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農鳥岳(奈良田ピストン・テント泊)【2023年3月】

農鳥岳( 南アルプス)

パーティ: 1人 (ただのハイカー さん )

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行程・コース

天候

1日目:雨(無風) 2日目:晴れ時々曇り(弱風) 3日目:晴れのち曇り(弱風) 4日目:曇り(弱風)

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 奈良田まで積雪・凍結箇所はなし。
奈良田バス停付近の駐車場に駐車。

この登山記録の行程

【1日目(3月18日)】
奈良田バス停駐車場(8:40)・・・奈良田第一発電所(9:15)・・・休憩所(9:50)[5分休憩]・・・峠前小屋跡(12:00)[10分休憩]・・・大門沢小屋(14:10)

【2日目(3月19日)】
大門沢小屋(5:35)・・・沢の出合縦断地点(9:00)[10分休憩]・・・標高2600m地点(15:50)

【3日目(3月20日)】
標高2600m地点(6:00)・・・大門沢下降点(10:00)[5分休憩]・・・農鳥岳山頂(12:25)[5分休憩]・・・大門沢下降点(13:50)[25分休憩]・・・標高2600m地点(15:55)

【4日目(3月21日)】
標高2600m地点(6:10)・・・沢の出合縦断地点(8:30)[5分休憩]・・・大門沢小屋(9:40)[10分休憩]・・・休憩所(12:50)[5分休憩]・・・奈良田第一発電所(13:25)・・・奈良田バス停駐車場(13:52) 

コース

総距離
約22.3km
累積標高差
上り約2,825m
下り約2,824m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

3月18日から21日にかけて、奈良田からのピストンで農鳥岳に登りました。
当初の予定では北岳に登ってからの白峰三山縦走を考えていましたが、リニア新幹線工事のダンプカーが頻繁に往来する南アルプス公園線の通過ができず、まず農鳥岳を目指すこととしました。そして、稜線に上がったら往復できるところまで行ってみよう…そんな目論見でした。
ところが、想定はしていたものの、大門沢小屋を過ぎてからはフルラッセルと雪壁の急登に苦しめられ、絶望的なほどペースが上がらず、農鳥岳の山頂すら踏めるかどうかという状況に陥りました。
結局、農鳥岳の山頂を踏めたのは3日目の昼過ぎ。撤退のタイムリミットをわずかに過ぎていました。雪山と自然の厳しさと、自分のあらゆる力の小ささを改めて感じたのでした。
しかしながら、大門沢下降点から農鳥岳頂上までの稜線では360度の絶景! 重荷を背負い、雪をかき分け、諦めず登ってきて良かった…心の底からそう思える絶景を農鳥岳は用意してくれていました。これだから山はやめられない。
以下、コース状況を中心にまとめてみます。

●奈良田バス停駐車場から大門沢小屋まで
・南アルプス公園線はダンプカーが数分おきに通るので、歩行時は誘導員の指示に従って注意が必要。ちなみに、開運トンネル方向に進もうとしたが、通行止めだと誘導員に制止された。通っている人もいると思うんだが。。
・この区間はツボ足+ストックで普通に通過できた。八丁坂までは傾斜が比較的緩く雪もほとんどない。時折、丸太橋や徒渉、大きな段差のある岩や倒木などが出てくる程度。ピンクテープ多数あり。
・八丁坂の登りはさほど問題にはならなかったが、下りは落ち葉が大量にあって滑るので慎重に下る必要があった。
・八丁坂(峠)を過ぎると、雪の残るトラバースや凍結箇所、不安定な丸太橋、金属ブリッジ、岩渡りなどが現れ、歩行の難易度は少しずつ上がってくる。

