低山・里山で山岳遭難が多発! 2021年の発生件数は過去2番目の2635件

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警察庁が6月9日に発表した統計によると、2021年の全国の山岳遭難は2635件、遭難者3075人(うち死者・行方不明者283人)だった。遭難件数は統計を取り始めた1961年以降、過去2番目となった。日本アルプスなどでは事故が減少する一方、低山・里山などでの遭難が急増している。新型コロナウイルス感染症の流行沈静化を背景に、身近な山へ出かける人が増えたことが原因とみられる。

『令和3年における山岳遭難の概況』(警視庁生活安全局生活安全企画課)より抜粋

1961年以降の山岳遭難の推移を見ると、細かな増減を繰り返しながらも、件数、遭難者数ともに右肩上がりに増え続けている。2018年に過去最多の2661件3129人に達し、翌19年には2531件2937人、コロナ禍に伴う登山自粛で登山者が激減した2020年は2294件2697人で6年ぶりに2300件を下回った。

21年は東京オリンピックが開催されるなど、社会活動の再開に伴って人の流れが活発になり、登山者も山に戻り始めた。アルプスや富士山、八ヶ岳といった山域では前年休業した山小屋も営業を再開したが、宿泊定員を減らすなどの感染対策を講じたこともあり、登山者はおおむね例年より減少したとみられる。

全国の延べ登山者数をまとめるデータはないものの、コロナ前より登山者自体が増加していることを示す資料は見当たらない。にもかかわらず、なぜこれほど遭難が起きるのだろうか。

警察庁の統計資料を見ると、首都近郊での遭難の増加は顕著だ。高尾山や奥多摩のある東京都は157件195人(コロナ前の2019年比51件増/76人増)。遭難件数は長野県、北海道に続いて3番目に多かった。丹沢のある神奈川県は135件153人(同31件増/29人増)。筑波山のある茨城県は19年比で3倍近い32件35人(同21件増/17人増)となっている。日本アルプスや八ヶ岳といった人気エリアが集まる長野県は257件276人(同8件減/14人減)、山梨県は116件134件(同49件減/51人減)でコロナ前より減少したが、近郊山岳エリアの遭難増加がそれを上回ったかたちだ。

コロナ禍をきっかけに、首都近郊の登山者像も変わりつつあるようだ。丹沢・塔ノ岳に立つ尊仏山荘の小屋番、深松悠平さんは「登山者の数はまだコロナ前まで戻ってはいませんが、最近山に登り始めた人が増えていて、昨年は初めて山小屋に泊まりにきたという方が多かった印象を受けます。一方で、コロナ禍で山をやめてしまった人も多く、ベテランの常連さんたちも以前は山頂まで登られてましたが、今は途中までをゴールに設定し山頂まで登られない方もいらっしゃいます」と話す。また、緊急事態宣言解除後の混雑ぶりがたびたび報道された高尾山では、気軽に登れる山ならではのトラブルも。「観光的なエリアから一歩踏み込んだ奥高尾、北高尾と呼ばれるエリアで、地図を持たないなどの準備不足から遭難に発展する事例が目立ちました。花を目当てに来られたような方が深入りしてしまうケースかと思います」と高尾ビジターセンターの石川雄馬さんは振り返る。高尾山は今年もゴールデンウィークごろからコロナ禍以前同様のにぎわいを見せているという。

2021年の遭難者3075人の内訳は、遭難者のうち60歳以上が1486人で全体の約半分にあたる48%を占めている。死者・行方不明者は283人(2019年比16人減)で、60歳以上が203人と全体の72%に達した。

2021年の遭難統計データは、たとえ標高が低い山であっても、遭難のリスクは確実に存在することを示している。気軽なハイキングが暗転するケースが多いことを、中高年の登山者は特に肝に銘じる必要がありそうだ。

 

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