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巻機-丹後、縦走 敗退記

巻機山・牛ヶ岳・下トンボの頭・永松岳( 上信越)

パーティ: 1人 (山車(dashi) さん )

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行程・コース

天候

初日:晴れ 2日目:曇り、後雨、後雪 3日目:濃霧、後曇り

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 事前に桜坂駐車場の駐車可否を確認したところ、未開通で、キャンプ場管理棟の駐車場を紹介された。ここは除雪が終わっていて数10台の駐車が可能(桜坂より広い)になっていたが、途中、車両進入禁止となっていて、心配になり、結局、国道に路上駐車した。地元の人に相談すると、ここは駐車禁止ではないし、みんな駐車しているので問題ないとのこと。

この登山記録の行程

1日目(4月25日)
清水(07:00)・・・(07:39)桜坂(07:53)・・・5合目(09:58)・・・6合目(11:19)・・・ニセ巻機(14:28)・・・避難小屋下、テント泊(14:44)
2日目(4月26日)
出発(06:30)・・・巻機山山頂標識付近(07:15)・・・巻機本峰(07:35)・・・牛ヶ岳先折り返し(08:15)・・・県境JC(08:20)・・・(08:36)コル(1813P)(08:53)・・・(09:40)下トンボの頭(09:50)・・・P1819(10:20)・・・コル(1770P)(10:45)・・・永松岳(11:15)・・・H1810付近、折り返し(11:51)・・・永松岳(12:05)・・・P1819(12:28)・・・H1810付近、テント泊(12:51)
3日目(4月27日)
出発(08:30)・・・(09:00)下トンボの頭(09:30)・・・コル(10:00)・・・(10:58)牛ヶ岳(11:05)・・・巻機本峰(11:30)・・・避難小屋(12:28)・・・ニセ巻機(12:48)・・・1564P(13:52)・・・6合目相当(14:06)・・・5合目相当(14:21)・・・桜坂PA(15:12)・・・(16:42)清水

コース

総距離
約21.6km
累積標高差
上り約2,172m
下り約2,170m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

