• このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 参考になった

日本千山 805/1357

知円別岳( 北海道)

パーティ: 1人 (1357 さん )

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 参考になった

行程・コース

天候

曇後雨

登山口へのアクセス

マイカー

この登山記録の行程

岩尾別温泉(7:05)羅臼岳(12:35)羅臼平/泊(13:35/3:55)サシルイ岳()知円別岳(7:25~35)羅臼平(10:40~11:00)岩尾別HS(12:50)

コース

総距離
約26.1km
累積標高差
上り約2,594m
下り約2,596m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

 濃い霧に包まれて期待出来そうな天気ではない。コーヒーとパン、バナナの朝飯を取って羅臼国設キャンプ場を後にし、岩尾別温泉へ向かう。知床峠まで上がると濃霧から抜け出し、朝日に眩い北海道の大自然に感嘆の声を挙げながらドライブする。羅臼岳は標高1,400mから上は厚い雲の中に隠れている。日曜日の今日、登山口は車で溢れ、かなり下の方に車を止めて歩き始める。
 木下小屋で「今日、明日の天気は如何ですか」と聞くと、「新聞の情報しか知らないが、こんなもんではないの。雨は降らないでしょう」と素っ気ない返事が返ってくる。「硫黄岳からは下れないんですよね」と確認すると、「崩壊の危険があるので、カムイワッカの滝の先が通行止になっているからね」と教科書通りの返事が返ってくるが、「カムイワッカヘは、明日からシャトルバスが運行されるよ」と、少しは登山者側に立った物言いもする。
 小屋の前から一段上がり、注連縄を潜って登り始める。道はよく踏まれ、百名山を目指す登山者の多い事が伺われる。しばらく行くと、「950m岩峰までの間は蟻の巣が多く、熊が頻繁に出没する」との注意書きが立っている。「ガスっていると、熊も出易い!」と声を上げ、笛を吹いて歩く。
 平坦な極楽平を過ぎて一登りすると雪渓が現れる。上部に十数人のパーティーが見え、これから雪渓に掛かろうと言う高年組が休んでいる。雪渓を登り切ると直ぐに羅臼平だ。二ツ池まで行った方が明日は楽なのだが、熊の心配が大きいので、人の多い羅臼平にテントを張る。
 早くも悪雲が羅臼岳を襲う。雲は大分上がってきたが羅臼岳の1,500mから上は雲の中で、羅臼平も陽の射す時間は5割程度だ。テントを張りながら1時間ほどのんびりと過ごし、「飲料水を確保しよう」と羅臼山頂を目指す。山頂付近は30~40人の登山者で混雑し、登りも下りも順番待ちをしなければならない。山岳会の仲間等6人で硫黄岳まで縦走したのは10年前のことだが、2度目の山頂はガスの中で、時々薄くなって期待するものの眺望は全く得られない。
 15人ほどのツアーの後について下ると、「朝、登山道の横に熊が出たのに、あんな所にテントを張ってある。何も知らないなんて、怖いわねえ」と心配している。14時を過ぎると登山者が姿を消し、静寂の中に唯一人取り残された気分になる。
 夕食を早目に済ませ、フードロッカーに食料を保管してテントに戻るとマウンテンバイクの傍らに若者が1人休んでいる。MBの話で盛り上がり、「北海道が気に入っている」と言うので「住まいは何処ですか」と聞くと、「羅臼で漁師をしている。羅臼岳には年に10回近く登る」と言う。雪渓ではMBを担ぎ上げたと言うので「下りは如何するの?」と聞くと、「MBで下る積りだ。スピードが出るしバランスを取るのが難しいので、それなりの経験と覚悟が要る」と言う。「気を付けて」と別れの言葉を交わし、這松の間に消えてゆく。
 15時過ぎには山頂のガスが晴れて素晴らしい天気になる。オホーツク海も太平洋も上空に雲一つ無く、「明日は日本海の低気圧が近付いて天気は下り坂」の予報が嘘みたいに思える。「昼まで持ってくれ」と願いながらシュラフに潜り込む。
 夜、熊のことを思って安眠出来ない。24時を回るとテントの羅臼側が明るいので外を覗くと月が出て仄明るく、全天に星も見えている。

