行程・コース
天候
曇り/曇り
登山口へのアクセス
マイカー
この登山記録の行程
林道(8:20)不動滝(9:45)分岐(10:10)p2,240(12:00)小川山(13:5014:15)P2,101(15:50)幕営/2,085m(15:55/7:10)松ネッコ(7:30)鞍部(9:55)p1,730(10:40)林道(11:00)終点(11:30)P1,592(12:10)信州峠(12:30)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
早朝(4:40)に自宅を出て中央道を飛ばし、須玉インターで降りて黒森を経て小川山林道に入り、畑の中を通って2㎞行ったゲートの在る分岐点に車を停める(7:40)。
好天だが、昨夜寒冷前線が通ったので風が強く、寒い。瑞牆山の岩の塊が朝日を浴びて白っぽく目を惹く。しかし、何となく気が乗らずゆっくりの出発となる。
ゲートを通って広い転回場のある終点(1,550m、8:50)まで林道を歩く。広場からは真直ぐ沢の方へ降りる道に誘い込まれそうになるが、右寄りの尾根へ登っているのが登山道だ。暫く尾根を登って高度を稼ぐと右への長いトラバース道になり、さらに逆方向ヘトラバル。赤松の目立つ沢沿いの緩やかな登り道になると岩に掛け渡した古い梯子等が現れ、乗っても持つか如何か怪しい物がかなりある。
川原へ降り、対岸に渡って沢沿いに登る。この付近から雪が見られ、水溜りは凍結している(1,740m)。一本立てると、上流に向かって沢の中を風が流れるのでヤッケを着込んでも寒く、軍手を着ける。
丸太橋を渡り、氷結した不動ノ滝を左に見て登り、左岸へ渡り返すと次第に大岩が多くなり、途中の顕著な滝には名前が付けられている。この付近まで登ると一面の雪で真っ白くなり、暫く木立の中を進むと、道が右へ曲がる所に小川山への分岐の道標が立っている(1,920m)。
はっきりした踏跡を拾って歩き、やがて川原に出る。水は涸れて無く、目の前に傾き掛けた古い小屋が出現してちょっと吃驚する(1,985m)。地図には乗っていないが10間×4間もの大きさで、棚の上にはH6.10.22付の新聞が畳んであり、最近でもこの小屋は利用されている様だ。川原の雪の上にザックを下ろし、その上に腰掛けて食事にする。ここは奥の二俣とでも言うべき所で、左の沢沿いに小川山への道があると思われるのだが、踏跡は判らない。
川原の積雪は10cm位で、ここでスパッツを着け、金峰山・瑞牆山からの縦走を繋げるために右手の沢から縦走路上のp2,240を目指す。標高2,050mまで川原の雪の上を楽に歩くと上流は沢筋にも木が生えており、これに倒木が引っ掛かっているので歩き辛く散々苦しめられる。オーバーズボンと毛の手袋も着用して頑張るものの、堪り兼ねて沢底を離れて右手の伐採跡の小木の斜面を、前回歩いた時に様子が判っている瑞牆山へ続く尾根の樹林を目指して登る。積雪が30~40cm位あり夏よりは楽と思われるが、木を掻き分け腕力を使っての登りはリズムもへったくれも無く非常に疲れ、尾根の上に出て下生えに邪魔されずに歩ける様になると心底からほっとする。
いくら遅くても12時には縦走路の分岐点に着くだろうと思って出発したのだが、ちょうど12時に目的のピークに着く。ザックを投げ出し、大木の陰に風を避けてヨレヨレになって休む(12:00~20)。ピーチやオレンジのゼリーが美味しく、蜜柑は冷た過ぎて食べる気がしない。
今回の縦走は尾根の上ばかりを歩くので水場が無く、700ccの魔法瓶に紅茶を詰め、沢の最後の水場でポリタンに1ℓを詰めて備えたのだが、雪が積もっていて水の心配が無い事が判り、ポリタンの水の半分以上を捨てる。
小川山目指して、見通しの利かない樹林の中を只管歩く。傾斜は緩く道も確りしているのだが、沢を詰めて稜線に出るまでにすっかり疲れてしまって上手くペースが作れず、続けて30分とは歩けない。
やっと辿り着いた小川山は数坪の空地の真中に三角点が在るだけで何の変哲もなく、一面の雪に覆われて森閑として寂しさを増す。大日岩からここまでの縦走路には足跡が続いていたが、川端下の金峰山荘から登って来たものらしい。大体止して食事を取り体力の回復に期待する。頂上からちょっと外れた岩の上に立つと金峰山や瑞牆山がよく見え、金峰北面は針葉樹の黒と雪の白が斑模様をなしている
