行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
通常は会津駒ヶ岳・滝沢登山口付近の林道に路肩駐車するのが一般的。今回は、縦走したのちバスを使って戻ってくるため、起点を桧木岐村役場前駐車場とした。バス停のすぐ脇に駐車場があり、綺麗なトイレもあって便利。1,000円という情報もあったが、利用にあたっては特にそのような看板もなく結果的に無料で使えた(少なくとも張り紙も有料の看板もなかった)。
この登山記録の行程
役場駐車場(05:03)⇒会津駒ケ岳登山口(05:12)⇒滝沢登山口(05:35)⇒(ブナ林)⇒水場(数分降った所)(06:35)(休憩~07:00)⇒駒の小屋(08:12)(休憩~08:37)⇒会津駒ケ岳(2,133m)(08:53)⇒中門池(09:30)⇒中門岳(2,060m)(09:49)⇒中門池(10:00)⇒会津駒ケ岳⇒駒の小屋(10:40)(宿泊)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
【0日目】
3連休を使って兼ねてから温めていた企画を実行することにした。
行先は会津駒ヶ岳。題して「とんでもない私は会津駒ケ岳に行きますよツアー」。
知っている人は知っているパクリ(引用)のタイトル。パクった呪いか(笑)、終始、波乱万丈でしたが、タイトル通り、それでも山を諦めず、結果、実に想い出に残る良い山旅ができました。。。
まず、残った仕事に蓋をして速攻、会社を飛び出る。途中、コンビニによって軍資金を調達。と思ったら、何度機械を操作してもお金が出てこない。よくよく見ると「残高が足りません」のメッセージに思わず「マジかー!!」。今回のミッションではお金も使うので最低限の軍資金が必要。かなり焦りながら帰宅する。
タンス預金を探しまくり、なんとか最低限の軍資金を確保。アウトドア道具を買おうと思っていたお金が役に立った。準備はほぼ終わっていたので、すぐに出発しようかとも思ったが、仕事で使ったYシャツが山になっていいたので、洗濯をしてから出発することにする。洗濯機をセットして、終わるまでクーラーの効いた部屋で荷物の最終チェックをする。そろそろ終わったかと見に行くと、残り時間「7分」の文字と「ジャー」という水の流れる音。暫くして、さすがにもう終わっただろうと、見に行くと相変わらず「7分」の文字と「ジャー」と水の音。さすがにオカシイ?と洗濯機を調べてみると、なにやら見たこともないエラーコードが表示されている。「まさかずーっと水出しっぱなしだったのか?!」。あまりのショックに座り込む。時間と労力と水が無駄に。。。
「不幸の連続。。。行かない方がいいのか?」の心の問いに、胸を張って「とんでもない。私は会津駒ケ岳に行きますよ」。(笑)
【1日目】
カーナビに「桧木岐村役場」をセットして、車でひたすら向かう。駐車場とバス停は役場の目の前にあったのですぐわかった。駐車場の脇にトイレがあったので、身支度をさせてもらう。トイレは室内灯がなかったが、天窓が大きくとられた構造で、ほんのり明るく携帯のライトでも十分だった。清潔感ある綺麗なトイレで有難い。
明るくなるのを待って5時に出発。一昨日の天気予報では台風の影響もあってテンクラ評価はCだったが、きっと晴れると狙っていた通り快晴。テンクラもAに変わっている。
村の主要道路を使って登山口へと向かう。早起きのおじいさんやおばあさんに挨拶をしながら村の雰囲気も楽しみつつ歩く。もう少し離れているのかと思っていたが、駒ケ岳登山口へはすぐに到着する。大きな看板があるので見落とすことはない。ここにも綺麗なトイレが整備されていた。トイレの横には水道とブラシがあり、下山時には靴を洗えるようになっていた。さすが百名山。
林道をつづら折りに登っていく。一歩踏み込んだだけで、森の深さを感じる。林道沿いに沢が流れていたが、どこまでも透き通った綺麗な水だった。
滝沢登山口へ到着。林道の路肩スペースには既に数台の車が停まっていた。多い時にはあっという間に林道の路肩も埋まってしまうらしいが、役場から歩いても苦になる距離ではなかったので、そんなに慌てる必要はないのかも知れない。
登山道はいきなりの階段から始まる。階段は一瞬で終わってしまうが、それが急登開始の合図。滝沢登山口の時点で標高1,100m。ここから会津駒ヶ岳の標高2,133mへ向けて一気に高度を上げていく。
さて、今回のミッションは3つ。