 3時起床。オホーツク海上空には透明な臼雲が棚引いている。雨の心配が無いでもないが、「雨が降り出す前にテントに帰着したい」と、テントを畳む間を惜しんで4時には出発する。
 三ツ峰の鞍部へ上がると色鮮やかなエゾツツジが群れ咲いていて喜ぶ。「写真は帰りだ」と先を急ぐと、テントが1張り見える。「お早う」と声を掛けるが返事は無く、サシルイ岳が近くなった頃、「ヤッホー」とコールが帰ってくる。
 サシルイの鞍部へ予定より25分早く着き、「この調子で歩ければ、知円別をピストンして、余裕を持って下山出来そうだ」と自信を持つ。しかし、羅臼岳には早くももくもくと雲が上がって来て山頂を隠そうとしている。長い雪渓を下ってオッカバケ岳に登る頃には、雲塊が三ツ峰を越えて追い掛けて来る。上空にも雲が広がり、二ツ池で一本立てていると流雲によって陽射しが遮られる。
 南岳の尾根へ上がると硫黄山が近くなり、知円別岳も三角形の姿が大きくなる。道の両側にはナナカマドが盛んで、それを覆うように這松が茂っている。足元を確認しつつ頭上の枝を払い除けて歩くのは結構しんどく、雲の足ほどにはピッチが上がらない。南岳山頂を踏む前に稜線はガスに包まれ、「朝はあんなに晴れていたので半日は持つと思ったんだが、天気の悪化が早い」と気が焦る。
 1,350mの低湿地で最後の休憩を取って気力を養い、「縦走路から山頂までは藪漕ぎだろうなあ。崖の際を上手く歩いて省力出来れば良いが」と思案しながらガスの中に黒く見上げられる知円別分岐の標柱に登り着き、10年前、知円別岳を割愛して強風の中を強引に突破した硫黄山への赤茶けた尾根を眼前にする。
 縦走路の踏跡を辿ってガレを10mほど行ってから、左へ上がって這松の斜面に取付くと微かな跡に気付き、「やっぱり、登る人が居るんだ」と期待しながら進むと次第にはっきりしてくる。踏跡は、這松の間を山頂まで続いている。知円別岳山頂からは、羅臼岳の方はガスに包まれて何も見えない。岩の上に腰を下ろし、大福と乾マンゴー、チョコレートを食べて引返す。
 「このガスは、熊の世界だ。やばいなあ」と「ケロヨーン、ヤッホーッ」と大声を上げながら歩いていると、至近距離から「ヤッホー」と帰ってきて吃驚する。三ツ峰のテントの2人が、南岳のガレ地に咲くシレトコスミレの写真を熱心に撮っている。
 二ツ池付近まで戻るとポツポツと雨が落ちてくる。羅臼平まではまだ1時間以上掛かるので、「テントを畳む時にずぶ濡れだな。パッキングを済ませてから出発すべきだったか」と少し後悔する。視界十mの中、茫と霞む雪渓の上をサシルイ岳へ登って鞍部を越えると真正面から西風が吹きつける。雨がパンツまで浸みているにしては寒さを感じないので、雨具兼ウインドブレーカーの薄い上着だけで歩き、羅臼平へ戻る。
 フードロッカーのデポを回収してテントを畳んでいると5人が下って来る。パッキング中に上半身も濡れ鼠となり、「早く温泉に入りたい」と下山に移る。雪渓は締って固く、昨日より格段に滑り易くなっている。雪渓で15人のツアーと擦れ違い、「膝に負担を掛けないように」とスピードを抑えて下る。


続きを読む

フォトギャラリー:3枚

装備・携行品

みんなのコメント

ログインして登山記録にコメントや質問を残しましょう

登った山

知円別岳

知円別岳

1,544m

羅臼岳

羅臼岳

1,661m

よく似たコース

羅臼岳 北海道

地の涯・岩尾別温泉から羅臼岳を往復

最適日数
日帰り
コースタイプ
往復
歩行時間
6時間20分
難易度
★★★
コース定数
11
羅臼岳 北海道

羅臼温泉から知床半島最高峰へ

最適日数
日帰り
コースタイプ
往復
歩行時間
8時間35分
難易度
★★★
コース定数
40
羅臼岳 北海道

知床連峰唯一の縦走路をたどる

最適日数
1泊2日
コースタイプ
縦走
歩行時間
11時間40分
難易度
★★★
コース定数
54
登山計画を立てる