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やっぱりじゃん奥穂高岳(2日目)

前穂高岳、奥穂高岳、ジャンダルム、天狗の頭、間ノ岳、赤岩嶽、西穂高岳、チャンピョンピーク、ピラミッドピーク、西穂高岳独標、丸山( 北アルプス・御嶽山)

パーティ: 3人 (Yamakaeru さん 、ほか2名)

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行程・コース

天候

晴れ

登山口へのアクセス

マイカー
その他: 個人的には上高地と言うと沢渡を使うパターンが多いが、今回は平湯側(岐阜県高山市)の「あかんだな駐車場」を利用。駐車場からシャトルバスやタクシーに乗り換え上高地に向かいます。利用期間は例年4月中旬から11月中旬まで。ゲート付きで24時間利用可能。1泊600円。トイレあり。約800台。バスは、大人片道1,500円・往復2,800円。

この登山記録の行程

穂高岳山荘(04:59)・・・奥穂高岳(05:50)・・・馬の背(06:24)・・・ロバの耳・・・ジャンダルム(07:53)(休憩~08:10)・・・天狗のコル(09:45)・・・天狗の頭(10:34)・・・逆スラブ(10:44)・・・間の岳(11:09)・・・P1(11:57)・・・西穂高岳(12:03)・・・たぬき岩(12:35)・・・ピラミッドピーク(12:47)・・・ピラミッド8(12:47)・・・西穂高岳独標(13:07)・・・丸山(13:40)・・・西穂山荘(13:59)・・・登山口(15:40)・・・上高地BT(15:59)

コース

総距離
約9.6km
累積標高差
上り約954m
下り約2,430m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

