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北アルプスを縦断しよう その⑦ 最終回「北アルプスを縦断したよ!」【唐松岳→白馬岳→栂海新道→日本海 編】

唐松岳~白馬岳~朝日岳~栂海新道~日本海( 北アルプス・御嶽山)

パーティ: 1人 (ピーちゃん さん )

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行程・コース

天候

1日目:雨時々曇り 2日目:晴れ後霧 3日目:雨後晴れ時々霧 4日目:雨時々強雨 5日目霧後晴れ

利用した登山口

八方池山荘  

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 八方尾根

この登山記録の行程

【1日目】
八方池山荘(11:20)・・・第三ケルン(12:05)[休憩 20分]・・・丸山(14:00)[休憩 20分]・・・唐松岳頂上山荘(14:50)

【2日目】
唐松岳頂上山荘(05:10)・・・唐松岳(05:40)[休憩 20分]・・・不帰キレット(08:30)[休憩 20分]・・・天狗平(10:45)[休憩 30分]・・・鑓温泉分岐(11:45)[休憩 10分]・・・鑓ヶ岳(12:40)[休憩 10分]・・・杓子岳分岐(13:55)[休憩 20分]・・・村営頂上宿舎(15:20)

【3日目】
村営頂上宿舎(05:25)・・・白馬山荘(05:50)・・・白馬岳(06:15)[休憩 20分]・・・三国境(06:50)[休憩 10分]・・・鉱山道分岐(07:20)・・・雪倉岳避難小屋(08:25)[休憩 20分]・・・雪倉岳(09:20)[休憩 20分]・・・水平道分岐(11:50)[休憩 20分]・・・朝日岳(13:20)[休憩 30分]・・・朝日小屋(14:20)

【4日目】
朝日小屋(04:00)・・・朝日岳(05:00)[休憩 10分]・・・千代ノ吹上(05:35)[休憩 10分]・・・照葉ノ池(06:10)[休憩 10分]・・・アヤメ平(07:00)[休憩 10分]・・・黒岩山(09:00)[休憩 20分]・・・サワガニ山(10:50)[休憩 10分]・・・犬ヶ岳(12:25)・・・栂海山荘(12:33)[休憩 30分]・・・菊石山(15:20)[休憩 20分]・・・白鳥山(17:30)[休憩 10分]

【5日目】
白鳥山(05:40)・・・坂田峠(07:30)[休憩 30分]・・・尻高山(08:30)[休憩 20分]・・・栂海新道登山口(11:11)

コース

総距離
約52.1km
累積標高差
上り約4,888m
下り約6,647m
コースタイム
標準37時間30
自己34時間16
倍率0.91

高低図

標準タイム比較グラフ

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

 2017年夏、台風5号の迷走などで、なかなか天候が安定しません。(下山後のニュースだと、東京は8月1日から17日間連続で雨。平均湿度85%以上は89年ぶりとのことでした。)
 そんな中、唐松岳~白馬岳間の不帰キレットの通過日が晴れ予報という雨の隙間の日程に合わせ、「北アルプスを縦断しよう」計画その⑦最終回を実行することにしました。(天候によっては、白馬岳から栂池に下山し、そこから先を「その⑧」に延長するつもりでした。)

1日目(曇り➡雨:八方~唐松岳頂上山荘)

 前日、2年ぶりの入山前祝い?で、ついつい飲み過ぎてしまいました。体調不良のまま「北アルプスを縦断しよう その⑥」で一昨年下山した八方尾根を登り返します。麓のゴンドラ駅から上を見ると、厚い雲がかかっています。胃も調子悪くてちょっと憂うつです。
 11:20 八方池山荘を出発。扇雪渓で一瞬だけ青空が見えたものの、丸山ケルンを過ぎたあたりから本格的に雨となりレインウエアを着用。雨の中、唐松岳頂上山荘のCSにテントを張りました。 
 夕食が終わって一息ついた頃、雨が上がり雲の切れ間から剣岳が見えました。夕焼け空です。明日に期待です。

2日目(晴れ➡曇り➡雨:唐松岳頂上山荘~不帰キレット~白馬岳頂上宿舎)

