野口啓代さん、市毛良枝さんも感動。映画『人生クライマー』完成披露上映会

クライマー、山野井泰史さんに密着したドキュメンタリー映画『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』の完成披露上映会が11月9日、東京都内で行われた。プロフリークライマーの野口啓代さん、俳優の市毛良枝さんが武石浩明監督とともに登壇し、作品の印象を語った。

2021年にピオレドール生涯功労賞を受賞した山野井さんには、理想とする山があった。ヒマラヤの8000ｍ峰14座のひとつ、マカルーの西壁だ。8000ｍという標高にそそり立つマカルー西壁の厳しさ、美しさに魅了された山野井さんは、クライマーとしての実力を磨き、1996年についに憧れの岩壁に挑戦。カメラは当時から山野井さんの姿を追い続ける。マカルー西壁は成らなかったが、その後も理想のクライミングを求め続ける山野井さんに密着。監督自らカメラを回し、クライマーとしての生き方を貫く姿に迫ったドキュメンタリーは最初TBSの番組として放送され、好評を受けて映画版の制作がスタート。東京、大阪、名古屋などで開催された「TBSドキュメンタリー映画祭2022」で上映されたのち、全国公開に向けて完全版として9分の新規カットを追加している。

完成披露に登壇した市毛さんは山野井さんと長年にわたる親交があるといい、「登山家ってすごく特別な人と思われてるんですけど、普通の、とてもチャーミングな人なんです。それがよく出ていた」と、取材の密着ぶりに感服した様子。ソロという山野井さんのスタイルについて「死ぬかもしれない恐怖があるから山は楽しいというのは、たとえ500ｍの山でも感じることはあるし、自分しか自分を助けられないので、すごく怖い。でもやっぱり行きたいから行ってしまう。レベルは違うが、気持ちはわかる」と語った。

共通の友人は多いが、山野井さんに会ったことがないという野口さんは「私は最初からスポーツクライミング、競技に入ってしまったので、アルパインは一回もやったことがない。違う世界の人なのかなと思ったが、登りたい気持ちや目標に向かって作戦を立ててトレーニングをして挑む、という気持ちは共感できた」としつつ、「スポーツクライミングは危険と隣り合わせではないスポーツなので、山野井さんのような、これ以上攻めたらヤバイかもしれないとか、引き返そうとか、そういう駆け引きはしたことがないので本当に新鮮でした」と、アルパインクライミングの厳しい世界に触れた感想を口にした。「山を登るために生まれてきた方。山野井さんを見習ってクライミングに真剣に打ち込みたいと思った」と、決意を新たにしていた。

武石監督は「世界のクライミングはこの20，30年でよりシンプルな形で難しいルート、というように変わってきたが、アジア人として山野井さんがただ一人、そういう世界にソロで突っ込んでいって成果を残した。私としては彼をどうしても紹介したかった」と作品への思いについて語った。

全国版でナレーションを担当する俳優の岡田准一さんは「山野井さんは混じり気のない眩しい存在で、その純度の高い生き方には美しさを感じます。日本が誇る、知ってもらいたい日本人の一人です」というコメントを寄せている。

本作は11月25日（金）から、角川シネマ有楽町ほか全国劇場で上映される。

作品概要

監督：武石浩明
撮影：沓澤安明 小嶌基史 土肥治朗
編集：金野雅也
MA：深澤慎也 選曲：津崎栄作
企画・エグゼクティブプロデューサー：大久保竜
チーフプロデューサー：松原由昌
プロデューサー：津村有紀
TBS DOCS事務局：富岡裕一
2022年／日本／5.1ch／16：9／上映時間：109分
製作：TBSテレビ
配給：KADOKAWA (C)TBSテレビ

世界の巨壁に単独で挑み続けてきたクライマー・山野井泰史。彼は2021年、登山界最高の栄誉、ピオレドール生涯功労賞を受賞した。しかし、山野井の挑戦は終わらない。伊豆半島にある未踏の岩壁に新たなルートを引こうとしていた。そして再びヒマラヤにも…。“垂直の世界”に魅せられた男の激しい生き様とは？貴重な未公開ソロ登攀映像とともに振り返り、山野井の生涯のパートナーである妻・妙子への取材も通して問いかける。

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