訃報 双六小屋のオーナー、小池潜さんが死去

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双六小屋のオーナーで山岳写真家の小池潜(こいけ・ひそむ)さんが11月29日に死去した。85歳だった。

1938年、岐阜県吉城郡上宝村(現・高山市)に生まれ、父・小池義清さんから双六小屋、わさび平小屋、鏡平山荘を引き継ぎ、その後、黒部五郎小舎も経営。山小屋経営に手腕を振るう一方、双六小屋を頻繁に訪れる山本和雄さん、田淵行男さん、前田真三さんや穂苅貞雄さんといった著名な写真家たちからさまざまな影響を受け、山と溪谷社の『アルパインカレンダー』や『山と溪谷』のグラフに作品を応募、写真家としての道を歩み始めた。その後、長い時間を経て「小池調」ともいうべき独自の作風を作り上げていった。

ホームグラウンドの双六岳でアングルを探る(1983年ごろ。『山と溪谷』2018年8月号より)

「双六岳のことを〈ボタ山〉などと言い、山岳写真を撮るなら槍だ穂高だという時代、担当編集者だった私は小池さんに『朝夕の槍穂高はほかの人が撮っているから、自分の足元の山をもっと撮るべきじゃないか』と勧めた。山に四季があるように、朝晩だけでなく日中でもカメラを出し、おだやかな双六岳をどうにか絵にしようと努力していった。北アルプスのダイナミックな岩稜だけでなく、たおやかな双六岳を絵にすることで、山の多様性を映し出す細やかな写真表現を身に付けていった。その努力が写真集『山の彩り』(山と溪谷社)となり、山岳写真家としての小池潜さんの名声を確たるものにした」(節田重節/元・山と溪谷編集長)

小池潜さんは2014年に長男の小池岳彦さんに山小屋の経営を託し、高山市内の自宅で写真家として集大成となる作品集を制作中だった。

小池潜(こいけ・ひそむ)

1938年、岐阜県吉城郡上宝村(現在の高山市)に生まれ、大学卒業後より双六小屋に入る。写真家としても活躍。春夏秋冬、山に下界にと多岐にわたって風景を捉えた。著書に『愛しき山稜 双六岳をめぐりて』『日本の名峰 雲ノ平・笠・裏銀座』『山の彩り』『奥飛騨 北アルプスと山里の暮らし』(いずれも山と溪谷社)などがある。

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