 予報通り晴れました!五竜岳にきれいに朝陽が当たっています。5:10に出発。これから通過する不帰キレットを見ながら唐松岳山頂に着きました。
 いよいよ不帰キレットです。最初のⅢ峰は、黒部側を巻きます。唐松岳山頂からⅡ峰北峰までは難所はありません。Ⅱ峰北峰からが核心部の岩稜帯になります。北アルプス三大キレットの一つではありますが、慎重に歩けばそう危険なことはないと思います。スタンスもわりとしっかりしたところが多いし、核心部もそう長く続きません。ルート的には、白馬岳側から南下した方が、核心部が登りとなるため易しいかと思います。(当然ですが、悪天候時の通過は絶対に控えるレベルではあります。)
 途中、ネットにもよく出ている梯子の橋がありますが、鎖が緩めなため、自分の足元のバランスを優先して通過してください。

 不帰キレットからは、天狗の大下り(唐松岳からだと「大登り」)となります。上部は鎖も付いていますが、斜度もそうきつくなく、岩も安定しています。感覚的には一昨年通過した「蓮華の大下り(大登り)」よりはるかにラクでした。天狗の頭からは、天狗山荘に向かって僕好みの広くて穏やかなトレイルになります。
 天狗山荘のすごっく冷たい雪解け水で顔を洗って昼食。天狗山荘は今年の大雪で一部倒壊のため休業中。来年度、規模を縮小して営業再開の予定とのことでした。不帰キレットを通過する上で大切な小屋です。小屋の皆さん、頑張ってください。
 天狗山荘上の雪渓を越えたあたりからガスってきました。白馬鑓ヶ岳、杓子岳はガスの中で展望なし。杓子岳への稜線上のルート入口はよく分からず(標識が見当たりませんでした。)比較的しっかりとした踏み跡を選んで、稜線に上がりました。小雨の中、頂上宿舎に到着し、テントを張りました。あまり良い天候ではありませんが賑わっています。さすがに人気エリアです。

3日目(雨➡曇り、晴れ:白馬岳頂上宿舎~朝日小屋)

 テントのチャックを開けると、外は小雨。朝食を済ませ、このまま、栂池に下山しようか、計画を続行しようか迷いながらテントを撤収します。白馬山荘でスマホの電波が通じたので、天候をチェックしましたが、この先も雨予報であまり思わしくありません。白馬岳山頂も雨。360°のガスです。(泣)
 この時点で、50%は三国境から下山の心境でした。
 …が、三国境に着くと、雪倉岳方面は雲が切れて、うっすらと陽が差しています。単純にその光景をみた瞬間に、計画通り日本海に進むことに決めました。鉱山道との分岐を過ぎると、もう引き返すという選択肢はなく、先に進むしかありません。
 この三国境から雪倉岳、朝日岳のルートは、高山植物がとても多く、雪渓、湿原、好展望のとてもいいルートです。歩いていて飽きません。また、富山県域はルートがとてもよく整備され、標識、赤〇などもしっかりついているので、多少のガスでも迷うことがないと思います。水場の水もきれいで、とてもおいしいです。唯一惜しいのは、鉢ヶ岳を大きく巻いてしまうことくらいです。
 水平道分岐から、「北アルプスを縦断しよう」ルールに則り、朝日岳に直登します。(水平道には魅かれましたが‥)分岐から急な登りが続き、緩やかな木道になると間もなく朝日岳の山頂です。途中、カモシカにも出会いました。朝日岳、高山植物も多く、広々としたとてもいい山です。
 朝日岳山頂を下り始めると雲が切れ始め、今日歩いてきた雪倉岳方面を振り返りながら朝日小屋に着きました。テント場も広くて、平坦でとてもよいです。
 今夜は、評判の朝日小屋の夕食です。(途中で出会った方に、予約すればテント泊でも夕食を頼めると教えていただきました。電話が通じず諦めていたのですが、行程中にたまたま登山道を整備していた小屋の方に会い、急遽お願いできました。)
 評判通り、地元、富山県の食材を使った、とてもおいしい夕食でした。山小屋の食事としてのクオリティーは完全に超えています。明日からの栂海新道への景気づけにお弁当の鱒の笹寿司も購入し、満腹でとても幸せな気分でテントにもどりました。
 明日はほぼ確実に天候が崩れるようです。テントの中でうだうだと地図を眺め、明後日も雨の場合を想定し、明日中に白鳥小屋まで進むことにしました。12時間の行程になります。
 寝る態勢にすっかりついた頃に到着したパーティーが、僕のすぐ後ろにテントを張り始め、結構遅くまでガヤガヤと…

