初冬の高尾山を独り占め。のんびり低山ハイクを楽しむ

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読者レポーターより登山レポをお届けします。寺尾雄二さんは、人が少ない初冬の高尾山(たかおさん、599m)へ。思い立ったらすぐ登れて、コースも多彩な高尾山で、静寂の中のんびりとした登山を楽しみました。

文・写真=寺尾雄二

目次

MAP&DATA

高低図
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最適日数:日帰り
コースタイム: 3時間14分
行程:高尾山口駅・・・清滝駅・・・稲荷山・・・高尾山・・・薬王院・・・琵琶滝・・・清滝駅・・・高尾山口駅
総歩行距離:約8,100m
累積標高差:上り 約803m 下り 約803m
コース定数:17

13時ごろ、落ち着いた雰囲気の高尾山口駅からスタート

紅葉も終わり、静けさを取り戻した高尾山を訪れたくなり、月曜日の10時過ぎ、埼玉の自宅を出発しました。JR線と京王線を乗り継ぎ、高尾山口駅に到着したのは13時ごろ。休日は観光客やハイカーで混雑する駅前の参道も、人は少なく、落ち着いた雰囲気です。

高尾山口駅前
高尾山口駅前
参道の土産物屋さん
参道の土産物屋さん

天気予報では「冬晴れで北風が強く気温も低め」とのことでしたが、午後の柔らかな日差しのもとでは、暖かさも感じました。駅の改札を出て、土産物屋の前を通り、いったん「TAKAO 599 MUSEUM」に立ち寄ります。

ここは10年前に開設された施設ですが、建物の外部、内部ともに、いまだに新しさが感じられ、高尾山に関係する自然や生息する動植物に関する知識、また登山に関する情報が得られます。館内には喫茶店も併設しており、登山や散策後の休憩スポットとしても最適な場所です。

599外観
599外観
599館内の様子
館内の様子

少しの間、施設内を見学した後、登山口へと向かいます。当日の朝、思いつきで自宅を出発したので、どのコースから登るのかは決めておらず、歩きながらの気分で決めようと思っていました。ただし高尾山とはいえ、午後からの入山なので、念のためのヘッドランプはしっかりと携行しています。

両脇に土産物屋の並ぶ参道を歩きながら「1号路の舗装道では少し物足りないかな」「6号路は沢沿いなので寒いかな」などと考えながら、ケーブルカーの清滝駅前まで来た時点で、日当たりのよさそうな、稲荷山(いなりやま)コースに決めました。この気楽さも高尾山のよさではないでしょうか。

午前中に訪れる観光客が多かったのか、下り便増発のため、ケーブルカーは臨時運転をしていました。登山コースを決めたところで、清滝駅前を過ぎ、稲荷山コースへ進みます。

清滝駅前
清滝駅前
稲荷山コース入口
稲荷山コース入口

自分のペースがゆっくりだったので、ほぼ同時に入山したハイカーの姿はすぐに見えなくなってしまいました。少し歩くと旭稲荷神社があります。登山道脇の小さな神社ですが、二対のお稲荷様には冬の装いがされていました。

旭稲荷神社
旭稲荷神社

人かげも少ない山頂で、富士山の眺望を楽しむ

少し進み尾根上の道になると、日差しはあるのですが、北寄りの風が抜けるようになり、肌寒さも感じます。汗をかくと、休憩の際余計に冷えるので、スローペースでのんびりと進みます。登山道の左側からは国道20号を行きかう車の音がにぎやかです。紅葉時も過ぎた冬枯れの平日ですが、稲荷山コースでも、頻繁に下山するハイカーとすれ違います。登り始めて30分ほどで稲荷山の展望台に着きました。ここからは眼下に八王子の街並み、その先には都心のビル群、また遠くには私が毎週通う筑波山(つくばさん)の姿も望めます。

