初冬の高尾山を独り占め。のんびり低山ハイクを楽しむ
読者レポーターより登山レポをお届けします。寺尾雄二さんは、人が少ない初冬の高尾山(たかおさん、599m)へ。思い立ったらすぐ登れて、コースも多彩な高尾山で、静寂の中のんびりとした登山を楽しみました。
文・写真=寺尾雄二
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13時ごろ、落ち着いた雰囲気の高尾山口駅からスタート
紅葉も終わり、静けさを取り戻した高尾山を訪れたくなり、月曜日の10時過ぎ、埼玉の自宅を出発しました。JR線と京王線を乗り継ぎ、高尾山口駅に到着したのは13時ごろ。休日は観光客やハイカーで混雑する駅前の参道も、人は少なく、落ち着いた雰囲気です。
天気予報では「冬晴れで北風が強く気温も低め」とのことでしたが、午後の柔らかな日差しのもとでは、暖かさも感じました。駅の改札を出て、土産物屋の前を通り、いったん「TAKAO 599 MUSEUM」に立ち寄ります。
ここは10年前に開設された施設ですが、建物の外部、内部ともに、いまだに新しさが感じられ、高尾山に関係する自然や生息する動植物に関する知識、また登山に関する情報が得られます。館内には喫茶店も併設しており、登山や散策後の休憩スポットとしても最適な場所です。
少しの間、施設内を見学した後、登山口へと向かいます。当日の朝、思いつきで自宅を出発したので、どのコースから登るのかは決めておらず、歩きながらの気分で決めようと思っていました。ただし高尾山とはいえ、午後からの入山なので、念のためのヘッドランプはしっかりと携行しています。
両脇に土産物屋の並ぶ参道を歩きながら「1号路の舗装道では少し物足りないかな」「6号路は沢沿いなので寒いかな」などと考えながら、ケーブルカーの清滝駅前まで来た時点で、日当たりのよさそうな、稲荷山(いなりやま)コースに決めました。この気楽さも高尾山のよさではないでしょうか。
午前中に訪れる観光客が多かったのか、下り便増発のため、ケーブルカーは臨時運転をしていました。登山コースを決めたところで、清滝駅前を過ぎ、稲荷山コースへ進みます。
自分のペースがゆっくりだったので、ほぼ同時に入山したハイカーの姿はすぐに見えなくなってしまいました。少し歩くと旭稲荷神社があります。登山道脇の小さな神社ですが、二対のお稲荷様には冬の装いがされていました。
人かげも少ない山頂で、富士山の眺望を楽しむ
少し進み尾根上の道になると、日差しはあるのですが、北寄りの風が抜けるようになり、肌寒さも感じます。汗をかくと、休憩の際余計に冷えるので、スローペースでのんびりと進みます。登山道の左側からは国道20号を行きかう車の音がにぎやかです。紅葉時も過ぎた冬枯れの平日ですが、稲荷山コースでも、頻繁に下山するハイカーとすれ違います。登り始めて30分ほどで稲荷山の展望台に着きました。ここからは眼下に八王子の街並み、その先には都心のビル群、また遠くには私が毎週通う筑波山(つくばさん)の姿も望めます。
展望台に設置されたベンチで小休止したあと、山頂に向かい出発します。国道からの車の騒音もいつの間にか聞こえなくなり、登山道に静寂さも感じられます。相変わらず、午後の柔らかい日差しに照らされ、風のない場所では暖かさも感じられます。車の騒音がなくなると、鳥のさえずりもよく聞こえます。これも初冬の低山ハイクの醍醐味だと感じます。登山道は6号路への分岐を過ぎ、山頂も近くなります。山頂の南側にあるルートでは風もなく、西からの日差しが一層暖かく感じられます。
山頂直下、5号路が交差する場所では、左方向のもみじ台方面に進みます。この5号路は高尾山頂下をぐるりと一周する道になります。5号路をわずかに進むと、奥高尾縦走路に合流します。ここからわずかな登りでもみじ台へ到着。紅葉時は平日休日問わず、ハイカーが集う場所ですが、今日は誰もいなくて、静寂そのものです。もみじ台からは、西側に富士山が大きく望めます。ここにもベンチがあり、静かな雰囲気の中で小休止。こうしたのんびりさも低山ハイクのよいところ。本当に気分が落ち着きます。
もみじ台で一休みし、高尾山頂へ向かいます。いったん5号路の交差地点に戻り、石階段をわずかに登ると高尾山頂に到着。山頂直下のベンチでは、猫が冬の日差しを浴びて気持ちよさそうに昼寝をしていました。混雑する高尾山ではまず見られることのない、ベンチを占領する猫の姿にのどかさを感じます。
