早めの行動、早めの判断で安全確保し、安全登山の徹底を 島崎三歩の「山岳通信」 第325号

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年12月27日に配信された第325号では、期間中に起きた2件の遭難事例について紹介するとともに、早めの行動と判断の大切さを説明している。

 

12月27日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第325号では、期間中に起きた2件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 12月14日、八ヶ岳連峰の赤岳で、2人パーティで入山した44歳の女性が、赤岳に入山してテント場の地面が凍結していたことにより足を滑らせて転倒、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 12月24日、南木曽岳で、5人パーティで入山した47歳の女性が、南木曽岳から下山中に階段を踏み外して転倒、負傷する山岳遭難が発生した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス 

12月3週は、八ヶ岳連峰赤岳における転倒による遭難が1件発生しました。
遭難者は、テント場の地面が凍結していたことにより足を滑らせて転倒し、負傷したものです。
寒暖差により、日中溶けた場所が朝晩の冷え込みで凍結している場合があります。場所によっては降雪や落葉で凍結箇所が隠れているところもありますので、歩行する際は慎重な行動が必要です。
行動中、アイゼンを装着するべきか悩む場所もあると思いますが、スリップ防止のために早い段階で装着することも滑落や転倒防止になります。

12月4週は、南木曽岳において転倒による遭難が1件発生しました。

遭難者は、5人パーティで下山中に登山道上の階段を踏み外して転倒、負傷したものです。発生時間が日没間際であったため、深夜に及ぶ救助活動となり、非常にリスクが高い活動となりました。
トラブルの発生に備え、早めの行動を心掛けてください。登山中に気持ちが焦ると余裕がなくなり、注意散漫となりやすく、転倒や滑落などのリスクが高まります。気持ちに余裕をもつためにも、「早出早着」を心掛け、時間にゆとりをもった早めの行動をお願いします。

寒波の影響で積雪が増えている山域があります。12月半ばには、気温が高く雨が降った影響で雪面の状況が不安定な場所もありました。積雪が増えると雪崩に注意が必要です。入山する際は、必ず最新の情報をチェックし、「雪崩ビーコン・プローブ・ショベル」など、雪崩に対応した装備品の携行をお願いします。

 

冬山における安全登山の呼び掛け

12月25日、26日と八ヶ岳連峰で相次いで山岳遭難が発生し、統計史上最多となる301件の遭難を記録するなど、年末年始を前に冬山における遭難の多発が懸念されることから、長野県山岳安全対策課では登山者などにあらためて注意を呼び掛けています。
 

(1)事前の気象情報の確認

冬山の安全は、気象条件に大きく左右されます。「低気圧の通過」「寒気の流入」「強い冬型の気圧配置」などの予報があれば、標高の高い山岳地帯は猛吹雪などの悪天になります。必ず事前に気象情報を確認してください。

(2) 余裕をもった計画

冬山は、積雪等によって予定よりも多くの行動時間を要します。また日照時間も短いため、余裕をもった計画を心掛けてください。

(3) 装備品の携行

アイゼン、ピッケルなどの雪上装備のほか、特にバックカントリースキーをする場合は、雪崩ビーコン、プローブ、ショベルなどの雪崩対策装備を必ず携行するとともに、アクシデントに備え、ビバーク(緊急露営)装備や非常食なども必ず携行してください。
また、冬季は寒冷環境の影響で携帯電話のバッテリーの消耗が早くなります。携帯電話はいざという時の重要な通信手段です。予備バッテリーを携行するなど、対策を万全にして入山してください。

(4) 雪崩に対する警戒

年末年始にかけて長野県内では天候が崩れ、その後全国的にも気温が高い日が続く予報が発表されています。できるだけ雪崩リスクの高い地形での行動は避けるとともに行動中は雪崩に充分警戒してください。

(5) 登山計画書の作成と共有

入山する際は事前に計画書を作成し、提出してください。特に単独登山中に遭難した場合は、登山計画書が唯一の手掛かりになることがあります。作成した計画書は、帰りを待つ家族や友人にも必ず共有してください。

長野県警察ホームページ「山岳情報」及び「長野県警察山岳遭難救助隊公式X」で冬山遭難防止に関する情報発信をしていますので、ぜひ入山前にごらんください。 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

関連記事

編集部おすすめ記事