行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
カーナビには「オーエンス泉岳自然ふれあい館」もしくは「泉ヶ岳スキー場」をセット。その手前にある市民キャンプ場のケ岳大駐車場(無料)を利用。名前のとおりとても大きな駐車場。でも、キャンプ場の利用者などで直ぐに一杯になるとのこと。綺麗なトイレあり。
この登山記録の行程
<1日目>
泉ケ岳大駐車場(07:22)・・・<かもしかコース>・・・泉ヶ岳(08:50)・・・三又路(09:31)・・・北泉ヶ岳(09:57)・・・水場(10:39)・・・三峰山(12:41)・・・蛇ヶ岳(13:23)・・・御所神社・船形山小屋(14:39)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
「泉ヶ岳」は船形連峰の東端に位置する山で三百名山の一つ。標高1,175m。
仙台から向かうと三角形の整った形で明らかに他の山とは異なる存在感を示している。
一方、船形山は船形連峰の主峰で二百名山の一つ。標高1,500m。
宮城県側から見ると船を伏せたような山容から名前がついたと言われているが、本当は、船形権現信仰から生まれた呼称が正しいとのこと。どちらかと言うと、個人的には「船の形」説の方がしっくりくる。なお、登山中に出会った方が「御所山」と呼んでいたので、あとで調べてみると一般的には船形山と呼ばれることが多いが、山形県では昔より「御所山」の名前が用いられているとのこと。いずれにせよ、宮城県・山形県の両方の地元から愛される名山と言える。ちなみに泉ヶ岳も船形山も東北百名山に数えられている。
今回は、その二つの名山を二日かけて縦走する。贅沢な旅だ。
先輩の山仙人からその計画が届いたのが一週間前。いつもの如く仕事がバタついて、準備ができないまま当日を迎えた。そんなこんなで山仙人との山旅が幕を開ける。
<1日目>
「そ~の船を漕いでゆけ お前の手で漕いでゆけ お前が消えて喜ぶ者に お前のオールをまかせるなあ・・・」と心の中で歌を口ずさみながら、常磐道を仙台に向かって深夜北上する。
泉ケ岳大駐車場に到着したのが7時。
良くて曇りだと思っていたのに、梅雨の晴れ間が広がっていた。
が、7時と言うのに既に蒸し暑く、立っているだけで汗が噴き出してくる。これはタフな山になると直感した。
山小屋泊まりなので、宿泊の準備に加えて食料やお酒を詰め込んだ。それに600mlのペットボトルを6本と多めに持ってきた。水場があるのは地図から分かっていたが、水質まで、調べる余裕がなかったので念のため。でも、この暑さだと決して多くはないかも知れない。ずっしりとくるザックを背負って、いざ出発。
泉ヶ岳には、水神コースや滑走コース等大きく5種類のルートが存在する。どれにしようか迷ったが、とりあえず目の前にあった「かもしかコース」を進むことにした。山仙人のシンボルマークが「かもしか」だからというシンプルな理由。
スキー場のゲレンデを直登するコースで、急登が続くため健脚向けのよう。「望むところ!」と言いたかったが、最初の10分で暑さと重力に心が折れそうになった。
ゲレンデを登り切り、尾根伝いに山頂を目指していく。
山頂手前で、小さな赤色の花を見つけた。
梅花のような可愛らしい形をした花。久しぶりに出会ったイチヤクベニバナソウだった。
山頂は、ちょっとした広場になっていた。
休憩しようと足を止めたが、途端に小さな虫が無数に飛び交って、隙があれば腕や足に纏わりついてくる。「ブンブン」と不快極まりない。
飯豊連峰に登った時も虫の大群に襲われたが、東北の山は自然が豊富な分、どこも同じなのだろうか。
庭園のような小道を抜けて山頂の反対側に周る。
雑木が開けて、これから歩く縦走路が見渡せた。
連なる山の奥の方に台形をした山がある。船形山。緑の濃い山肌に白の残雪が眩しく光っている。
「あそこまで歩くのかぁ」。
いつもだと山が見えた瞬間にテンションMAXになるが、あまりの暑さにちょっぴり弱気になってしまった。それもそのはず、頂から眺めるとはっきり分かるが、縦走と聞いていたが、次の北泉ヶ岳もその奥の三峰山も、ほぼ「下山じゃないのか!」と言っても良いくらい、アップダウンが激しく続いている。低山だと甘く見ていると痛い目にあいそうだった。
元気なうちに気合を入れて一気に北泉ヶ岳を目指す。
北泉ヶ岳は泉ヶ岳と違って、眺望がなく少し残念だったので、そのまま足を止めずに三峰山へ向かう。
しかし、この北泉ヶ岳から三峰山の区間が実に長い。
延々と森の中を歩く。虫さえいなければそれも素敵と言えるが、風がなく蒸し暑さで不快指数がまた一段と上がった。
この区間では絶対に立ち寄らなければならない場所があった。
今回のルートで、唯一の水場。
宿泊予定の山小屋には水場がないため、調理用の水はここで確保しておく必要がある。