1つ目、「念願の駒の小屋でお泊り&お泊りでしか買えないグッズ購入」。タイトルの「とんでもない」からバレバレだが、テント主義の自分が敢えて山小屋を選んだのは、どうしてもここで買いたいグッズがあったから。
2つ目、「会津駒ケ岳から中門岳までの天国ロードを闊歩する」。花のシーズンとしては中途半端な時期になってしまったが、写真を見て一目ぼれした池塘が点在する緑の湿原にどこまでも延びる天空の木道を歩いてみたいと憧れていた。
3つ目、「日本百名山2つ制覇、ハードだけど素敵な山を歩き倒す(総延長30km越え)」。以前、至仏山から眺めた尾瀬の風景とその奥に聳える燧ヶ岳に心を鷲づかみされ、以来、必ず燧ヶ岳に登ると決めていた。土地勘がなかったため、これまで会津駒ケ岳と燧ヶ岳は、遠く離れた山だと思い込んでいたが、ある時、地図を見て縦走可能なことに気が付き二つの山への想いが重なった。これはもう一度に制覇するしかない。
少し前の飯豊山でのテント装備に比べれば大したことはないが、それでも水場の少ない会津駒ケ岳からの縦走に備え、多めに水を持ってきたので40Lザックがパンパンになっていた。担ぎがいがある。急登にこたえるザックの重みが嬉しいなんて、山をやらない人にはとうてい理解できないだろう。
明け方は肌寒くさえ感じたのに、太陽が昇り始めるとあっという間に今日の猛暑を予感させる気温に変わってきた。湿度も高く、額からの汗が停まらない。ただ、ブナ林が直射日光を遮ってくれているのが幸いだった。
急登と戦って約1時間。少し開けたところに出た。休憩ポイントに看板が立っていた。どうやら水場まで来たようだ。笹が覆い茂っていて少しわかりにくいが、登ってきて左手側に水場へ下る道がある。「えーっ、こんな急なところ降るのか?」としり込みする人もいるかも知れないが、2分もあれば到着するし、なにより冷たくて美味しくて降りるだけの価値はあるので、是非、足を運んで欲しい。ただし、涸れている時期もあるようなので、事前に駒の小屋のブログ等で確認した方がよい。
水をセーブしながら登ってきたので、ここでは遠慮せずゴクゴクと喉を鳴らしながら、勢いよく飲む。この夏一番の美味しい水だ。余韻に浸っているとすぐさまアブが近寄ってくるので、追加で持ってきた2Lパックに急いで水を補給し、早々に登山道へと戻る。これで水の総量は6L以上。普段、行動中はあまり水をとらないが、炎天下で水場の少ない長距離を考えると少しでも多めに持った方が安心だ。
水場を超えると、登山道も徐々に緩やかになっていく。そのうち、木道が現れるともう天国も近い。森林限界を超え、視界が開けたところにベンチがあったので、ザックを下ろして小休止とする。目前の小高い丘の上に小屋が見える。今日の目的地、駒の小屋だ。大草原の中にぽつんと建っていて、まるで「アルプスの少女ハイジ」の世界観そのものだ。小屋から右手側へは緩やかな緑の稜線が延びていて、その先に会津駒ケ岳が見える。空の青にモクモクと立ち昇る夏の白い雲。写真で憧れていた風景がついに目の前にある。
白いコバイケソウや黄色のキンコウカが咲く草原の中をゆっくりと小屋へと向かう。小さいがスカイブルーの色が存在感を示すミヤマリンドウも所々に咲いていた。小屋の手前下には大きい池塘があった。よくポスターで使われるポイントだ。今日も空と雲が水面に映りこんで絵葉書のようだった。
山小屋に到着。黒っぽく塗装された壁に「駒の小屋」の看板が掲げられていた。受付はお昼過ぎとのこと。現在、8時なので時間はたっぷりある。今日は明日に備えてとことん天国でゆっくりする計画だ。早速、テーブルを一つ確保して、到着のコーヒーを淹れて一服する。
小屋の周りには、小さな木彫りの動物さんたちが隠れている。有名なのは、小屋正面付近にいるオコジョ2匹。この前まで青かったような気がしたが、見つけたのは白い2匹だった。白への衣替えは季節が違うのでは? :)
一息ついて、ミッション2つ目の達成のため中門岳へと向かう。小屋のベンチからは真正面に会津駒ケ岳がよく見える。頂というよりは小高い丘のよう。そこから右手へかけて中門岳までほぼ水平移動の稜線が続く。百名山の深田久弥が「どこが最高点か察しかねるような長大な山が伸びていて、、、」と記したのがよくわかる。
コバイケソウが乱舞する横を通り過ぎ、木道を歩いていく。まずは、会津駒ケ岳の山頂へご挨拶。残念ながら楽しみにしていた燧ヶ岳は雲の中でよく見えず、明日へお預け。午後に向かって少し雲が上がってきたようだ。
