面に足跡を印して山頂に立つ。台形の上に三角形を載せた独特の形のトムラウシ岳がグッと迫り上がり、美瑛岳や十勝岳も遠くに姿を現す。
次の山頂である小白雲岳はここから見下ろすとのっぺりとして山が在るとも判らず、地図と首っ引きで山頂の位置を確認する。板を肩に担いで外輪山を南東へ向かい、鞍部から沢沿いに下り、雪面に出てスキーを履く。斜滑降で下り、ボーゲンで数回曲がって直カルと直ぐに板が滑らなくなる。ここから緩く登って1,966mの小白雲岳山頂を踏む。
次は東岳を目指す。白雲岳南面の緩い裾をトラバースして暫く進むと、丘の上に鎮座している避難小屋が目に入る。建物の前は雪が融けて斑模様だが、入口には1/3程雪が積っている。スコップがあれば簡単に取り除けそうだ。新雪に覆われて白く輝く緑岳を眺めながら一本立てる。
小泉岳の斜面には半分程這松が現れており、沢沿いに伸びている雪面を拾って2,090mの鞍部を目指す。鞍部を越えると少し下方に台地が広がっており「東岳か? 近いな」と思うが、熔岩小石が点在する雪面をトラバースするとその先に烏帽子岳に似た山頂部がポコッと盛り上がった丘が現れ、「東岳だ」と視認する。2,050mの鞍部から15m登って岩塊の山頂に立つ。
地図を見ると、銀泉台から赤岳へは駒草平と奥ノ平の平坦な地形を繋いで夏道が通じており、上から眺めると山スキーにお誂えのルートの様に思え、滑降したくなる。本日最後の山頂となる赤岳へ向かうべく山頂直下で板を履いて方向転換をしようとすると、手酷く転んで痛い目に遭う。
鞍部からほぼ水平にトラバースして左へ回り込み、2,090m付近の平坦地へ出ると雪の上に奇異な形の道標が黒く出ている。この付近に雪は殆ど無く、ザックと板をデポして赤岳へ向かう。高いと思われる方の岩を目指すが三角点は無く、東寄りのピーク(小岩?)へ行って標石を見出す。
今日は6つの山頂を新規に踏み、合わせて8つのピークに登った訳で、実によく歩いたが、夜を迎えるためにはテントのデポまで戻らなければならない。強い逆風の中、乏しい雪を拾ってシールで小泉岳へ向かうと、枝沢の源頭(2,110m)からは雪が豊富で歩き易くなる。
山頂から下りに転じて暫く行くと、変な音がするのに気付く。ビンディングを調べると、ジルブレッタの命である踵と爪先を連結する6.5mmの2本の金属棒の片一方が折れており、愕然とする。残りの1本が折れると全く使い物にならず、スキーを放棄しなければならなくなると言う非常事態だ。明日1日持ってくれる事を祈るのみで、左足に無理を掛けない様に慎重に歩いてデポに戻る。
若山さんに状況を説明し、「明日は旭岳はカットして、予定通り愛山渓温泉に降りよう」と話す。「今日は、旭岳への分岐点である間宮岳まで進んでテントを張れれば言う事無し」と考えていたのだが、「最も楽しみにしていた愛山渓への滑降が駄目になるかも知れない」と考えると、がっかりして歩く気がしない。縦走路を北海岳へ向かい、頂上直下の東面にテントを張ってブロックを積む。
前日より4時間も遅い出発となる。慎重を期して、距離が短く万一の場合に歩いて下っても今日中には東京へ帰れるようにと再度ルートを変更して、旭岳から旭温泉へ下る事にする。ジルブレッタをロープで補強し、そろりと歩き始める。
北海岳に上がって間宮岳まで稜線通しに歩き、旭岳へ向きを変える。日当りが良い熊ヶ岳南面の雪は酷く腐っており、トラバースに梃子摺る。2,074mの鞍部から一点の曇りも無い旭岳の大雪面に取り付く。シールで斜行して大斜面の端まで行き、向きを変えて反対方向へ登る。快晴の陽射しの下で豪快にジグザグを繰り返すと、傾斜が落ちて頂稜の北端に飛び出す。北面寄りにはスキーのシュプールが何本も下っているのが見え、「無立木の旭岳の斜面は、何処でも滑降できるんだなあ」と羨ましく思う。
山頂の先人と挨拶を交わす。後旭岳の鞍部に見えるテントの主で、「昨日、裾合平の方から登り、日帰りは勿体無いので1泊した」と言う。「昨年の今頃は当麻岳の頂稜は真っ白だったが、今年は雪が少ない。旭岳の夏道尾根も地肌が出ていて滑れない」と言われ、「旭岳ロープウェイへは北西尾根を滑り、下り過ぎないように注意しながら左へ左へと回り込み、姿見ノ池付近へ出るのが滑降ルートだ」と教えてもらう。「想定外のルートで何も情報が無いけど、シュプールが残っているだろうから迷わずに行けるだろう」と一安心する。
旭川の若山さんの叔父さんに電話して事情を話し、出迎え先を変更してもらう。山頂でゆっくり1時間休んでいる間にロープウェイ組数十人が登って来て、賑やかに挨拶を交わす。
靴紐を締め直してパワーバンドを着け、満を持して滑降に移る。頂稜から北斜面に入ると雪が緩み、曲がるのに苦労して転倒する。高度が下がると雪面に熔岩の筋が現れ、歩いて横断する。
地獄谷に出ると硫黄が噴き出して雪が黄色く染まっており、旭岳の山頂が金庫岩の上に見上げられる。山頂からここまでたった25分で滑り降りてしまい、滑降を楽しむには物足りない。
一息入れて姿見駅へ向かう。家族連れなど沢山の人出が見える。スキー場に滑り込み、ロープウェイの右手を滑って途中から左の道路を行き、山麓駅まで存分に楽しむ。
駐車場で装備を解いていると思い掛けず早く若山さんが出迎えに来てくれる。ビジターセンター前のトドマツ荘で温泉に入り、汗と日焼止めクリームを洗い流してさっぱりし、車窓に爽やかな5月の風を感じながら旭川へ向かう。林の中にはまだ1m前後の雪が残っているが下界に降りるとすっかり春の雰囲気で、チューリップが咲きる食堂でビールを御馳走になっていると、急速に疲れを覚える。
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