冬山特有の山岳遭難が増加中。十分な準備と慎重な行動を! 島崎三歩の「山岳通信」 第289号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年1月13日に配信された第289号では、アイスクライミング、バックカントリーなど、冬山ならではの山岳遭難が発生していることを挙げて、十分な準備と慎重な行動を促している。

 

1月13日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第289号では、期間中に起きた11件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 12月26日、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳で、アイスクライミングのために3人パーティで入山した21歳の男性が、南沢大滝をクライミング中にバランスを崩し転落・負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 12月29日、北アルプス白馬乗鞍岳の鵯峰で、2人パーティでバックカントリーをスノーボードで滑走中していた31歳および34歳の男性が、鵯峰東側斜面を滑走中にルートを誤り行動不能となる山岳遭難が発生。県警山岳遭難救助隊員、大町警察署山岳遭難救助隊員及び北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して2人を発見・救助した。

  • 12月30日、八ヶ岳連峰の横岳で、アイスクライミングのために2人パーティで入山した34歳の男性が、大同心付近をクライミング中に転落・負傷する山岳遭難が発生。岐阜県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 1月1日、八ヶ岳連峰の赤岳で、単独で入山した39歳の男性が、山頂から下山中にアイゼンを岩に引っ掛けて転倒・負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪広域消防特別救助隊員及び諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 1月1日、八ヶ岳連峰の横岳で、4人パーティで入山した67歳・66歳・62歳の男性および67歳の女性が、石尊稜を登山中、日没と疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員らが出動して4人を救助した。

  • 1月2日、八ヶ岳連峰の赤岳で、単独で入山した48歳の男性が、下山中に岩場で滑落する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員及び諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊が出動し、富山県警ヘリが斜面に倒れている男性を発見・救助したものの死亡が確認された。

  • 1月2日、北安曇郡小谷村の虫尾沢で、バックカントリスキーのために単独で入山した34歳の男性が、虫尾沢を滑走中にルートを誤り、行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊及び北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊が出動して男性を救助した。

  • 1月3日、佐久市根岸の虚空蔵山で、2人パーティで入山した78歳の女性が山頂付近で足を滑らせて転倒・負傷する山岳遭難が発生。佐久広域消防署員が出動して女性を救助した。

  • 1月7日、北アルプスの西穂高岳で、2人パーティで入山した54歳の男性が新穂高ロープウェイに向けて下山中、雪庇を踏み抜き滑落・負傷する山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊員等が救助活動を行い、富山県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス西穂高岳での遭難救助現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)1月10日付

  • 1月8日、安曇野市豊科の光城山で、単独で入山した83歳の男性が下山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。松本広域消防局員が出動して男性を救助した。

  • 1月8日、北アルプスの八方尾根周辺で、バックカントリースノーボードのために2人パーティで入山した31歳および34歳の男性が、帰宅せず行方不明となっている山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊が捜索活動を行っている。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

令和5年1月1日から9日まで県内では、8件の遭難が発生し、八ヶ岳連峰、北アルプスでの遭難が多発しました。主な態様では、アイスクライミング中の転落、長時間の行動による疲労、下山中の滑落、バックカントリーによる道迷いなどです。うち1件は行方不明になっています。

バックカントリーエリアは、管理されたスキー場内と違い自然の山中を滑走するため、その魅力とリスクは表裏一体であることを忘れてはいけません。滑走に夢中になるあまり、登り返しの分岐点を見過ごしたり、コースとなる尾根や沢を間違えて道迷いになるケースが多く見受けられます。
特に入ったことのないエリアでは、SNSやインターネット情報のみを参考にすると、ルートを誤ったり、方向や現在地を見失うなど、リスクを伴います。入山前には、仲間全員でコース全体の地形や方角等を把握し、行動中はこまめに現在地を確認するようにしましょう。
山中では天候や気温、標高によって大きく状況が変化します。単純な滑走能力だけではなく、安全に行動するための総合的な判断力と経験が必要になります。バックカントリースキー・スノーボードに行かれる方は、雪崩対策装備を必ず携行し、慎重な行動を心掛けてください。

登山についても、気象判断は非常に重要です。悪天候の際は、救助活動も長期化する場合があります。万が一に備えて、ツエルト、防寒着、着替え、ストーブ、非常食等のビバーク装備を携行しましょう。また、事前に天気予報等を確認し、登山を中止することも検討しましょう。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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