●大門沢小屋から沢の出合縦断まで
・大門沢小屋を出てすぐにアイゼンを装着。小屋のすぐ上は日陰になっているせいか、行き・帰りともにガチガチに凍結しており、緊張を強いられた。
・標高1,800メートルを過ぎると急に積雪量が増して、膝までもぐるようになった。ワカンを装着するか悩ましかったが、急斜面や狭いトラバースもあるためアイゼン+ストックが無難と感じた。
・樹林帯はピンクテープや目印もあるためルートは比較的分かりやすいが、沢の右岸に出るため雪壁を乗り越えたり迂回するような場所もあり、ルートファインディングをする必要があった。

●沢の出合縦断から大門沢下降点まで
・沢の出合を縦断して再び樹林帯に取り付くあたりから、どんどん斜度がきつくなり、膝から太ももまで埋まるほどの積雪で登るのが難しくなっていく。ピンクテープや目印も少なくなる。
・樹林帯でも、雪壁と雪壁の間を急斜面のトラバースでつなぐようなイメージで、谷底まで落ちていきそうなルンゼの通過もあった。ストックではなくピッケル+アイゼンで通した。下りは半分以上でクライムダウン姿勢を強いられた。
・樹林帯を過ぎるとひたすら直登だが、空洞の踏み抜きやステップの崩壊が頻発してスムーズに進まない。膝やピッケルで雪を崩してステップを固め、両足の荷重移動を慎重に行いながら登っていった。
・小屋から下降点まで標準コースタイムでは3時間半程度となっているが、今回は12時間以上かかった。稜線まで上がってテントを張ることは諦め、標高2,600m付近にテントを張り、軽荷で山頂を目指した。

●大門沢下降点から農鳥岳山頂まで
・稜線上の雪はやはり少なく、夏道やハイマツが出ている箇所も多かった。また、吹きだまりでも埋まるのはすね程度までで、標準タイムの2倍程度の時間で歩くことができた。アイゼンでの不安定な岩礫地の通過と東側の雪庇には要注意。
・雪の斜面を登る途中では、おそらく3月18日より前に起きたブロック雪崩と思われる痕跡が視認でき、決して油断はできないと思った。

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フォトギャラリー:72枚

奈良田第一発電所横の開運トンネル。通行止は分かっていたけど、本当に通れなかった。

雨の登山では、屋根付きの休憩所は嬉しい。

林道から右に上がって吊り橋へ。

下に車道橋があるのに…謎の立派な吊り橋。

再び吊り橋。この橋は実用だ。

この吊り橋は揺れて怖かった。

南アルプスは苔が美しい。

丸太橋を何度かわたる。

峠手前にある謎の廃屋。少しだけ雨宿りをさせてもらった。

雪が残るルンゼをキックステップでわたったところ。

このコース名物の水が流れる登山道。厳冬期は凍るのだろうか。

不安定な丸太橋の上に雪が! この日の核心部だった。

奈良田から5時間半で大門沢小屋に到着。

広い冬季開放小屋でとても快適に過ごせた。大門沢小屋さんに感謝。

2日目の朝。雨はやんで月が出ていた。さて、出発しよう。

大門沢の全貌が見えた。

小さな沢を徒渉して巻き道を上がったところ。

標高は1,920メートル。

大門沢に出て右岸を進む。

沢の出合を縦断する地点。小高くなった樹林帯に取り付く。

ペイントとピンクリボンの目印を探しながら進む。樹木の上から溶けた雪が頻繁に落ちてきた。

樹林帯とは思えない斜度になっていく。ワカンやスノーシューではとても歯が立たない。

ピッケルで雪を崩してステップを固めつつ進む。1キロ進むのに数時間を要した。

標高2,600メートル付近でこの日の行動を諦めて幕営。背後には富士山が見えた。

3日目の朝日が昇る。

富士山が朝空に映える。さて、出発しよう。

樹林がまばらになり、斜度がさらにきつくなってきた。白峰南嶺方向を望む。

ハイマツ帯を蛇行する夏道ではなく、尾根状の樹林を突っ切る。

農鳥岳の山体を望む。

大門沢下降点直下の小高い丘に出た。

大門沢下降点へ向け最後の雪壁。ここは雪が締まっていて比較的登りやすかった。

富士山が背中を押してくれた。

テントから4時間かかって大門沢下降点に到達。広河内岳が美しい。

農鳥岳の山頂は向こうだ!