4日目(雨:朝日小屋~白鳥小屋)

 熟睡できないまま3時に起きて、昨夜小屋で購入した笹寿司の朝食。テント撤収時は幸い気になるほどの雨ではありませんでした。ヘッドランプをつけて4時に出発です。
 朝日岳の山頂を過ぎた頃、一瞬だけ太陽が出ましたが、予報通り雨が降り始め、だんだん強くなってきました。吹上のコルからいよいよ栂海新道に入りますが、同時に雨足も強くなり、時々、かなり強く降るようになりました。(時々、シャワーです…泣。この日、麓も大雨で、大糸線が一時運休したようです。)

 沢?と化した登山道は、歩くのに時間がかかります。また、黒岩平付近には、渡渉する場所が3カ所程ありますが、かなり増水していました。この先の歩行距離を考えると、靴の中は濡らしたくないないのですが、先に進むためには他に方法はなく(雨がひどいので脱いでも無駄…)、諦めて入水。ここで登山靴は完全に水没しました(靴擦れ確定…泣)。
(幅は5M程度あり、膝くらいの深さで、流れは結構急でした。)

 また、固定ロープがある滝?下部のルートは、沢の増水でルートは完全になくなっていました。増水した沢の流れは強く、どう見ても歩行不可能です。仕方なく右手の崖の上部に上がり、草付きをトラバースして通過しました。(久々の緊張で、写真どころではありませんでした。)
 黒岩平を過ぎ、沢を離れて黒岩山に着いたときは、正直ほっとしました。

 悪天候時、黒岩平付近は急な沢の増水や登山道通行不可能のリスクを計算に入れて行動して下さい。部分的に危険でした。(基本的にルートは整備されていて、晴天時はとてもきれいなところだと思います。)
 
 栂海新道は、忠実に尾根上をトレースしてほぼ全ての山頂を通過するという、とても潔く、芯の通ったルートです。そのため、地図を見てイメージするより、はるかに急なアップダウンがあります。

 『完成後、多くの登山者から、「それでなくても長丁場なのに、どうして巻き道にしないのですが」と尋ねられることがある。その時はきまって、「アルプスの完全縦走は真正面からの直球勝負で完歩することによって、長かったなあという実感とヤッタという達成感を味わえるのではないか」と答えることにしている。』
 ( 『栂海新道を拓く』 小野 健 氏著 山と渓谷社 より)

 雨のため道は常にぐちゃぐちゃで滑って歩きにくく、犬ヶ岳山頂に着いたときはもうクタクタでした。栂海山荘で長めの休憩を取ることにします。
 13:15 白鳥山に向かい出発します。(ここからまだ4時間もある~泣)同じようなアップダウンが続きました。途中、黄蓮の水場で今日、明日の水3Lを補給。ザックはより重くなりました。さらに、下駒ケ岳から白鳥山頂までのアップダウンが特にきつく、なかなか距離が稼げません。(今回、一番きつかった区間でした。)
 17:30にやっと白鳥小屋に到着しました。ザックの中まで浸水(泣)。下山時用に温存していた、乾いた服に着替えてやっと人心地がつきました。明日はいよいよ日本海。夕食を食べながら、残ったウイスキーと焼酎を全て消化しましたが、なぜかあまり酔えませんでした。

5日目(雨、曇り、時々晴れ:白鳥小屋~日本海)

 シリアルとラーメンで「北アルプスを縦断しよう」計画最後の食事。濡れたソックスを履き、びちゃびちゃの登山靴を履く瞬間…最高に憂うつです。5:40に小屋を出発します。基本的に標高は下げていきますが、それでもまだアップダウンが続きます。
 標高が下がるにつれてだんだん暑くなり、シキ割の水場でサウナスーツと化したレインウエアを脱ぎました。たまに木の隙間から海が見えるようになり、波の音も聞こえてきます。終わりが近いことを実感です。坂田峠に着くころには雨も止み、久しぶりの舗装道路に座って休憩。靴擦れした足が痛みます。
 標高677Mの尻高山で一度高度計を合わせました。標高500Mをきっても、栂海新道はまだまだアップダウンが続きます。栂海新道は、ホントに最後まで栂海新道らしいルートです。時計の高度計グラフも相変わらず凹凸を示しています。