頂上から林の中に向かって数方向の踏跡が伸びている。信州峠へ方向を定めてその中の1つを辿ってブッシュの中へ入り込むと枯枝が塞いでいるが、それと判る踏跡が続いている。天気が好く、進むべき尾根上のピークが木の枝の間から見えるので地図と照らし合わせながら慎重に下る。赤テープや長野営林局の境界見出標が適当な間隔で現れて頼りになると同時に、心細くなりそうな気持ちを支えてくれる。標高2,000mまでは積雪があると思われるので、今日の幕営はこの高度を目途にする。雪上には鹿や兎の足跡が多く見付かる。
標高差350mを順調に下って小岩峰に着く。北面が開けて冬枯れの山裾の間に農耕地が暖かそうに見える。この先の小ピークを標高点2,101mと考えて緩やかに下って登り、「今日は、三角点2,102.3mの南肩辺りまで登って終りにしよう」と考えながら歩く。
地図に拠ると南西へ下る筈なのが北西の方へ尾根が続いている。ともあれ、時間も遅く樹林の中は既に薄暗くなってきたので、出来るだけ近くに雪の積もっている平坦地を探してテントを張り、倒木を地上から50cmの高さに3本立ててテープを張り、動物の夜間の不法侵入に備える。
樹林の中なのと、標高が低いために積雪が数cmしか無く、炊事の水を得るのに一苦労する。コッヘルで掻き取って集めたり、氷結した雪面を割って欠片を集めたりしてゴミ類の混入を少なくしようと努力するが、綺麗な筈の雪も溶かして見るとカラマツの落葉(長さ2~3mm)や苔類がいっぱい入っている。表面に浮かぶ落葉は掬い取り、苔は底に沈むので別の容器に移し変えて極力除くが、完璧には出来ない。「コーヒー用の濾紙が役に立ちそうだ」と思い至る。
炊事の合間や眠る前に検討してみると、幕営地は三角点の手前で標高点2,101mを越した直ぐ先の2,090m付近と思われる。2つ越えた小さなピークが地形図には表記が無く、記載されているピークと勘違いした様だ。
2.5万分の一の地形図は以前から沢登り時に利用しているが、本格的に使用する様になって日が浅いので、「いまだ5万の地図の感覚が残っていて、2.5万の地図と実際に歩いた時の感覚がなかなか一致しないのだろう」と考えて自らを納得させる。
天張るのが遅かったし水を造るのに時間が掛かったが、食事を終えてみればまだまだ長く寒い夜が待っている。夜通しシラビソの梢の泣く音が騒がしい。
翌日、暗いうちに起きてローソクの灯で炊事をする。夜の気温は予想以上に下がり、ポリタンが凍って蓋を開けるのに一苦労する。何時もの事ながら、朝の出発は体が固くてぎごちなく、寒い時には特にこの感が強い、有難い事にザックは前日に比べてずっと軽く感じる。
落葉の弾力を楽しみながら歩くと直ぐに緩い登りとなり、大双里三角点ピーク(2,102.3m)の南端に着く。地図に拠ってはここを‘松ネッコ’と記しているものがある。細長いピークの北端に在る三角点まで踏跡でもあるかと思って少し進んでみるが、猛烈なブッシュと倒木に阻まれる。往復には2時間以上を要すると思われるし、松ネッコの方が標高が高いので三角点を踏んだも同然と考えて前進を止め、西へ向かう。
今日も天気が良く、広葉樹の枝の間からの見通しが得られて助かる。しかし、2,040mのピークで1つ南寄りの尾根(になる前の斜面)に入り込み、途中で気付いて北側の斜面に移るが、下るにつれて更に北方にガレた沢を認め、もう1つ北寄りの顕著な尾根が進むべきルートである事を知る。
シャクナゲの中木の網の目の様な枝振りの中を登り返してガレを横断し、林の中を避けて岩の基部を通って尾根の上まで登り、踏跡らしいのに出合って一息吐く。
1,915mの標高点を目指して高低差の少ない道を送電鉄塔を目標にして進む。微かな踏跡と赤テープでどうにか尾根を辿る様な状態だが、踏跡が途絶えてしまう箇所も多く、読図力と地形判断、最後は山登りで養った勘が頼りの歩きが求められる。この間、針葉樹の下生えに茂るシャクナゲの高木とブッシュに難渋する。
標高点に辿り着くと、明瞭な尾根が南西に伸びて鞍部に達しているのが樹間からよく見える。尾根の下半の北面は伐採され、地図には無い林道が伐採跡を這っている。その先には落葉松と思われる落葉樹に覆われた一段低い尾根が、いくつもの小山を連ねて横尾山まで続いており、今日踏破予定の縦走路の残りの全貌が見える。迷う様な所も無さそうなので大きく安堵する(9:20)。
