行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
その他
その他:
ガイドさんの車で土合駅
この登山記録の行程
土合駅 (9:37)・・・土合橋 (9:50)・・・旧道マチガ沢出合い(散策とランチ) (12:13 12:53)・・・土合橋 (13:30)・・・土合駅 13:45
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
昨シーズン、融雪による沢の氾濫で断念した一ノ倉沢コース。冬型の気圧配置が緩み、好天が期待できそうな時期を見計らって歩いてきました。さてその顛末は・・・
いつの日にか、一ノ倉沢の岩壁を雪のシーズンに眺めたい、そう思ってきた。一ノ倉沢へのスノーシューウォークは、昨シーズンも計画したのだが、晴天だったにも関わらず融雪による沢の溢水で渡渉が困難ということで断念せざるを得なかった。そもそも谷川岳周辺は天候が変化しやすいが、冬型の気圧配置が緩み、前日までの雪も止み晴れたこの日は、岩壁が姿を表す可能性が高い。
今回のコースは地図で見る限りは、湯檜曾(ゆびそ)川沿いの平坦な林道を歩いて一ノ倉沢出合まで往復する「だけ」。夏道のコースタイムは、往復で2時間半でしかない。しかし、雪の存在はゲームを複雑に変えてしまう。好天で気温が上昇すれば、前日まで新たに降り積もって雪が不安定であることを考え合わせると雪崩のリスクが午後には高まることになる。行動時間はせいぜい昼まで。また、新雪を楽しめる反面、トレースが期待できず、ラッセルを強いられれば自ずと稼げる距離も限られてしまう。今回ガイドをお願いした亘理さんは、水上でのスノーシューの草分け的存在の大ベテランだが、一ノ倉沢までたどり着けるかは初めから微妙だという。ガイド仲間に情報を求めるも、どうやら年明け後はまだ誰も一ノ倉沢には入っていないらしい。
亘理さん経営のペンションレインボーで、奥様の手の込んだ美味しい晩御飯をいただきながら、少し遅めの出発として、同じコースに入るかもしれない人たちのトレースを期待しつつ、昼までに一ノ倉沢に到達できればという計算をした。
翌朝、天候は予報通り晴れ。私は自分のことを「晴れ男」だと信じているが、2019年も晴れでスタートだ。だが、冬にしては朝から暖かいのは懸念材料。土合駅に車を止め、スノーシュー(レンタル)を装着してから出発。土合橋へ舗装路を進む間も、亘理さんは除雪され横断面があらわになった道路脇の積雪にストックを振り下ろし、崩れ具合や弱層を観察している。なるほど何回雪が降ったのか、読み取ることもできる。土合橋で湯檜曾川沿いの旧道と呼ばれる林道に入るが、深い新雪でトレースなし。どうやらこの時点で亘理さんは、一ノ倉沢到達は望み薄、交代でラッセルしても昼までにマチガ沢までがせいぜいと判断したらしい。もし、どうしても一ノ倉沢という希望でなければ、今日のコンディションなら他のところに行くけどね、ともおっしゃっていた。
土合橋からは、除雪された車道を離れて湯檜曾川沿いの林道を進むが、どこが道かは大体分かるものの深い新雪で、スノーシューを履いていても膝まで潜る。これまで美ヶ原や戦場ヶ原でスノーシューを楽しんだことがあるが、トレースがついていたり雪がしまった状態であった。深く潜るのは初めてで勝手が違う。同じ雪でもその状態で全く異なったものになる。あらかじめ書いてしまえば、今回は交代でラッセルして2時間半ほどかけてようやくマチガ沢出合に到達したのだが、帰りはトレースがあるためにわずか30分ほどで土合橋だ。ラッセルで進む場合は5倍ほど時間がかかった計算になる。これほどまでに条件によってスピードや到達距離に差が出るというのは、銘記しておかなければならない。
ゲラが木を叩く音やさえずりなど思ったよりも沢沿いの林は賑やか。デブリやスノーボール、雪面の盛り上がりや窪みなど色々なサインを読み解きながらルートを決めていく。例えば雪面が盛り上がり表面が荒れていたら、それは雪崩の跡なのか考える。窪んでいたらその下には水が流れているのではないかと考えて避けて歩く。雪崩は対岸の斜面からもやってくることもあり、音もしないのでそちらにも目を配りながら歩く。木の根元あたりは空洞になっていることが多く、ハマりやすい。
こんな風に書くとおびえながら歩いたように聞こえるかもしれないが、新雪の感触や景色を楽しみ、亘理さんの話題豊富で軽妙なトーク聞きながらの歩きだ。雪などのサインを読むというのもゲームのようなものと考えれば楽しい。注意しながら歩いていたにも関わらず、一度胸の深さまで落ち込んだ。亘理さんは「いい経験をしましたね〜」と笑いながら脱出方法を教えてくれる。こちらも笑いながら言われた通り、ストックを横に持ち替え、胸の前の雪を足元に落とし、膝で足場を作ってから這い出す。もっとも、それもベテランガイドがついてくれているからできることで、人が入っていない(トレースがついていない)初めてのフィールドを単独で歩くのは難しいなというのも正直な実感だ。
湯檜曾川沿いに歩くと、堅炭(かたずみ)岩や水上のマッターホルンこと武能岳が鋭い。途中でトレースを伝って追いついてきたセッケイカワゲラ研究者の方と3名でラッセルを交代しながら進み、マチガ沢には昼到着。目指す一ノ倉沢はすぐそこのように見えるけれども、午後の雪崩のリスクなども考え合わせると時間的にもここまでが限界。残念ではあるけれども、ここまでと決めてしまえばマチガ沢出合からの景色も西黒尾根や雲間に見え隠れする谷川岳、鋭い武能岳となかなかだ。
亘理さんが準備してくれたホットワイン、スープカレーに炙ったバゲットを浸して立ったまま昼食とする。実はね、こういう眺めの良いところは、夏はいいのだけれど雪のシーズンは雪崩のリスクが高いところなんだという話を聞く。言われてみればそうだ。尾根でもなければ、眺めが良いということはそのまま木が雪崩などで押し流されて育たないということに他ならないのだから。雪のことは雪の中に身を置いてこそ理解できるものなのだなと、改めて思い至った。こうやってお客さんがいい眺めだなあと楽しんでいるときに、反対側を観察して雪崩が来ないか見張っているのがいいガイドなんだよと、亘理さんは笑う。
行きに2時間半かけてラッセルした道を、わずか30分ほどで戻る。途中、我々のトレースを辿って別のパーティーがすれ違う。条件さえ許せば、彼らは体力や時間を節約して、より遠くまで到達できたかもしれない。でもそれは我々とて立場が違えば同じこと。雪が絡むとゲームは格段に複雑になるのである。
ふたたびふれあい交流館で入浴後、上毛高原駅に送ってもらう。帰省ラッシュで新幹線は大混雑であったが、私は幸運なことに最後まで座って移動。残念ながら今シーズンも雪の一ノ倉沢の岩壁を眺めることは叶わなかった。けれども楽しい経験と多くのことを学ばせてもらった。ぜひ、次の機会を待って、再び歩いていみたいと思う。
今回お世話になったペンションレインボーの案内はこちら
http://pensionrainbow.wixsite.com/rainbowtop/blank-r8469
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