都心から近い観光地として人気の湘南エリア。一般的には湘南といえば海の印象が強いが、じつはハイキングを楽しむ人に人気のエリアでもある。なかでも今回紹介する鎌倉〜逗子・葉山〜横須賀〜三浦にあるコースは、初心者やファミリーでも気軽に歩ける整備された低山がほとんど。それに加えて、手つかずの原生林が残るコースや上級者向けのロングコースもあり、街のすぐそばにある自然をバリエーション豊富に楽しむことができる。

さて湘南エリアの山歩きの楽しみ方といえば、ハイク前後に楽しむ街や海の散策に注目したい。コース近辺に点在する名所旧跡を訪れたり、山道から見下ろした海岸を実際に歩いたり、おしゃれなカフェやレストランで湘南グルメに舌鼓を打ったり。

せっかくなら山だけでなくいろいろ楽しみたいという欲ばりハイカーも大満足の湘南エリア、鎌倉〜葉山〜三浦の山。四季を問わずに歩けるので、ぜひ次の休みにでも気軽に足を運んでみよう。
三方を山に囲まれ、南に相模湾を有する鎌倉。この鎌倉アルプスはその北東にある山で、天園ハイキングコースとも呼ばれ、鎌倉最高峰標高159mの大平山を行くコースになる。

JR北鎌倉駅をスタートし、鎌倉五山第一位の名刹・建長寺へ。境内の奥にある半僧坊(建長寺の拝観料が必要)、さらに勝上献展望台へと進む。いずれも相模湾や富士山も望める展望スポットなので、ぜひ眺望を楽みたい。さらに仏像が彫られた十王岩を過ぎると、やがて太平山山頂に到着する。直下の芝生広場や少し先にある茶屋のある天園が休憩スポットになる。下りは道標に従って、獅子舞、亀ヶ淵、鎌倉宮方面へ。他には瑞泉寺方向や横浜、金沢八景方向に足を伸ばすこともできる。

コースタイムは約2時間45分。とくにおすすめの季節は秋で、紅葉の名所として多くの人が訪れる。登山口の建長寺をはじめ、鶴ヶ岡八幡宮の裏手を歩くコースなので、帰りにはぜひ参拝していこう。
高低図
標高わずか93mの源氏山。山頂一帯は源頼朝像が設置された源氏山公園として整備され、春には桜、秋には紅葉など一年を通して多くの人が憩う場所になっている。源氏山を通るルートは2つあり、北鎌倉〜源氏山を結ぶ葛原岡コース、源氏山〜鎌倉大仏を結ぶ大仏コース。北鎌倉を起点に大仏を目指す観光客向けのハイキングコースになっていたり、地元の子どもたちにとっては遠足で訪れる馴染み深いコース、また毎日の通勤通学路として歩く人もいるという。

葛原岡コースの入口は北鎌倉にある鎌倉五山第四位の浄智寺の裏。そこから縁結びの神様として知られる葛原岡神社へ。階段が整備されていたりと歩きやすい道が続く。神社からは15分ほどで源氏山に到着だ。ここから下りは大仏コースに入り、起伏の多い長い難所が続き、やがて大仏トンネルの脇に出る。道沿いに直進すれば、すぐに大仏に到着する。
所要時間は約2時間。大仏を拝んだ後は土産物屋を散策しながら江ノ電長谷駅へ。さらに少し足を伸ばせば、しらす漁などで知られる坂ノ下海岸へ出ることができる。
高低図
低山の多い湘南エリアでしっかり山歩きを楽しみたいなら、この三浦アルプスがおすすめだ。標高202mの乳頭山と89mの仙元山を縦走するコースで、標高は低いがアップダウンが多く、累計標高差は700mと登りがいは十分。歩行時間は約5時間だ。
スタートは横須賀市にあるJR田浦駅。そこから早春には2000本以上の梅の木が花を咲かせる田浦梅の里へ歩き、横浜横須賀道路の跨道橋を渡り、いよいよ山道へ。田浦港や房総半島まで望む乳頭山山頂を過ぎたら、葉山にある二子山を右手に見ながら戸根山山頂、そして仙元山へ到着する。仙元山山頂からは葉山の森戸海岸を見下ろし、視線の先には江ノ島と富士山の勇姿も楽しめる。下山後は、海を見ながら森戸神社やおしゃれなカフェ散策を楽しみたい。