荷山展望台
稲荷山展望台。遠くに筑波山も

展望台に設置されたベンチで小休止したあと、山頂に向かい出発します。国道からの車の騒音もいつの間にか聞こえなくなり、登山道に静寂さも感じられます。相変わらず、午後の柔らかい日差しに照らされ、風のない場所では暖かさも感じられます。車の騒音がなくなると、鳥のさえずりもよく聞こえます。これも初冬の低山ハイクの醍醐味だと感じます。登山道は6号路への分岐を過ぎ、山頂も近くなります。山頂の南側にあるルートでは風もなく、西からの日差しが一層暖かく感じられます。

6号路への分岐点
6号路への分岐点
山頂直下
日差しが暖かい山頂直下

山頂直下、5号路が交差する場所では、左方向のもみじ台方面に進みます。この5号路は高尾山頂下をぐるりと一周する道になります。5号路をわずかに進むと、奥高尾縦走路に合流します。ここからわずかな登りでもみじ台へ到着。紅葉時は平日休日問わず、ハイカーが集う場所ですが、今日は誰もいなくて、静寂そのものです。もみじ台からは、西側に富士山が大きく望めます。ここにもベンチがあり、静かな雰囲気の中で小休止。こうしたのんびりさも低山ハイクのよいところ。本当に気分が落ち着きます。

もみじ台からの展望
もみじ台からの展望

もみじ台で一休みし、高尾山頂へ向かいます。いったん5号路の交差地点に戻り、石階段をわずかに登ると高尾山頂に到着。山頂直下のベンチでは、猫が冬の日差しを浴びて気持ちよさそうに昼寝をしていました。混雑する高尾山ではまず見られることのない、ベンチを占領する猫の姿にのどかさを感じます。

昼寝中の猫
気持ちよさそうに昼寝中

山頂ではケーブルカーで上がってきた観光客も見かけましたが、紅葉時のピークも過ぎた初冬の午後では、人の数は格段に少なめです。高尾山では紅葉の後、冬の自然のイベントであるダイヤモンド富士が望める期間が10日間ほどありますが、本日はまだ3日前というタイミングです。高尾山頂からも富士山がはっきりと望めます。こうした澄んだ景色を望めるのも冬の時期ならではです。

高尾山頂
静かな高尾山頂
山頂からの富士山遠望
山頂からの富士山遠望

静かなコースを下山し、福徳弁財天、琵琶滝に立ち寄る

山頂のビジターセンターは月曜日なので定休日です。時間は15時ですが、山頂にある茶店もすべて閉まっていました。山頂からの下山ルートも特に決めていませんでした。せっかくなので、なるべく静かなコースで下山したいと思い、選んだのが車道コース。山頂から少し下り、いったん5号路へ、そこからわずかに進み6号路との分岐点から車道を薬王院に向かって進みます。車道ですが通行する車とは出会わず、もちろんハイカーも見かけません。木々がうっそうと茂った車道は、ハイカーや観光客の往来する1号路とは比較にならないほど静寂な雰囲気です。途中、名残の紅葉もありました。

薬王院への車道
薬王院への車道
名残の紅葉
名残の紅葉

車道を歩くこと20分ほどで、薬王院のほぼ直下、福徳弁財天に着きます。階段を少し登った先にあるのは10mほどの洞窟(弁天窟)です。明かりで照らされたうす暗い洞窟の先に弁財天が祭られています。洞窟はそこから先は行けないようになっていますが、言い伝えによると神奈川県の江の島までつながっているとか。実は、この弁財天を訪ねたのは初めて。私が進む方向とは逆に1号路を登ってくると、参道の脇の細い道に入る必要があるため、ほとんどのハイカー、観光客は見逃してしまう場所にあります。

福徳弁財天
福徳弁財天
弁天窟内部
弁天窟内部

弁天窟を後に、しばらく参道(1号路)を下ります。時間的にはまだ明るいうちに下山可能だったので、途中から琵琶滝に向かうコースに進みます。ここ数年で高尾山をめぐる各コースには木道や木段が整備され非常に歩きやすくなっていますが、琵琶滝に向かうコースには木段などはあまりなく、木の根や岩の急坂が続くので、躓きや転倒の注意が必要かもしれません。沢の流れが聞こえてくると、ほどなく琵琶滝に到着です。谷筋で日差しも届かない場所なので、吐く息も白くなる寒さです。