<1日目から>
https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=324271

(2日目)
4時に目覚ましよりも早く起床。身体が軽い。
夕食後にそのまま寝たこともあって、寝不足だった体力は完全に回復できたようだった。
下山後のバスの最終時間が微妙だったことから、もう一時間早く行動を開始したかったが、「足元が明るくなってからの方が良い」との先輩の一言で、身支度を整えて5時少し前に歩き出した。4時に小屋の外に出た時には満天の星空が広がっていたが、もう夜明けが近く、徐々に星も去り空が白み始めていた。
小屋のオーナーと思われる方から「おはようございます」と声を掛けられた。今日のコースを聞かれ、「西穂へ抜けます」と答えると、「最近、本当に事故が多いので、十分気を付けて」と言われた。
小屋から奥穂高岳への取り付きはいきなりの絶壁となるので、ヘッドライトで足元をよく照らしながら、慎重に登っていく。
登っている最中に左手側の空から真っ赤な太陽が昇って来た。今日は快晴だ!
奥穂高岳に到着。
雲を纏っていたジャンダルムも恐れ多かったが、岩肌をむき出しにしている今日の姿も荒々しく近寄りがたかった。
6:04、ついにジャンダルムの入り口に立つ。
眼下には霧に包まれた上高地が見えた。遠くには焼岳、乗鞍岳、御嶽山の美しい山々が広がっている。
進行級をして正面を見据える。
朝日を浴びてモルゲンロートに染まったジャンダルムが、「さぁ、挑んで来い!」と言わんばかりに聳えていた。
「おしっ、行こうではないか!」。
一歩を踏み出した瞬間から、約6時間の緊迫した行程が始まる。その間、緊張を切らすことなく、険しい岩場のルートをミスなく歩き続けなくてはならない。昨日のルートもそこそこ危険個所はあったが、ここは日本屈指と呼ばれレベルがまるで異なるため慎重さが必要だった。
奥穂高岳からジャンダルムに向かうと直ぐにその中でも最難関と呼ばれる「馬の背」ゾーンに入る。
足を置く場所さえなく、感覚だけで進んでいかなければならない。
両脇は鋭く切り立っていて、一瞬のミスで死に至るのは明らかだった。
しかし、体力が完全復活したことで、ザックも軽く感じ、身体のバランス感覚もしっかり安定している。そうなると超危険なルートも、アスレチックのようで楽しくて仕方がない。事実、先輩に「ここが馬の背だ」と声を掛けられるまで、全くそこを通過していることに気が付いていなかった。
確かに足が届かない箇所もあり難易度は高かったが、馬の背がこのレベルであれば、全体的に問題なく歩けると確信した。やはり岩場は大好物だ。
続いて「ロバの耳」を通過。徐々にジャンダルムの巨大な壁が近づいてくる。
標高3,163m。まったく凄いやつだ。
お腹が空いたので、ジャンダルムを前に、穂高岳山荘で用意してもらった朝ごはんを頂く。
去年と全くの同じメニューだが、しかし、これがめちゃんこ上手い。特にラップに包まれた鮎の甘露煮が最高で、甘じょっぱさがアウトドアには「くぅー」と唸るほどに美味しく絶品だ。
いよいよジャンダルムの壁にタッチ。
そのまま真正面から登る自信もあったが、一人だけ突出したことをして怪我でもしたら他のメンバーに申し訳ないので、一般ルートを使い左側にトラバースをして後ろ側から登る。
少々、ルートが分かりにくいが、裏側からであれば正直どこからでも登れるほど難易度は下がる。
そして、ついに登頂。
頂にはジャンダルムと書かれたプレートが設置されていた。
楽しみにしていた「天使」は、誰かが落っことす等などして一代目、二代目と世代交代してきたが、ここ最近更にいろいろあって、なんと環境省の指摘で「自然公園法に違反している」と撤去されてしまった。自分もその一人だが、天使に会いたくてここを目指す人は沢山いただろうに残念で仕方がない。裏事情を聞くと、「仕方ないか」と思う反面、もう少し粋な計らいがあっても良かったのではと思う。
「天使が不在で残念ですね」という自分に、ニヤリとする先輩。
ザックからごそごそと何かを取り出して、「じゃじゃーん」。
手に持つは、手作りのジャン天使。実物大サイズで印刷したものにラミネートで補強されている。持ち手も加工されていて、思わず「素晴らしい!」と叫んでしまった。
「じゃじゃーん」はおそらくジャンダルムに引っ掛けた親父ギャグだったと思うが、敢えてそこへのコメントは触れないでおく。笑
爽やかな風。柔らかい陽射し。
ジャンダルムの頂に腰を下ろしてゆっくりする。
目の前には先ほどまでいた奥穂高岳。
左に目線を移していくと、天を突くような槍ヶ岳。更に奥には双六岳等も見えた。日本の名だたる山々が一望できる。最高の場所だった。
これほど離れがたい場所は無かったが、残りの時間も気になったので、後ろ髪をひかれながら、先へ進むことにした。
目的のジャンダルムを達成したとは言え、危険エリアはむしろこれからの方が長い。
激しいアップダウンを繰り返しながら、「天狗のコル」へ到着。
ここで、昨日から高山病で体調を壊している先輩が、リタイヤを宣言した。
致命的だったのは、約1ヶ月前から患っている腰痛がもう限界に達したとのことだった。
天狗のコルからダイヤモンドルートを使い岳沢小屋経由で降りるという先輩。天狗のコルからそそり立つ壁には長い鎖が架かっていて、次のルートを示している。それをちらっと横目に、「ここでチームを分担してよいのか?先輩を一人で下山させて良いのか?」と悩んだが、「一人で降れるから二人で予定通り歩いて来い!」と先輩が強い口調で言ってくれたので、お互いソロでも歩ける熟練者だと、ここから先は二手に分かれることにした。
しかし、この時点で既に1時間以上の遅れが発生しているため、巻き返しを図らないとバスの最終時間に間に合わない可能性がある。
「壁を直登し、足場のない岩を降り、また登る」を繰り返して「天狗の頭」へ到着。
「よくもまぁ、こんなところまで登ったものだ」というくらい、息をつかせぬハードな道の連続だった。それでもまだまだ西穂高岳は遠い。