 何度目の敗退になるだろうか。少なくとも片手は超えている。雪山はやらないと決めていた。固く締まった残雪期は雪山ではないことにして、歩き易い残雪期の縦走に挑戦してきたが、中々条件は揃わないものである。昨年は4月の初め、下山口である十字峡を偵察したが、全く雪がなく、登山を中止した。逆に、4月に大雪が降ったこともある。これまでの最長到達点は永松岳である。2014年に挑戦したが、永松岳の下りの雪の壁が突破できず、敗退。余りにうまくいかないので、翌2015年は尾瀬からの逆コースにトライし、丹後までの縦走に半分成功した。ところが丹後からの下山で、とんでもないサバイバルを体験することになった。詳細は別の機会に譲るが、是非、お伝えしたいことがある。十字峡の上流、2km余りは三国(さぐり)川、左岸沿いの林道を通ることになる。この林道がデブリに埋まり、すっかり元のV字谷の急斜面となって、雪解けの激流に雪崩込んでいて、大変危険であった。賢明な読者諸君が同じ轍を踏まないことを願う!大分、遠回りになるが、中ノ岳、日向山を経由して、十字峡に下るルートをお勧めする。偶々、野中のバス停から車に乗せていただいた遭難救助隊の人が言っていた。「あそこでは良く事故が起こるんですよ。」お世話にならずに済んでよかった!
 今年は、地元の人の話によると、残雪は平年並みだそうだが、巻機登山口である桜坂の駐車場は除雪が済んでおらず、まだ1メートル位の残雪があった。桜坂の桜は雪景色の中に咲き始め、二子沢川の柳はすっかり青めいて、3年振りとなる訪れを迎えてくれた。
 夏道はヌクビ沢と別れ、東進し、米子沢に突き当たる前に北上して井戸の壁を登る。この井戸の壁の東側で、米子沢に沿った尾根が歩きやすかった記憶があり、そちらに進んだが、沢側にはクラックが入り、尾根寄りは踏み抜きがあって歩きにくく、結局、夏道の井戸の壁に戻り、直登した。大分、遠回りとなった。
 井戸の壁を抜けると、井戸尾根の稜線、五合目に出る。振り返るとランドマークの大源太山を中心に、残雪の谷川連峰が連なる。絶景である。冬山に入る人の気持ちが解る気がする。
 六合目で正面に天狗岩を拝み、標高1,500m辺りまで登ると、広大な雪原が広がる。嘗て何度かスキーで滑ったことがあるが、恰好のゲレンデである。見上げるとニセ巻機、右手には風上の所為(せい)か、山の端を黒く染めた国境稜線がスカイラインを描く。振り返ると正面に苗場山、左に谷川連峰が連なる。谷川連峰の中心には端正なピラミッド型の万太郎山が鎮座する。谷川岳・茂倉岳と仙ノ倉岳・平標山を両脇士に従え、まるで万太郎山が本尊のように成り済ましている。
 ゲレンデが終わり急登の始まる標高1,600m付近で下山者と長話をした。地元の方で、残雪期のこの界隈をほとんど歩き尽くされている。下津川山からネコブ山を経由して十字峡の発電所に下るエスケープルートを教えていただいた。
 ニセ巻機は何時もの如く、地面が出ている。特に手前のピークは谷側の大量の雪塊との間が空洞となり、雪塊にはクラックが走り危険である。帰りに、見事に踏み抜いてしまった。ニセ巻機を過ぎ、早めに雪塊に移ろうと思い、次のピーク(登り時の前記、手前のピーク)の手前で、恐る恐る足を踏み出すと、何の反動もなく踏み抜いてしまった。幸いなことに転倒せず、踏み抜いた右足は宙ぶらりんのままだが、地表に残った左足とザックで落下を免れた。前夜の降雪で空洞(隙間)もクラックも見えなくなっているとはいえ、状況を承知していただけに、判断の誤りであった。以後、標高1,600m辺りまで、笹原を下った。話を戻す。巻機本峰からニセ巻機に囲まれた谷側に、大量に吹き溜まった雪は圧巻である。残念ながら、この雪は首都圏の水瓶には寄与しないが、信濃川の水力発電により、東京電力とJR東日本が電力の恩恵を受けている。雪解け水は魚沼の田を潤し、登川、魚野川、信濃川を流れて日本海に注ぐ。
 巻機避難小屋は完全に雪に埋もれたままで、知らなければ通り過ぎてしまう。いつもの小屋下の鞍部にテントを張る。
 二日目は寝坊と手際の悪さから、出発は6:30になってしまった。予報では15:00から雨になるので、少なくとも、三ツ石山の先の標高の低いところまで行っておきたい。黒い雲も出ているが、見通しも効き、すぐには崩れそうにないので助かる。昨日はずっと壺足だったがクラフト気味なので、アイゼンを付けて出発する。