 歩くだけでも大変なこのルートを開拓し、きれいに藪を払い、固定ロープや階段を整備し続けている地元山岳会の皆様には本当に頭が下がります。

 途中、2度目の林道との交差地点で、レインウエアやザックカバーを道路に広げて乾燥させました。日光が心地よいです。
 ここからもまた二本松峠に向けて登り返しがあり、アップダウンがあります。そう簡単に日本海に下してはくれません。入道山を過ぎるとやっとほぼ下りとなり、標高300Mをきると国道を走るトラックの音が聞こえてくるようになりました。送電線鉄塔を二つくぐると、栂海新道の登山口は近いです。
 11:11 登山口に到着。そのまま、親不知観光ホテルの脇を下り、栂海新道起点の案内に従って海に向かいます。標高差80Mの階段を下り、日本海が目前になってくると、少しドキドキしました。

 2017年8月13日 11:20 日本海に着水し、『北アルプスを縦断しよう』計画が終了しました。
達成感と喪失感が入り混じった不思議な感覚でした。

新中の湯焼岳登山口~日本海まで、 2011年8月04日に新穂高をスタートし、
 ①山脈上の全てのルートを歩く。(前回または、以前に下山か入山した地点に必ず一度戻
る。)➡◎
 ②登れるピーク(立ち入り禁止、ルートがない等を除く)は全て登る。➡◎
 ③全行程を単独で行う。➡◎
 ④基本、テントまたはツエルト泊(天候、他の理由で2日は素泊まり小屋泊になりました。)➡△ 
 ⑤飲み過ぎない。(守れない日が多々ありました。)➡×
 等の自己ルールの下

 総日数:22日間
 総距離:229.7Km
 累計標高差:52407m

 の行程となりました。


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装備・携行品

シャツ アンダーウェア ダウン・化繊綿ウェア ロングパンツ 靴下 レインウェア
登山靴 バックパック スタッフバック スパッツ・ゲイター 水筒・テルモス ヘッドランプ
タオル 帽子 グローブ サングラス 着替え
地図 コンパス ノート・筆記用具 腕時計 カメラ 登山計画書(控え)
ナイフ 修理用具 ツエルト 健康保険証 ホイッスル 医療品
虫除け 熊鈴・ベアスプレー ロールペーパー 非常食 行動食 テーピングテープ
トレッキングポール ストーブ 燃料 ライター カップ クッカー

みんなのコメント

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  • ピーちゃん さん、こんにちは。

    レコを拝見しました。すごいです!
    自分も北アルプスの稜線をひとつなぎにするために、いつかは歩いてみたいと思いますが、これは体力気力ともに充実していないと完遂は難しそうなコースのようですね。

    濡れた登山靴をはくときの憂鬱さ、草いきれまで感じられそうな鬱蒼とした登山路の写真を拝見すると、我がことのように感じられました。

    おめでとうございます!

  • すてぱん様

    コメントいただきありがとうございます。
    自分の記録は忘備録のつもりでアップしていてほとんど見ないので、コメントに気付きませんでした。申し訳ございません。
    体力、気力も多少は必要かも知れませんが、時間をかけて細切れゆっくり踏破していくことで、完遂は可能と思われます。
    ぜひ、チャレンジしてください。

    入山、下山、コース設定につきましては、ある程度ノウハウがありますので、ご相談ください!

    ありがとうございました。

  • ピーちゃん、レスありがとうございます

    今拝見してもすごいレコだなあと思います。
    自分もいつかは、と思っていたはずなのですが、今シーズンはろくに山に登れていない有様・・・

    でも、いつかはという思いはまだ消えておりません。その際には、ぜひアドバイスをお願いしたく思います。

登った山

犬ヶ岳

犬ヶ岳

1,592m

朝日岳

朝日岳

2,418m

雪倉岳

雪倉岳

2,611m

白馬岳

白馬岳

2,932m

杓子岳

杓子岳

2,812m

鑓ヶ岳

鑓ヶ岳

2,903m

唐松岳

唐松岳

2,696m

白鳥山

白鳥山

1,287m

長栂山

長栂山

2,267m

黒岩山

黒岩山

1,624m

菊石山

菊石山

1,210m

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