連休中の遭難件数が過去10年で最大、体力・技術に見合った登山の徹底を 島崎三歩の「山岳通信」 第340号

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長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第340号では、連休中の遭難件数が過去10年で最多になったことについて言及。転倒や滑落による遭難が大多数で、あらためて体力・技術に見合った登山を促している。


5月9日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第340号では、期間中に起きた18件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 4月25日、戸隠連峰の西岳で、2月24日に2人パーティで入山して戸隠連峰西岳P1尾根を下山中に滑落し、行方不明だった58歳の男性が遺体で発見された。

  • 4月30日、北アルプスの北穂高岳で、4人パーティで入山した54歳の女性が、北穂高岳山頂から北穂高沢を下山中に滑落して死亡した。

  • 5月1日、中央アルプスの空木岳で、2人パーティで入山した66歳の男性と26歳の女性が、空木岳の池山尾根を登山中に疲労で行動不能となった。

  • 5月2日、北アルプスの蝶ヶ岳で、2人パーティで入山した55歳の男性と59歳の女性が、蝶ヶ岳から横尾に向けて下山中に残雪で道に迷い行動不能となった。

  • 5月4日、北アルプスの白馬岳で、単独で入山した47歳の男性が、宿泊した山荘を出発した直後に転倒し負傷した。

  • 5月4日、北アルプスの奥穂高岳で、4人パーティで入山した50歳の男性が、奥穂高岳南稜を登山中に足を滑らせて滑落、負傷した。

  • 5月4日、北アルプスの前穂高岳で、3人パーティで入山した35歳の男性が、前穂高岳北尾根を登山中に足を滑らせて滑落、負傷した。

  • 5月4日、八ヶ岳連峰の醤油樽の滝で、3人パーティで入山した59歳の女性が、醤油樽の滝付近を登山中に足を踏み外して滑落、負傷した。

  • 5月4日、北アルプスの有明山で、2人パーティで入山した25歳の男性が、有明山に向けて登山中に岩に足を挟み、負傷した。

  • 5月4日、北アルプスの有明山で、2人パーティで入山した25歳の男性が、有明山に向けて登山中に疲労により行動不能となった(男性は上記遭難の同行者)。

  • 5月4日、北アルプスの五竜岳で、7人パーティで入山した47歳の女性が、五竜岳から遠見尾根を下山中にアイゼンを岩に引っ掛けて転倒、負傷した。

  • 5月4日、北アルプスの爺ヶ岳で、4人パーティで入山した51歳の女性が、爺ヶ岳に向けて冷尾根を登山中に滑落、負傷した。

  • 5月5日、北アルプスの爺ヶ岳で、単独で入山した57歳の男性が、爺ヶ岳に向けて縦走中にスバリ岳付近で滑落、負傷した。

  • 5月5日、北アルプスの蝶ヶ岳で、2人パーティで入山した64歳の男性が、蝶ヶ岳から下山中に足を滑らせて滑落。技量不足のため、行動不能となった。

  • 5月5日、青木村の子檀嶺岳で、単独で入山した68歳の男性が、下山中に転倒、負傷した。

  • 5月5日、軽井沢町の離山で、3人パーティで入山した48歳の女性が、離山に向けて登山中にバランスを崩して転倒、負傷した。

  • 5月5日、北アルプスの蝶ヶ岳で、2人パーティで入山した24歳の男性と23歳の女性が、装備不足により行動不能となる山岳遭難が発生した。

  • 5月5日、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した33歳の男性が、奥穂高岳に向けて縦走中になんらかの原因で滑落、死亡した。

  • 5月6日、北アルプスの槍ヶ岳で、単独で入山した35歳の男性が、槍ヶ岳から下山中に足を滑らせて転倒、負傷した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

4月30日の週は、長野県内で18件の山岳遭難が発生しました。転倒や滑落による遭難が多く発生しています。また、春の大型連休中に発生した山岳遭難は26件で、昨年の18件から大幅に増加しています。

大型連休中に発生した山岳遭難の中には、「疲労で行動できない」、「装備がないため行動できない」、「技術不足で行動できない」などの山岳遭難が複数ありました。

これらの山岳遭難を防ぐには、入山前の準備が非常に重要です。山域によって必要な装備は異なります。アルプスなどの高山の登山は、しばらくの間はアイゼンやピッケルが必要です。事前の情報収集をしっかりと行ないましょう。

また、「信州 山のグレーディング」を参考に、自分自身の体力・技術で登山できる山なのか、よく確認しましょう。そして、日頃のトレーニングや体調管理を万全にして、安全登山をお願いします。
 

春の大型連休中、過去10年間で最も多い山岳遭難が発生!

4月27日(土)から5月6日(月)までの大型連休中に長野県内で発生した山岳遭難件数は、26件(前年比+8)・30人(+9)でした。30人の内訳は死者3人(前年比-1)、負傷者15人(+6)、無事救出12人(+4)でした。過去10年間では最も多い発生となりました。

<山域> ①北アルプス・・・17件 ②八ヶ岳連峰・・・4件 ③その他・・・4件
<態様> ①転倒・・・9件 ②転落・滑落・・・7件 ③道迷い・・・3件
<年齢> ①40代~50代・・・13人 ②60代以上・・・9人 ③30代以下・・・8人
 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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