山頂ではケーブルカーで上がってきた観光客も見かけましたが、紅葉時のピークも過ぎた初冬の午後では、人の数は格段に少なめです。高尾山では紅葉の後、冬の自然のイベントであるダイヤモンド富士が望める期間が10日間ほどありますが、本日はまだ3日前というタイミングです。高尾山頂からも富士山がはっきりと望めます。こうした澄んだ景色を望めるのも冬の時期ならではです。
静かなコースを下山し、福徳弁財天、琵琶滝に立ち寄る
山頂のビジターセンターは月曜日なので定休日です。時間は15時ですが、山頂にある茶店もすべて閉まっていました。山頂からの下山ルートも特に決めていませんでした。せっかくなので、なるべく静かなコースで下山したいと思い、選んだのが車道コース。山頂から少し下り、いったん5号路へ、そこからわずかに進み6号路との分岐点から車道を薬王院に向かって進みます。車道ですが通行する車とは出会わず、もちろんハイカーも見かけません。木々がうっそうと茂った車道は、ハイカーや観光客の往来する1号路とは比較にならないほど静寂な雰囲気です。途中、名残の紅葉もありました。
車道を歩くこと20分ほどで、薬王院のほぼ直下、福徳弁財天に着きます。階段を少し登った先にあるのは10mほどの洞窟(弁天窟)です。明かりで照らされたうす暗い洞窟の先に弁財天が祭られています。洞窟はそこから先は行けないようになっていますが、言い伝えによると神奈川県の江の島までつながっているとか。実は、この弁財天を訪ねたのは初めて。私が進む方向とは逆に1号路を登ってくると、参道の脇の細い道に入る必要があるため、ほとんどのハイカー、観光客は見逃してしまう場所にあります。
弁天窟を後に、しばらく参道(1号路)を下ります。時間的にはまだ明るいうちに下山可能だったので、途中から琵琶滝に向かうコースに進みます。ここ数年で高尾山をめぐる各コースには木道や木段が整備され非常に歩きやすくなっていますが、琵琶滝に向かうコースには木段などはあまりなく、木の根や岩の急坂が続くので、躓きや転倒の注意が必要かもしれません。沢の流れが聞こえてくると、ほどなく琵琶滝に到着です。谷筋で日差しも届かない場所なので、吐く息も白くなる寒さです。
ここからは6号路を下山します。沢沿いの湿った道なので、スリップに注意しながら歩きます。夕方の沢沿いの道は、特にひんやりとします。ほどなく高尾山病院の大きな建物が見えると登山道も終了。ここからは左手にケーブルカーの線路を見上げながらの道になります。秋の最盛期は紅葉のトンネルになる場所ですが、木々はすっかり葉を落とし、すでに冬の雰囲気です。
下山後の温泉とおいしいお酒は低山ハイクの楽しみ
ケーブルカー清滝駅前を過ぎると、まだ駅前の土産物屋やそば屋さんは開いていました。時刻は16時すぎ、冷えた身体を温めに、駅前の温泉、極楽湯に向かいます。
受付を済ませ、低山ハイク最後の楽しみは温かい温泉とお酒と食事。施設の中には内風呂、露天と複数のお風呂があり、露天は温度帯が異なる風呂があります。汗を流し、熱めの露天風呂でのんびり。最高の気分です。体が充分温まった後は、施設内の食堂でお酒と食事タイムを満喫。日本酒のおつまみとしてのマイタケのてんぷら、私の大好物のサーモン・イクラの海鮮重と高尾山名物のとろろそばがセットになった「季節のメニュー」を注文しました。実はこのメニューですが、昨年もダイヤモンド富士の観賞の後に食べた、私にとっては最高の組み合わせです。
温まった体に、おいしいお酒と、おいしい食事。まさに至福のひと時です。これこそ電車を利用する低山ハイクのよさでしょうか。車でのアプローチと異なり、電車での山行は、こうした制約がないのがうれしいです。食堂内には高尾山口駅発の電車時刻も表示されているため、帰りの電車も予定でき、非常に便利です。高尾山はその日の思いつきで登ることができ、歩くコースも多岐にわたり、下山後は駅前の温泉で汗を流せて、下山メシも楽しめる、最高の山だと思います。
(山行日程=2025年12月15日)
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この記事に登場する山
プロフィール
寺尾雄二(読者レポーター)
埼玉県三郷市在住。定年退職後の現在、週1回のペースで筑波山に登っています。その他、春は残雪の北アルプス、秋は日本山岳耐久レース、元日の雲取山が年間のルーティンです。体力を維持しこれからも山を楽しみたいと思います。
山と溪谷オンライン読者レポーター
全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。
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