 巻機山頂標識は雪の中で見えないので、まだ、2m以上の残雪があるのだろう。それにしても不思議なのは、本峰は全く雪がつかないのに、山頂標識のある、ここ御機屋にはこんなに雪が付いていることである。ここからは西北西方向に当たる割引岳方面を見ると、ブッシュが見える。ここはブッシュより低く、冬の西北西の季節風が、ブッシュに遮られ、吹き溜まりとなっているのだろうか?北側は遮るものがなく、越後三山が良く見える。
 牛ヶ岳をピストンするため向かうが、三角点が見つからない。永松岳からの帰りに分ったことだが、国境稜線の分岐を偵察しているうちに、どうやら牛ヶ岳は通り過ぎてしまったらしい。
 これから行く国境稜線は牛ヶ岳の南で東に分岐している。その下り口と思しき辺りには、クラックが横たわっている。その先は雪庇は崩落しているにしろ、急傾斜の可能性が高く、先に踏み出せない。下り斜面を確認できるところまで北に移動しているうちに、牛ヶ岳は通り過ぎたらしい。
 下り口は恐らく、牛ヶ岳の三角点近傍だったと思われる。雪の壁をトラバース気味に50m位下ると、笹藪となる。笹藪も雪崩方向の順目で気にならない。踏み跡らしきものも確認できる。鞍部に近づくと灌木が濃くなり歩きにくい。稜線より南寄りの雪田を伝っていく。
 下トンボの頭--トンボの頭、トトンボの頭、どれが正解か不明。下の沢の名前は下トンボ沢なので、ここでは、これを採用したが、昔の地図を見ると上トンボ沢(手書きの自己記入で典拠不明)もあり、トンボの頭でいいのかも知れない--への登りもほとんど藪である。稜線の南側には雪が付いているが、ブッシュとの境付近の空洞や、雪崩れているところもあり、使えない。北側もブッシュが薄く見え、雪が付いているところもあるが、3年前、痛い目に会った。雪の下もブッシュで、ほとんど踏み抜いてしまう。見えないブッシュは波乗りもできず、手に負えない。やはり藪漕ぎはセオリー通り、稜線歩きである。左右切れていて、ルートが狭くなると、踏み跡が現れ、歩きやすい。また、南側の雪が稜線近くまであると、笹であれば、倒れていて歩きやすい。ただ、前記、歩きやすいところなど、ごく一部であり、ほとんどはきついアルバイトを強いられる。登りの藪は逆目で、しかも顔の高さとなる。
 下トンボの頭から偵察すると、永松岳の手前の1819mのピーク(以下P1819)は岩峰で雪が多く付いている。南側はブロック雪崩で岩肌が見えるが、ピークの辺りにはまだ大きな雪の塊が残っている。特に東側は稜線が東南に延びているので、反対側からでも良く見え、コルが雪で埋まり、雪庇の崩落面が、オーバーハングしている。通過できるか不安になる。
 P1819の下りは何度も逡巡した揚句、どうにか下降。表面10cm以上、腐れ雪なのでアイゼンは効かず、ステップを刻む度に雪崩れる。鉛直方向にステップを刻むと腐れ雪の層でスタンスはできないので、鉛直からやや斜面の面直方向にアイゼンを傾けてステップを刻む。急斜面がもう少しで終わるところでスリップ、腐れ雪のため、1m位の滑落で済んだ。
 そして永松岳。三角点は完全に露出し、その分、南側、及び東南尾根に吹き溜まっている感がある。稜線は三角点から北東に下り、弧を描いて南東に伸びているので、北側斜面が確認できない。北に伸びる稜線は露出していて、それに続く東斜面の雪壁が少しだけ見える。それはP1819の斜面より急に見え、その先の状況が全く確認できないことから、逡巡した揚句、撤退を決める。
 同じところでの二度の敗退は情けないが、知見も得た。次は逆コース(あるいは夏の藪漕ぎ)を検討してみたい。巻機本峰、P1819、永松岳とも、ピークからの下り初めで難儀した。残雪の状況は南東方向に雪庇もしくは吹き溜まりになっているので、逆コースにすることで、コースの状況を確認できるようになることが一番大きいと思われる。また、急な雪壁も、登りの方が安全である。そして、下りは藪であるが、順目(融雪、間もない頃であれば)であり、問題ないと思われる。
 話を戻す。撤退を決め、永松岳を下る。天候が悪いせいか、鞍部からP1819への雪上の逆トレースが明確に残っているので、ルートファインディング(以下、RF)をしなくて済み、助かる。往路はやっと下ったP1819の壁も、復路の上りは難なく通過。