塩見岳が見えた。1月に登ったときよりも白くなっている。

この斜面の左上部にはブロック雪崩と思われる痕跡が視認できた。

最後の登り斜面。

夏道の目印が見える。

西には中央アルプスの山々が。

撤退リミット時刻だが、確実に頂上へ近づいている。
♪あと一歩だ~け、前に進もう♪

山頂をロックオン!

ついに農鳥岳山頂に到達。撤退時刻を20分ほど過ぎていた。

北には間ノ岳と北岳。冬の縦走したかったな。

東には富士山。

南には塩見岳と仙塩尾根。
さて、もう下山しなくちゃ。

下山中。白と青の世界に自分だけの足跡…なんだか誇らしい。

再び大門沢下降点。極上の稜線歩きの時間だった。一休みしてクライムダウン開始。

凄い斜度を登って降りてきたものだ。ピッケル2本のほうが楽。

かすかに自分のトレースが見えた。さようなら農鳥岳、またいつの日か…。

太陽が稜線の向こうに沈んでいった。

ようやくテントが見えてきた。今日も10時間行動だが、充実の一日だった。

3日目の朝。富士山は雲に隠れていた。さて、下界に戻ろう。

この大岩の付近を通過するのが大変だった。

樹林帯でもこの急傾斜のトラバース。

樹林帯でもたびたびクライムダウンを強いられた。

踏み抜くと簡単に大穴が開いて腰まで埋まる。

大門沢の周辺は、この2日でかなり雪解けが進んだようだ。

沢から富士山が見えた。

大門沢の上部を望む。

小さな沢の徒渉点で水を補給。南アルプスの冷たい水は格別。

植生が変化して緑色が増えてきた。

大門沢小屋の手前上部はガチガチに凍っていた。何気に怖い。

再び大門沢小屋に戻って一休み。まるでオアシスに感じた。

小屋より下は、大部分の雪が溶けていた。

鉄パイプでできたブリッジ。

倒木が登山道にかかっている場所も何カ所かあった。

急坂の下りは落ち葉が大量に積もっていて滑りやすい。

この日は気温が高く歩いていると暑かった。ここでも冷たい水でのどを潤す。

最後の徒渉。

人がいない山中に急に立派な人工物(橋)が現れて、なぜか笑ってしまった。

林道ゲートを通過。この付近にも数台の車が駐車できるようだ。

奈良田バス停に帰還。さすがに疲れたが、全力を出し切った充実感がすがすがしい。ありがとう農鳥岳。

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装備・携行品

シャツ ダウン・化繊綿ウェア ロングパンツ 靴下 バックパック スタッフバック
水筒・テルモス ヘッドランプ タオル グローブ サングラス 着替え
地図 コンパス ノート・筆記用具 腕時計 カメラ 登山計画書(控え)
ナイフ ツエルト 健康保険証 ホイッスル 医療品 ロールペーパー
非常食 行動食 テーピングテープ トレッキングポール GPS機器 テント
シュラフ シュラフカバー テントマット スリーピングマット ストーブ 燃料
ライター カップ クッカー カトラリー アウターウェア オーバーパンツ
バラクラバ オーバーグローブ 雪山用登山靴 アイゼン ピッケル ワカン
ショベル プローブ ビーコン アイスアックス ゴーグル ロープ
カラビナ 安全環付きカラビナ ビレイデバイス スリング ハーネス ヘルメット
【その他】 携帯トイレ ランタン兼モバイルバッテリー

登った山

農鳥岳

農鳥岳

3,026m

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よく似たコース

農鳥岳 山梨県 静岡県

白峰三山を一挙に縦走するロングコース

最適日数
2泊3日
コースタイプ
縦走
歩行時間
19時間5分
難易度
★★★
コース定数
69
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