夏山へのモチベーションが一気に高まってくる7月。山と溪谷オンラインに日々投稿されている「みんなの登山記録」をひも解き、この時期よく登られている山の概況の一部を前編にて紹介した。
前編のおさらいをすると、単体の山として多かったのは高尾山、富士山、八ヶ岳の赤岳。エリアごとの概況は以下の通り(2022年7月の記録調べ)。
北海道は利尻山、次いで大雪山系。東北では月山、吾妻山系(東吾妻・西吾妻)、蔵王、飯豊、朝日と続く。上信越では谷川岳、続いて高妻山、浅間山西にある篭ノ登山(東篭ノ登山・西篭ノ登山)、浅草岳など。
そして今回後編として、関東以西のエリア概況は以下の通り。
関東周辺では高尾山、富士山が突出。次いで尾瀬(燧ヶ岳、至仏山、尾瀬ヶ原)、那須岳、金峰山の順。八ヶ岳周辺では赤岳・横岳・硫黄岳周辺がもっとも多く、次いで蓼科山、霧ヶ峰、編笠山、北横岳、天狗岳など。
北アルプス周辺では穂高岳、表銀座コース(燕岳含む)、蝶ヶ岳・常念岳、白馬岳、立山、そして乗鞍岳や御嶽山も。中央アルプスでは木曽駒ヶ岳、南アルプスでは北岳が多かった。
北陸・東海・近畿では白山、中四国・九州では剣山、という結果だった。
改めて繰り返しになるが、普段行きづらい遠方の山やアルプスなどの高山が人気で、また高山植物が目当ての登山記録も多い。一方、高尾山や丹沢など都市部近郊の人気の山も、暑くてもよく登られている。
続いて、関東以西の山々からいくつかピックアップして以下に紹介しよう。
一年を通して登山者、ハイカーを集める東京・高尾山。7~8月になると、北側の蛇滝あたりに、紫色の特徴的な星形をしたイワタバコの花が咲く。
ここでは近年再整備された稲荷山コースから登り、4号路を経て蛇滝方面へと下るが、夏の高尾山は暑いので早朝ハイクで登りたい。稲荷山コースは、以前は雨後など泥濘がひどかったが、木製の階段が設置され初心者にも歩きやすくなった。特段気を付ける箇所もないが、ひたすら登りのため、水分補給に気を付けながら自分のペースでゆっくりと歩こう。
暑い夏でも、高尾山山頂にはハイカーの姿は多い。山頂でひと息入れてから、薬王院への道を見送り、4号路へ下る。山腹を緩やかに下っていき、蛇滝へ。湿った場所にイワタバコが咲いている。沢沿いの道を蛇滝橋へ向かい、梅郷遊歩道を通って高尾山口駅に戻る。夏の車道歩きを避け、蛇滝口バス停から高尾山駅行きのバスを利用してもよいだろう。
高低図
南北に連なる八ヶ岳は、夏沢峠を境として北八ヶ岳と南八ヶ岳と呼ばれる。その夏沢峠のやや北にある天狗岳は、特徴的な双耳峰の山で、二百名山に選ばれている。
唐沢鉱泉からスタートし、しばらくは苔に覆われた樹林帯を登っていく。枯尾ノ峰分岐で尾根に出て、さらに頑張って第一展望台へ。天気がよければ、南北八ヶ岳はもちろん、北アルプスまで見える。第二展望台に着くと、ようやく目指す天狗岳が見える。大きな岩が転がる道を、時には両手でバランスをとりながら登り、着いた西天狗から東天狗は目の前だ。
下山は中山峠に下る。岩がちな道は、下りのほうが時間がかかるかもしれない。岩場歩きに慣れていない場合は、時間に余裕を持った方がよいだろう。黒百合平から雰囲気のよい樹林帯の道を下り、唐沢鉱泉へと戻る。
高低図
北アルプスの槍ヶ岳や穂高岳は、いつの時代でも登山者を魅了してやまないが、長いアプローチや危険度の高い岩稜歩きなど、相応の体力や経験が求められる。一方、常念岳・蝶ヶ岳は、槍穂連峰よりも危険度は少なく展望がすばらしいので、北アルプス初心者にも人気が高い。
常念岳のメインコースである一の沢から入るが、一の沢登山口まではバス便がないため、タクシー利用となる。山の神、王滝ベンチを過ぎて沢沿いを進んでいく。沢沿いの道のため、増水時はスリップ注意だ。最終水場から傾斜がきつくなるので、ゆっくり歩を進めよう。
なんとか登り切って到着する常念乗越には、常念小屋が建っており、槍ヶ岳が眺められる。山麓で前泊しない場合は、アプローチを考えるとここで宿泊し、2日目は早朝出発するのがよいだろう。
常念乗越から急登を登り、常念岳山頂へ。槍・穂高連峰のパノラマを満喫しながらアップダウンを繰り返し、蝶槍を越えて蝶ヶ岳に到着。蝶ヶ岳からは三股に下山するが、三股もバス便がないので、事前にタクシーを呼んでおこう。
北アルプスの中でも比較的登りやすいとはいえ、標高3000m近くまで登るため、決して楽なコースではない。体力作り・装備などの準備は入念に。
高低図
石川・岐阜県にまたがる北陸の名峰・白山(はくさん)は、富士山、立山とともに三名山の一つに数えられる。その名から連想される通り、遅くまで雪渓が残り、水源の山として信仰の対象としてあがめられてきた。山頂部は主峰・御前峰、大汝峰、剣ヶ峰の三峰で構成され、いくつかの池がある。高山植物も豊富で、花の百名山にも選ばれている雄大な白山を、1泊プランで堪能しよう。
各方面から登山道がのびているが、バスでアクセスできる別当出合からよく登られている。別当出合から吊橋を渡ると、登り下りが一方通行の道となる。道標に従い、登りの中飯場・室堂方面へ。急登を経て高山植物に囲まれた道を進み、黒ボコ岩を過ぎれば、弥陀ヶ原のなだらかな木道歩きとなる。さらにもうひと登りで室堂に到着。ここで1泊となる。
翌日は白山最高点の御前峰へ。山頂はすばらしい360度の展望で、北アルプスまで眺められる。下りは池をめぐって室堂に戻る。時間があれば、大汝山の山頂まで足をのばしてもよいだろう。室堂からは、高山植物に彩られた観光新道を別当出合まで戻る。
高低図