 P1819の下りで雨がポツポツ降り出した。濡れると厄介なので、天場を探す。コルから少し上った笹の上にテントを張る。
 雨も結構降ったが、笹の上にテントを張ったのが正解で、嵩上げされていて、底はOK。ところが、夜--といっても、時計を見るとまだ9時--、暑くてシュラフから手を出すと、シュラフの上がビッショリ!すわ、浸水かと飛び起きると、床は濡れていない。ベンチレーターからの吹き込みであった。風向きが変わり、東の風で吹き込んだようだ。
 夜中、テントに吹きつける音で、目が覚める。どうやら、雨から雪になったようだ。早く寝たので、なかなか寝付けない。色々考える。雪でクレバスが見えなくなる。雨も相当降ったので、雪が重くなり、雪崩の心配もある。食料は充分あるので、今日は沈殿(行動しないこと)とするか。---うとうとするが、テントの重みで目覚める。雪の重みでテントが垂れ下がったようだ。中から押し返す。これを2、3度繰り返し、朝を迎えた。雪の付着はテントの東側から北側に変わっていった。
 三日目、4時目覚め。雪は止んでいる。風向は北の風となり、どうやら、低気圧は通り過ぎたようだ。天候は回復方向と判断。とりあえず、食事を済ませる。積雪は--ここはそもそも積らないところであるが、--大したことなかったが、ホワイトアウト。一瞬であるが南の沢が見え、稜線上も20m位先のブッシュが確認できたので、8時30分出発する。
 相変わらず、見通しは利かないが、巻機本峰の雪の壁の上りまでは、夏の見通しのきかない藪漕ぎと大差ない。ところが下トンボの頭の下りで問題が発生する。私のナヴィゲーションスタイルはクラシカルな磁針式コンパスと25,000分の1の地形図である。スマホの地図アプリは、もっぱらGPSロガーとして使用している。下トンボの頭はピークから、やや右に方向を変え、西北西に下り始めるが、コンパスのその方向は北を指している。すぐにカメラのGPS機能が影響することを思い出し、GPS機能をOFFにした。見通しが利けば、なんともない下りであるが、頼りのコンパス、念のための確認で、30分を要した。
 さあ、巻機本峰の雪の壁の上りにさしかかったが、何も見えない。これまでは、数メートル先のブッシュが確認できたが、眼、全開にして目を凝らしても、完全なホワイトアウト!一瞬の視界も得られない。真西は最大傾斜で、たまらず、北北西にトラバ-ス気味に高度を上げる。笹藪が見えた。抜けた!牛ヶ岳の稜線のはずだ。一瞬、霧が晴れ、そこは牛ヶ岳のピークのすぐ南であることが分かった。霧が晴れるのを待つべきであったが、第一の難所を突破。
 ここからは道がある。昨夜の新雪が積もっているが、道は見える。道はありがたい。見通しが利かなくても進むことができる。巻機本峰辺りから、霧が晴れる頻度が多くなり、ニセ巻機を見下ろすことができた。心配していた下降開始点も判り、方向を定めて下り始める。織姫ノ池の少し上あたりで、霧が晴れる。生還!
 桜坂駐車場は除雪は済んでいたが、駐車している車はなかった。桜も天候の所為か、まだ満開には至らず、青空も望めず、ベストショットは撮れなかった。清水までの道すがら、フキノトウ(蕗の薹)が沢山採れたので、蕗味噌で一杯やるために、越後の地酒を仕入れて帰宅の途に就いた。

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装備・携行品

シャツ アンダーウェア ダウン・化繊綿ウェア ロングパンツ 靴下 レインウェア
登山靴 バックパック サブザック スタッフバック スパッツ・ゲイター 水筒・テルモス
ヘッドランプ タオル 帽子 グローブ サングラス
着替え 地図 コンパス ノート・筆記用具 腕時計 カメラ
登山計画書(控え) ナイフ 健康保険証 医療品 ロールペーパー 非常食
行動食 GPS機器 テント シュラフ テントマット スリーピングマット
ストーブ 燃料 ライター カップ クッカー カトラリー
バラクラバ アイゼン ショベル
【その他】 スキーストック

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登った山

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