「逆層スラブ」では、滑りやすいため細心の注意を払って降った。自分が滑ることへの注意もそうだが、不用意に浮石に触れれば、即、落石となり、取り返しのつかない事故に繋がる恐れがあるため、足の置き場にはかなり神経を使った。
続いての難所が「間ノ岳」。これも息が切れる程の高低差があった。
山頂付近には赤い岩がゴロゴロしていて、次の目的地「赤岩岳」よりもよっぽど赤岩岳らしいと思った。
そして、その赤岩岳を抜けて、ついに「西穂高岳」を捉えた。
雲がかなり競り上がってきたため、眺望を隠しつつあったが、それでも、以前、来た時は雨模様だったため、今日は念願の西穂高岳からの景色が楽しめた。
西穂高岳の頂で約40分の遅れを取り戻した。それでもまだ足りないため、軽く水分補給だけをして、そのまま次へと進む。
ピラミッドピークに続き、ついに「西穂高岳独標」へ到着。
さすがにここまで来ると、西穂山荘側から来た登山者も加わり、頂には沢山の登山者が休憩していた。
ちょうど外国人の若いカップルが写真を撮ろうとしていたので、「撮りましょうか?」と英語で話しかけシャッターを押してあげた。まだまだ危険エリアである独標に、軽装で登って来ているのは頂けなかったが、仲睦まじい姿に好感が持てた。
水分補給をして、次のポイントへ向けて移動しようとした時に、先ほどのカップルのうち男性が近寄ってきて、いきなりスマホを手渡してきた。一瞬、「何事か?」と思ったが、画面には翻訳ソフトで「今から彼女にプロポーズをするので、動画を撮影してくれませんか?」と書かれていた。驚いたが、「Sure!」と答えるとニコリと彼が微笑んでくれた。
早速、スマホの画面にある赤いボタンを押して録画を開始。こっちまでドキドキが伝わってくる。
緊張でぎこちない動作の彼。
彼女をエスコートして、無理やり岩の上に座らせるが、明らかに不思議そうな表情をしている彼女。
そして、彼が数歩下がろうとしたところで足を滑らせて一段下の岩へ落ちてしまう。。。
おそらくそう言う演技だとピンときたが、下手すぎてとても落ちたようには見えないため、キョトンとして、「何しているの?」と彼女。
その台詞に苦笑しながら再び近寄る彼を、すかさずズームアップしていくと、彼がいきなりポケットから指輪を取り出し、跪きながら彼女に差し出して「結婚して下さい!」とプロポーズをした。
あまりの驚きに両手で口を押さえ立ち尽くす彼女。我に返って彼に抱きつき、二人でアツい抱擁とキスを交わす。周囲にいた登山者も突然の出来事に驚きながらも、拍手で二人を祝福した。
幸せそうな二人。特に彼女には最高の笑顔の中に涙が浮かんでいるように見えた。キスシーンを更にクローズアップした後、今度は大きく引いて山の風景を全体に入れたところでカット!
プロポーズを終えてスマホを取りに戻ってきた彼が「とっても緊張したよ」と言ったので、「それは自分もだよ」と笑いながら彼にスマホを渡した。彼の望む映像が無事撮れていることを祈る。。。
ちなみに、臨時監督としてちょっと残念だったのが、彼のシナリオが失敗したこと。おそらく彼が岩に落ちたシーンは、心配した彼女が駆け寄ってきて彼を引き上げようとした瞬間にサプライズするつもりだったと推察する。何はともあれ、演技は失敗したが、プロポーズが成功して本当に良かった。
それにしても標高2,701mの西穂高岳独標。荒々しい岩山の頂で外国人カップルのプロポーズと言う人生の特別な瞬間に立会い、それを記録するという大役を任されるなんて、それこそ一生ないようなイベントに加われて光栄だった。
幸せのお裾分けを貰い、心もぽかぽかと温かく足取りまで軽くなった。二人のこれからの明るい未来にエールだ!
丸山まで来ると危険個所は終了し安心できる一般的な登山エリアに入る。長らくキープした緊張を解きホッとする。あとはできる限り加速して、行程を前倒しにしていく。
14時少し前に、西穂山荘へ到着。元々の計画では14:20到着予定だったので、ついに遅れを完全に取り戻した上に前倒しにすることができたことになる。
「あと一息」と、軽く食べものを口に入れてから、ラストスパートで上高地へと降っていく。
岩場のコースから粘土質の登山道へと変わり、すっかり山のモードが一変した。
「上高地まで3.5km」と途中の看板に書かれていたのと、山荘からも上高地が近くに見下ろせていたので、下りは楽勝だと思っていたが、単調な登山道だったということもあり、思っていた以上に長く感じた。見慣れた上高地の散策道が見えた時には、本当にホッとした。
バスターミナルで、待っていた先輩と合流しグータッチをする。
1時間程前に下山してのんびりしていたという。こちらも無事で良かった。
かくして、計画以上に余裕をもってバスにも間に合い、2日間の冒険を終えることができた。
冒険の締めに「平湯の森」で温泉に浸かり2日間の汗を洗い落した後、高山市内の王将でチャーハンと餃子を食べて帰路についた。
数日経っても、いまだ興奮冷めやらぬジャンダルム。
危険なシーンもあったが、天候にも恵まれ、想い出に残る最高の山旅だった。
仲間にも感謝だ。

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装備・携行品

みんなのコメント

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  • 当たり前じゃない日常に感謝。ありがとうございます。

  • 当たり前の日常も非日常も、山に続く道ですね。

  • ジャングルジム感覚で、何度行っても、飽きないですよね~。!

  • タマさん、コメント有難うございます。
    昨年、槍から縦走して抜ける予定が、悪天候で穂高山荘で断念せざるを得ませんでした。今年はそれを繋げるためにジャンを目指したのですが、天気にも恵まれ最高でした。アルパインの靴がボロボロになるどほハードなルートですが、岩場が大好きな自分にとっては何度も歩きたくなるルートでとても幸せな旅でした。でも、帰りついてこそ登山。安全第一ですね。

登った山

奥穂高岳

奥穂高岳

3,190m

西穂高岳

西穂高岳

2,909m

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