鞍部へ下る途中の尾根の背の岩には、記号と番号を刻んで赤く着色してある。記号は仏教に関する梵字の様にも見え、瑞牆山頂で目撃したのと同じで修験者か誰かのものと想像される。相当丹念に刻んだとみえて、ちょっとした岩には必ず記号が見られる。‘山屋’でも特殊な人しか歩かない様な道無き尾根を歩いているのも驚きだが、彫り付けるのに要した時間も大変なものだろう。「いったい、何日掛けて歩いたのだろうか?」と気に掛かる。
鞍部に下ると、送電鉄塔建設の為に造成したと思われる林道が終っている。南面の日溜りに風を避けて腰を下ろし、ザックを広げてのんびりと食事を取り、無為の時間をしばし愉しむ(9:55)。
南に建つ鉄塔まで確り踏まれた点検道を辿って標高点1,725mへ歩き、ここから北へ疎林の落葉を踏んで登る。小さい瘤を越えて茨の混生した笹原を小コルヘ下り、饅頭の頭の様なp1,730mへ登る。頂上付近の落葉松はすっかり落葉しているものの、先への見通しは殆ど得られない(10:40)。尾根通しのルートは頂上から北へ100m行ってから北西へ派生した三角点(1,657.5m)の在る尾根に入り込まなければならないのだが、頂上を過ぎて下りになっても一面の笹の原が続いて、尾根への方向が定まらない。
結果的には北西に進むべき処を西北西に進んだ様で、目的の尾根に入れず沢1つ隔てた南寄りの尾根らしい所を下って1,500mのコンターに沿って付けられた林道に出てしまう。途中から間違いに気付くが、地図を見ると林道が尾根を越えて信州側まで続いているのを幸いに、「登り返すのは大変だから、いったん林道に出て国境の鞍部から尾根を辿ろう」と考える。
林道の標高は1,520mで地形図と一致しており、地形から現在位置を確認して一休みする(11:00)。地形図に拠ると林道は北へ伸びて県境の尾根を鞍部で乗り越し、信州側へ続いている。「400mも歩けば鞍部に着くだろう」と気楽に考え、小春日和の静かな林道を長閑に歩く。しかし、道は鞍部へは上がらず、水平な道が次々に尾根を回り込んで西の方へと続き、1.5km程歩いた甲州側の山の中腹で終りになっていて慌てる(1,490m)。しかし、県境尾根までの標高差が100mも無いので、笹が生えていないのを幸いと雑木林の中の落葉を踏んで一登りして尾根の小鞍部へ着く(1,555m、11:40)。
この鞍部から信州峠までは1km強の距離で、踏跡は無いが林班境の切り開きが微かに続いている。雑木林の下生えがほとんど無い落葉樹林の中の日溜りハイキングで、鼻歌も出ようかと言う感じで苦労せずに歩く。
西に向かって緩やかに尾根を登り降りして北に離れた三角点1,592.2mを空身で踏む(12:10)。南西に向きを変え、右下方に信濃川上から信州峠へ通じる道を見ながら程々の傾斜の尾根を下ると、膝下の笹の生える緩い尾根となって細い踏跡が現われ、一下りで信州峠に到着する。
人と全く出会わない2日間の薮歩きの不安と緊張から解放されて舗装された車道に下ると、峠の広場の乗用車を目にして何か馴染めないものを感じる。腰を下ろして休み、違和感が消失するのを待つかの様に暫くぼんやりとしている(12:30)。
峠から黒森までヒッチハイクしようかとも思うが、何故かその気にならずゆっくり歩いていると、若い夫婦の車が停まって乗せてくれる。「昨日は川端下でキャンプした。増富ラジウム鉱泉に入って、今日中に長野へ帰る予定だ」と言う。山にも興味がありそうなので、「奥秩父の外れの小川山にテント泊りで登ったが、尾根には飲料水が無いので雪のあるシーズンを選んだものの、少し時期が早くて予想した程には雪は無かった。登山道の無い尾根を1人で歩き、2日間誰にも会わなかった」と話すと真面目に感心してくれ、少々得意になる。
「この道で良いのか」と聞くので、「黒森から瑞牆山登山口を経て増富へ行く方が近いだろう」と勧め、小川山林道の入口まで乗せてもらい(13:05)、嫌な車道歩きを30分程省く事が出来て喜ぶ。(靴底の固い山靴での舗装道路歩きは足を痛めて最悪である。)序でに、「金山平の蕎麦は美味いそうですよ」と、つい1月前に仕入れた情報を教えてやる。







