「日本一の悪路」からの汚名返上！ 十和田山岳振興協議会

■日本山岳遺産候補地を募集中！

「日本一の悪路はどの山だろうか？」
「青森の高田大岳（たかだおおだけ）じゃないかな」

定年退職後、登山を趣味にしていた青森県十和田市の山崎政光さんが白山を訪れたときに耳にしたのが、登山者たちのそんな会話だった。山崎さんは地元の北八甲田・高田大岳について「日本一の悪路」と言われ、ショックを受けた。だが、その指摘は当を得ていた。

「かつては子どもも含めて地元の人たちがよく登っていた山でした。それが平成に入ったころから歩く人が少なくなりヤブ化。まるでジャングルのようになってしまったんです。いい山ですし、登山者の安全のためにも『なんとかしなければ』と整備に動きだしました」（山崎さん）

高田大岳は美しい円錐形で、標高によってブナやアオモリトドマツなどの豊かな植生が見られる。山崎さんは「山容は富士山そっくり。われわれは『十和田富士』だと思っています」と自慢げだ。

そして、愛着ある地元の山の〝汚名返上〟に向け、2014年、初代会長の下山寿さんが所属する十和田山岳会や山崎さんが所属する十和田自然クラブなど地域の山岳団体や旅館組合が集い、十和田山岳振興協議会を設立。十和田八幡平国立公園の特別保護地区内のため行政への陳情を経て、2016年に整備に着手した。

すると登山者が目に見えて増加。整備前5年間（11～15年）では、6～10月の入山者数の5カ月平均は約160人だったが、整備後 5年間（16～20年）は約730人。現在は900人を超えている。

活動を通じて珍事もあった。会が高田大岳の標高を測ったところ、当時の国土地理院の地図に記された高さと異なることが発覚。山頂の位置が変更され、標高は7m高い1559mにとなった。

会は、毎年6月に登山道整備を続け、道標も設置。近年では、周辺の山の整備にも動きだしている。2代目会長を務める山崎さんに精力的な活動の原動力を尋ねると、「地元の山だから。仲間がいるからできるんですよ」と謙虚に語った。

★日本山岳遺産認定地 詳細： 高田大岳［ 青森 ］十和田山岳振興協議会 （2019年）

（山と溪谷2022年10月号より転載）