冒険家の阿部雅龍さんが植村直己冒険賞受賞

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4月22日、第26回植村直己冒険賞(主催・兵庫県豊岡市)が発表され、徒歩による南極点到達をめざすプロ冒険家の阿部雅龍(あべまさたつ)さん(39)が選ばれた。昨年から、自身と同じ秋田出身の白瀬矗(しらせのぶ)の足跡をたどりながら南極点をめざすプロジェクトに挑戦しており、現在は一時中断して日本に滞在している。

記者会見で冒険への夢を語る阿部雅龍さん


阿部さんは、病弱だった少年時代に探検家の伝記を読み、冒険への憧れを抱いた。秋田大学在学中から活動を開始。国内のヒッチハイク旅行を皮切りに、極地冒険家・大場満郎さん(第4回植村直己冒険賞受賞者)の冒険学校のスタッフを経験し、自転車による南米縦断で初めて海外を旅した。その後、浅草で人力車夫として働きながら、米国のコンチネンタルディバイドトレイル(4200km)やグレートディバイドトレイル(1200km)を歩き、アマゾン川のいかだ下り(2000km)、カナダやグリーンランドで北極圏の徒歩旅行を重ね、2019年1月には日本人として初めて単独で「メスナールート」(約900km)から南極点に到達した。

現在挑戦している南極点到達は、約110年前に南極を探検した秋田出身の白瀬矗の足取りをたどる「しらせルート」から南極点をめざすプロジェクト。冒険を始めたときから夢見ていたという旅で、阿部さんはこの挑戦への思いを「夢は引き継がれる」と表現する。ルートは白瀬が命名した大和雪原(やまとゆきはら)から南極点までの約1200km。途中にある南極横断山脈を越え、150kgのそりを引きながら歩く挑戦だ。資金は約7500万円、うち7000万円ほどが飛行機のチャーター代という。講演活動やスポンサー探しをしながら人力車夫としての仕事も続け、資金を集めた。

2019年11月にスタートする目標だったが、飛行機のチャーター便を運行する会社の都合やコロナ禍などで現地への飛行機を飛ばせず、スケジュールを延期。21年11月にようやくスタートした。コロナの影響などでベースキャンプ設置が遅れたうえ、乾燥した雪でそりが滑らず、時速1kmというスローペースで歩く日が続いた。低温や強風、ホワイトアウトといった南極の気象条件に加えて、強風に雪が削られて形成されるサスツルギの凹凸や、大きなクレバスの迂回などでタイムロスが発生。歩き始めて54日目、780km歩いた時点で横断山脈の麓に到達していたが、南極に冬が訪れる1月中旬までに南極点に達するのは難しいと判断し、冒険を中断した。

阿部さんは今年11月に再び南極に戻り、中断した地点からの冒険再開を予定している。記者会見では、「受賞は今後の期待も含めて、と感じています。まだ僕には不釣り合いな大きな賞です。ですから賞に見合う男になるためにも、年末にまた南極に挑戦します」と決意を語った。

 

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