行程・コース
天候
天気は快晴、日向は暑いが、日陰は凍える。
稜線に出ると冷たい風が強かった。
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
登山口の行者還トンネル口に有料の駐車場有1000円。そんなに大きくないので、込み合うとあっという間に満車になりそう。
この登山記録の行程
行者還トンネル西口(06:12)・・・奥駆道出合(07:02)・・・聖宝丿宿跡(07:44)・・・弥山小屋(08:32)・・・弥山(08:37)・・・弥山小屋(08:41)・・・八経ヶ岳(09:07)・・・弥山小屋(09:51)・・・聖宝丿宿跡(10:28)・・・奥駆道出合(11:05)・・・行者還トンネル西口(11:39)・・・行者還トンネル西口(11:39)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
先日双門の滝に行った際、勢いで「登ってしまえ!」と息巻いていた弥山・八経ヶ岳。だが現実は甘くなく、自分の体力と技術の低さに打ちのめされ、狼平にすらたどり着けずエスケープした。今年も高い山は冬季閉山(私の中で)になるので、その時の忘れ物を取りに行ってきた。三連休の一日は嫁の接待に使ったので、残り二日をありがたく拝領。
接待後、急いで冬タイヤに履き替えた。おそらく自分史上最速。最近の流れで風呂に入って出かける気持ちが萎えたが、「ほかに行くところもないだろ!」と自分に喝を入れて出発。
新東名~名阪国道~国道169号を経て、登山口へ向かう国道309号に入る。夜の谷間を縫うように進む酷道を登っていくと、ぽっかり口を開ける行者還トンネル。車のライトに照らされるコンクリートの壁は、湿った息をしているかのようで、ホラーゲームさながらの不気味さだ。トンネルを抜けると、弥山登山口の駐車場。すでに半分近く埋まっている。一回1000円。空の端がほんのり青みを帯びてきていたので、到着と同時に準備して出発。
沢沿いの道を、はるか上空に横たわる稜線を見上げながら進む。木々は落葉しており、落ち葉だらけで寒々しい。面白い組み方をした橋を渡り、一気に稜線までの直登が始まる。途中すれ違った、何度も登ったという方が「この登りが一番きついよ」と教えてくれた。ということは、ここさえ登ればあとは楽勝ってことね。また「登りきると風が強い。汗冷えに気をつけて」とも。いやこの傾斜、汗をかかずに登れるはずがない。ゆっくり目にじわじわ高度を上げていくと、急に視界が開け、笹原が風に揺れ始めた。稜線は近い。
アドバイスの通り、風が急に鋭くなり、ほてっていた体が一気に冷えていく。山の風は容赦がない。これが続けば寒さに負けそうだ。
登り切ると、大峰奥駆道と合流。吉野から熊野までの約80km、ロングトレイル好きには憧れの修行の道。いつか歩いてみたいが、私の根性では無理だろうな。
話に聞いていた「ここから楽な道」とは裏腹に、微妙なアップダウンが続く。陰に入ると雪もちらほら。上はもっと積もっているのだろうか。しかし天気は抜群で、対岸の山上ヶ岳の赤く燃えるような山肌や、遠くの海まで見渡せる。朝の光を受けた山々は、まるで神様の衣をまとったような気配を放っていた。修験道の靡には石仏や木札が寄り添い、人々の祈りが今も息づいている。修験者は何を願い、この厳しい道を歩いたのだろう。
聖宝の宿から再び急登。振り返って景色を楽しむ“ふり”をしながら休憩し、じわじわ高度を上げていく。見える山々が増え、海もキラキラ輝いている。陰に入った瞬間、道が雪に変わった。踏み固められて凍った部分も多く、特に木道は完全なアイスバーン。一歩ずつ慎重に体重をかける。チェンスパは持っているのに出すのが面倒で、“これくらいならいけるっしょ”という謎の自信。こういう奴がYouTubeに載るんだよな…。
嫌がらせのような木の階段を上り切ると弥山山頂小屋。大きな「弥山」の看板があるが、肝心の山頂は?と思ったら、左手の鳥居の奥が天河弁財天の奥の院のある山頂だった。立ち入れなさそうな神域の雰囲気。開けた場所からは双門の滝のある谷が見渡せ、「あんな下から登ってきたのか。あの日、元気があってもここまで来れたのだろうか」と不安がよぎった。
視線を左に送ると、弥山から続く奥駆道の先に、鋭く天を突くピーク。あれが八経ヶ岳に違いない。近畿最高峰に早く行きたい!休憩も短めに出発。
八経ヶ岳への道は日陰が多く、完全に雪道。チェンスパを履いた登山者とすれ違うが、私は「まだ大丈夫っしょ」とあいかわらず自信満々。ほんと、こういう驕りが一番危ない。
山頂への道沿いには貴重な植物を守るためのゲートがいくつもあり、進んでは開け、閉めて…と地味に手間がかかる。
山頂直下の岩場は特に滑りやすい。焦らずゆっくり登り、山頂に到着。360度の大パノラマ。深い山々の果てに、銀色に光る海、その上を行き交う船まで見える。こんな対比のある景色、なかなかない。修験者たちも、この神秘的な光景を胸に刻んだのだろう。
山頂は北東の風が冷たいが、海側に突き出た岩場は風が遮られ、ちょうどいいおにぎりスポットだった。足元は谷へ一気に切れ落ち、浮いているような感覚。若者二人がやって来て、昨夜はテント泊だと言う。こんな寒い場所で…。でも確かに夜明けの景色は格別なのだろう。重そうな荷物を背負っていたので、「荷物交換します?」と聞かれ、「重いから捨ててやるわ!」と返しておいた。
名残惜しいが下山開始。登りでは誤魔化せた雪道も、下りは体重がかかるので滑りやすい。二度尻もちをついたところで観念してチェンスパ装備。固い雪にザクッと噛みつく感触が心強いこと。初めから付ければよかったのに、ほんと面倒くさがり屋だ。
滑りの不安が消えると、聖宝の宿まで快調。途中で抜きつ抜かれつしたおじさまも「こんなに雪があるとは」と驚いていた。ほんと、もしもに備える装備は大切だ。
あとは景色を味わいながら奥駆道と別れ、急斜面を慎重に駆け下りて駐車場へ。足が疲れているときほど滑落の危険があるので最後まで気を抜かずに。
念願の八経ヶ岳。落とした忘れ物を、やっと拾いに行けた。さて、明日はあまり天気がよくないらしいが、どこか登れるのだろうか。まだ12時だが…。






