このコースはとくに前半で分岐が多く、道標はあるが迷いやすいことでも知られる。また夏場はヤブやクモの巣で歩きにくくなるので注意したい。
高低図
大岩の間をすり抜け、親不知と呼ばれる鎖場をよじ登り、到着するのはむき出しの岩場が切り立つ山頂広場。アスレチック感覚を楽しめる鷹取山は湘南妙義とも呼ばれ、クライミングスポットにもなっている開放的な山頂が絶好のお弁当スポット。ファミリーをはじめグループで訪れるハイカーの多い、どこかアットホームな雰囲気の山だ。そしてさらに鷹取山の魅力を楽しむのにおすすめのコースが、ここで紹介する神武寺裏参道を通るルートになる。

スタートはJR東逗子駅。ここから神武寺表参道に進み、境内を抜け、山道へ。途中の大岩で富士山を眺めたり、いくつかの岩場を抜けると標高139mの山頂に到着する。時間があれば、80mの石壁に彌勒菩薩像が彫られた磨崖仏まで足を延ばそう。下山は神武寺まで戻り、分岐を京急神武寺駅方向へ。すぐに乾いた岩場の景色が一変し、シダとコケに覆われた鬱蒼とした湿った森に。夏場は沢の水を楽しみながら裏参道を進むと、神武寺駅側の登山口に到着する。

コースタイムは約3時間で、往路と復路はともにかながわ景勝50選。
高低図
横須賀市にある標高242m、関東100名山の第100番目に数えられる大楠山。山頂からの360度の見事なパノラマ眺望は、司馬遼太郎『街道をゆく』でも紹介されているほど。さらに、春は梅や菜の花、桜、秋はコスモスと、季節ごとの花を楽しめるのもこの山の魅力で、通年多くのハイカーが訪れている。

大楠山を歩くコースは全部で5つあるが、いちばん軽快に登れるのがこの大楠芦名コース。野鳥のスポットとしても知られるため池・芦名堰の右手にある登山口からスタートし、1時間半ほどで展望塔のある山頂広場に到着。景色とお弁当をのんびり楽しんだら、下山は大楠山の沢の水や湧き水が集まって流れる清流・前田川の遊歩道を進む。アユやスジエビ、カワセミなど多くの生物が生息し、夏にはひんやり涼しい水遊びを楽しむことができる。

歩行時間は約3時間。アフターハイクは山と海の自然を楽しめる人気の秋谷・佐島エリアに立ち寄るのがおすすめ。
高低図
歩行タイム約3時間、3つの山をつなぐ道は全長8km。鎌倉や葉山とは趣を違える三浦らしいのどかな海岸線を間近に、変化のある山道や海や富士山を望む景色が楽しいコースだ。なかでも三浦富士の山頂からは三浦半島の形を眼下に一望でき、その先に続く大海原とのコントラストにもしばし目を奪われる。

スタートは京急長沢駅。標識に従って進むと登山口に到着し、三浦富士の登山道の特徴でもあるマテバシイ林に入る。山頂までは高低差のある道やロープ場などもあり、標高183mの低山ながら登りごたえがある。山頂は狭いが、浅間神社奥宮の碑などが祀られている。その後は整備された道を昭和初期に海軍が砲台を設置した跡の残る砲台山へ。

残る1つはツツジの名所としても知られる武山不動のある標高200mの武山で、開花の時期には展望台からピンク色のツツジ畑を眼下に楽しめる。下山は三浦野菜の畑や果樹園の続く農道を京急津久井浜駅へ進む。
下山後は観光農園で旬のフルーツ狩りを楽しんだり、地元の食材の市場を訪れたり、温泉で汗を流したり。思い思いのアクティビティを楽しんで三浦ハイクをしめくくろう。
高低図