地図を片手に「そろそろ水場なのに?」と見落とさないよう慎重に歩くが、一向に看板が見当たらない。「おかしいなあ?」と思っていたところに、四畳半ほどの広場に出た。山仙人が「きっとここだな!」と呟き、笹藪の中にあった赤いテープを指さす。
水場を指す看板は何一つない。
山仙人曰く「明らかに休憩するための場所があるということは、きっと水場があるということだ!」とのこと。野生の勘。「凄い! 名探偵!」
藪の中に分け入って山仙人。
しかし、「あったけど、枯れてるなぁ。」と重い一言が返ってきた。
「えーーーっ!まじか」。
急いで自分も藪の中へ続く。
数m入ったところに、幅50cm程の沢があったが、茶色くなった水たまりを残して枯れている。
「やばい!」。
ここで水が取れなかったら少し厄介なことになる。
覚悟を決めようとしたところに、更に先に進んだ藪の中から「あった、あった。ここに大きな沢がある!」と今度は明るい声が聞こえてきた。
行ってみると確かに大きな沢があった。
豊富な水量でこれなら枯れる心配もない。さっそく手で掬って飲んでみる。冷たくてとても美味しかった。これなら飲み水としても問題ない。
ナミナミと持ってきた3Lのパックに水を入れる。
「炊事用の水、無事GET!」。
その代わり、幸せの反動に+3kgの重みがずっしりと肩にのしかかってきた。
「熊の平」を抜けて森の中をどんどん進む。
歩くにつれて、「ブンブン」と群がる煩いお供も確実に増えていく。
ようやく三峰山の斜面にとりつく。
稜線に出てしまえば、「虫も減るのでは?」と期待して、無心で登っていく。
ようやく視界が開けた三峰山の山頂。
360度の素晴らしい眺望。
振り返ってみると、歩いてきた泉ヶ岳と北泉ヶ岳が双耳峰のように霞んで見えた。
三角点にタッチ。
これから向かう先には雄大な船形山が聳えていた。ついに捉えた。
でも、まだ道のりは長い。
山の上部に小さな小屋が見えた。今日の目的地「船形山小屋」だ。
三峰山の頂で少し休憩を入れて、ラストスパートに入る。
ここから先は本格的な稜線歩き。
もっとも、森林限界を超えたアルプスのような岩稜地帯をイメージしていたが、背丈くらいの雑木に覆われた道が続いていた。強風から身を守ることができて良い反面、枝が飛び出していて歩きづらかった。
船のヘリに当たる部分の急登を、息を切らせながら登っていくと、徐々に船底の平らな部分が見えてきた。青空の下に小屋と山頂の標識が見えた。
まるでポスターのような風景。
「ついに到着!」。
霞んで遠くはぼんやりしていたが、微かに巨大な影が見えた。おそらくは、鳥海山。
同じように「心の目」で周囲を見渡すと、蔵王や飯豊山、大朝日岳も浮き上がってきた(ような気がした)。
汗がひくのを待ってから山小屋へ入ってみる。
白いサイディング壁の可愛い山小屋。こんなお洒落な山小屋は初めて見た。入り口の奥にはトイレも設置されていた。
中に入ると、中央の土間に達磨ストーブが設置されていた。寒い日も快適そうだ。
その土間を囲むように板の間があった。脇には小さな階段がかけられていて2階に登れるようになっていた。試しに登ってみると天井は低いが清潔で快適な空間があった。
1階に場所を構えて、早速、宴会の準備。
そうこうしているうちに団体さんがやってきた。一気に山小屋が賑やかになった。
まずは缶チューハイで乾杯!。
山仙人がいつもの如く馴れた手で、料理を作ってくれた。ジンギスカン風焼肉に焼きそば。それを肴に自分の持ってきたウイスキーと山仙人の泡盛でどんどん食が進む。
進むが、、、突然、天井が回り始めた。
ちゃんぽんがダメだったのか、それとも泡盛が極めつけだったのか、あっという間に天国に召されてしまった。
気がついたら床の上に大の字になっていた。
起き上がると、「ご飯炊けたけど食べるか?」と山仙人が一言。
ご飯が炊けるほど意識を失っていたのかと深く反省。
「山歩きで疲労していたんだな!」といじわるそうに笑う山仙人。「いやいや、それは否定しませんが泡盛ですよ、絶対に泡盛!」。
外の方から歓喜が届いてきたので、食事を済ませて外へ出てみる。
ちょうど夕陽が沈みかけていくところだった。
白く霞んだ中に黒い山のシルエットが浮かび上がっている。それをほんのりと赤く染めながら大きな太陽がゆっくりと沈んでいく。山際に届く前に太陽が消えていくということは、山の向こうに日本海が見えているのだろうか。
太陽が傾きかなり肌寒かったが、寒さも忘れて暮れていく空を眺めていた。
完全に暗くなったのを待って、山小屋へ戻り早々に就寝することにした。
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https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=247834
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