会津駒ケ岳から中門岳にかけては、一段と夢のような空間が広がる。まさに天空の楽園。小さな池塘が点在していて、周辺にはワタスゲがふわふわしながら咲いている。今年は見逃したと思っていただけに嬉しさ百倍。池塘にはやはりワタスゲが一番似合う。池塘に近寄ってしゃがみ込んでみると、目立たないがここにも池塘特有の植物が群生していた。モウセンゴケ。葉の先端に小さな触手がいっぱいついていた。こうやって見るとなかなか愛らしい。
緑の草原を薄紫に染めるものがあった。ハクサンコザクラの群生だ。これだけの群生に出会えたのは久しぶりだ。花のシーズンを外したと期待していなかったが、結構、様々な花が咲いていて目を楽しませてくれた。
中門岳手前の大きな池塘(中門池)まで来ると霧が立ち込めてきた。そんな中、ワタスゲの群生が風に揺れている。なんと幻想的な風景か。白の世界の中に、鮮やかな黄色の花も咲いている。キンコウカ。中門岳ではキンコウカの群生があり、黄色い絨毯が広がっていた。
のんびりと時間を過ごしてから、風景を振り返るように来た道を戻る。小屋に戻ると程よい時間だったので、チェックインを済ませる。山好きの優しそうなご夫婦が笑顔で迎え入れてくれた。小屋の中にはいろいろなグッズが販売されていた。その中でもミッションの一つ目として狙っていたのが、Tシャツ。駒の小屋と言えば、「とんでもない。私は山に行きますよ。」と書かれたTシャツが有名で素敵だが、今日の狙いは「宿泊者のみ」が購入できるという「だから、もうなんにも考えないでお山に行けばいいんだよ」Tシャツ。数年前に北アルプスでそのTシャツを着ている人を見かけ、どうしても欲しくていつか会津駒ケ岳に来ようと心に決めていた。これがテント泊主義の自分がわざわざ小屋を予約してやってきた理由だ。後で聞いたが、このTシャツ。文章はご主人のひらめきで、それを奥さんがデザインしているとか。くずれた感じの文字やデザインが絶妙に可愛くてセンスがある。お金さえあれば、何着でもまとめ買いしたいところだ。
ご夫婦(奥様?)のセンスの良さは、小屋随所に見ることができた。入り口のすぐ左側には、食事をするための部屋があり、名物の熊の皮がペロンと壁に貼ってあった。
宿泊場所は階段を上がったところに左右に2部屋。ところ狭しに布団が敷いてあるが、完全予約制の代わりに、お布団と寝る場所は確実に確保!がコンセプトだけあって、快適そうだ。窓からも涼しい風が入り込んでくる。自分の部屋は「はんさんしゃくなげ」の一番奥だった。たぶん、誰よりも早く行動するから手前に変更をお願いしようかとも思ったが、「まぁいいか」と、早速、荷物を仕分けて、指定された布団の上にねっ転んでみる。気も良くてそのままうたた寝をしてしまった。
何人かの登山者も到着したようで賑やかになってきたので、外に出てテーブルに座りコーヒーを淹れる。眼下の山肌に、流れゆく雲の影がうつっている。小屋の入り口に置かれていた山関係の本を数冊持ち出して、コーヒーを飲みながらページをめくる。いつもは、弾丸登山や長距離縦走が多いので、こんなに山の上でゆっくりするのは久しぶりだ。エネルギーフル充電だ。
日が陰る前に夕食を済ませ小屋に戻ると、奥様に「宴会が始まるので、コップを持って参加しませんか?」と声を掛けられる。差し入れできるものは一切なかったが、お恥ずかしながら、コップだけはしっかり持っている。お言葉に甘え、いそいそと熊の皮が飾られた部屋に行くと、既に常連さんたちが盛り上がっていて温かく迎え入れてくれた。
いつの間にか日も暮れて薄暗くなると、ご主人が天井にぶら下がっていた3つのランプと、テーブルに置かれたランプにそれぞれ火を入れてくれた。ほんのりと温かい火が周囲を照らす。手元のコップに入ったお酒とおつまみが見える程よい明るさが一層雰囲気を盛り上がり山談義が弾む。一人ひとり、山へは特別な熱情を持っている。変態的なほどの山好き(仲間)がこんなにもいるとは。美味しいお酒に、尽きぬ話題で、消灯の8時があっという間だった。
奥様の「消灯ですよ」の声で、それぞれ片づけをして布団へと向かう。明日は、ミッション3つ目をかけてそれなりの縦走となる。3時出発を目指して、よく疲れをとっておくこととする。
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https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=171546
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