1号路(下山途中)
1号路(下山途中)
琵琶滝への分岐
琵琶滝への分岐
琵琶滝前
琵琶滝前

ここからは6号路を下山します。沢沿いの湿った道なので、スリップに注意しながら歩きます。夕方の沢沿いの道は、特にひんやりとします。ほどなく高尾山病院の大きな建物が見えると登山道も終了。ここからは左手にケーブルカーの線路を見上げながらの道になります。秋の最盛期は紅葉のトンネルになる場所ですが、木々はすっかり葉を落とし、すでに冬の雰囲気です。

ケーブルカーと落葉した木々
ケーブルカーと落葉した木々

下山後の温泉とおいしいお酒は低山ハイクの楽しみ

ケーブルカー清滝駅前を過ぎると、まだ駅前の土産物屋やそば屋さんは開いていました。時刻は16時すぎ、冷えた身体を温めに、駅前の温泉、極楽湯に向かいます。

受付を済ませ、低山ハイク最後の楽しみは温かい温泉とお酒と食事。施設の中には内風呂、露天と複数のお風呂があり、露天は温度帯が異なる風呂があります。汗を流し、熱めの露天風呂でのんびり。最高の気分です。体が充分温まった後は、施設内の食堂でお酒と食事タイムを満喫。日本酒のおつまみとしてのマイタケのてんぷら、私の大好物のサーモン・イクラの海鮮重と高尾山名物のとろろそばがセットになった「季節のメニュー」を注文しました。実はこのメニューですが、昨年もダイヤモンド富士の観賞の後に食べた、私にとっては最高の組み合わせです。

高尾山温泉
高尾山温泉
「季節のメニュー」
温泉の後の楽しみ
館内掲示の時刻表
館内掲示の時刻表

温まった体に、おいしいお酒と、おいしい食事。まさに至福のひと時です。これこそ電車を利用する低山ハイクのよさでしょうか。車でのアプローチと異なり、電車での山行は、こうした制約がないのがうれしいです。食堂内には高尾山口駅発の電車時刻も表示されているため、帰りの電車も予定でき、非常に便利です。高尾山はその日の思いつきで登ることができ、歩くコースも多岐にわたり、下山後は駅前の温泉で汗を流せて、下山メシも楽しめる、最高の山だと思います。

(山行日程=2025年12月15日)

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この記事に登場する山

東京都 / 奥多摩

高尾山 標高 599m

 関東の三霊山の1つ、薬王院有喜寺がある。天平16年(744)奈良期の高僧行基が開山したと伝えられている。高尾山頂は有喜寺からさらに登った所にある。山頂の三角点のかたわらに十三州見晴台の標識がある。  山麓には高尾自然科学博物館があり、山中の動植物の標本の展示がある。また山頂に向かうケーブルカーとリフトがあるが、低い山なので歩いて登りたい。1号から6号の自然歩道があり、山の自然を観察することができる。山頂から冬の晴れた日には相模湾に浮かぶ江ノ島まで見渡すことができる。  山頂から西に山稜をたどり、一丁平、城山、小仏峠を経て景信山、陣馬山へと足を延ばす登山者が多い。高尾山一帯は有喜寺の境内だが、開発で一部の自然が破壊されつつある。  高尾山口駅から薬王院有喜寺―高尾山―城山―小仏峠を経由して高尾駅まで約4時間。

プロフィール

寺尾雄二(読者レポーター)

埼玉県三郷市在住。定年退職後の現在、週1回のペースで筑波山に登っています。その他、春は残雪の北アルプス、秋は日本山岳耐久レース、元日の雲取山が年間のルーティンです。体力を維持しこれからも山を楽しみたいと思います。

山と溪谷オンライン読者レポーター

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