たおやかな稜線をたどり、眺望と湿原探索を楽しむ熊野長峰ハイキング

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山形県鶴岡市の南西部に位置する熊野長峰。山頂部からは庄内平野や鳥海山の眺望がよく、鶴岡市民をはじめ、多くの人に親しまれています。ゆったりと登って展望を楽しんだ後、山頂周辺の湿原をめぐるコースをご紹介します。

写真・文=斎藤政広

大広地区からの熊野長峰

大広地区からの熊野長峰

大谷貯水池の登山口からスタート。右手に池の水面を眺めながら進みます。植林の杉林がありますが、まもなく広葉樹の気持ちのよい山道になっていきます。尾根道に入って、ややきつい階段状の登りになりますが、木々とあいさつを交わしながら元気をもらって歩いていきましょう。

静かに水をたたえる大谷貯水池

静かに水をたたえる大谷貯水池


周囲からは野鳥たちの声が聞こえ、すがすがしい雰囲気。春の女神ギフチョウや初夏にはゼフィルスと呼ばれるミドリシジミの仲間のチョウたちに出会えることもあります。

ギフチョウ

ギフチョウ


まもなく十字路へ出るので、左に折れて、ゆったりとした山頂部への道に入っていきます。周囲に広がる木々のみずみずしさを味わいながら、ゆったり歩きましょう。

十字路分岐

十字路分岐

山頂間近のなだらかな尾根道

山頂間近のなだらかな尾根道


山頂に出ると視界が開け、西側に小さな山脈、庄内の小アルプスと呼ばれる荒倉山から高館山の山脈が屏風のごとく展開します。背後には日本海が広がっています。北面に目を移すと庄内平野が広がり、鶴岡市街の遠方には鳥海山が望めます。水田に水が張られる時期は、水面が反射して水上都市が誕生したようです。

横に長い山頂部には展望所やベンチ、展示板があるので、景色を楽しみながらゆったりとお弁当を広げるのもよいでしょう。

明るい熊野長峰の山頂

明るい熊野長峰の山頂

荒倉山から高館山へと続く山並みと、後ろに日本海

荒倉山から高館山へと続く山並みと、後ろに日本海

少し視線を北にずらして、庄内平野と鳥海山遠望

少し視線を北にずらして、庄内平野と鳥海山遠望


山頂で展望を楽しんだ後は、湿原の探索に向かいます。熊野長峰の山頂周辺には湿原が点在しており、貴重な動植物の生態が確認されていて、熊野長峰湿原群として鶴岡市の天然記念物に指定されています。

山頂を後に石の祠が点在する所から杉林の道に入って行きます。龍頭ヶ池で、ミズバショウの群落が見られます。池と名がついていますが、湿原といった感じの場所です。

龍頭ヶ池のミズバショウ

龍頭ヶ池のミズバショウ


龍頭ヶ池を抜けて、一度林道に合流。右手に折れて林道を離れ、今度は龍尾ヶ池に出ます。木道が整備された湿原を横断して、往路で通った尾根道の十字路に出ます。ここからは往路を下ってもよし、または左に折れてやや森が深い道を選んで下るのでもよいでしょう。

木道が続く龍尾ヶ池の湿原

木道が続く龍尾ヶ池の湿原


ハイキングの後は、大谷貯水池の周囲でもう少しゆっくりしていくのもよいかもしれません。トンボやハンミョウなどの虫たちが歓迎してくれるでしょう。

今回紹介したコースは、ミズバショウが見られる春から初夏のほか、秋もよい時期です。ミズバショウの時期は年によって前後する場合があります。

ショウジョウバカマ

ショウジョウバカマ

ウスイロオナガシジミ

ウスイロオナガシジミ

MAP

大谷貯水池~十字路分岐~熊野長峰~龍頭ヶ池~龍尾ヶ池~十字路分岐~大谷貯水池
コースタイム:約1時間35分

プロフィール

斎藤政広(さいとう・まさひろ) 

横浜市生まれ、山形県酒田市在住。東北のブナの森や山々をフィールドに歩き、山麓での多彩な自然との出会いを楽しんでいる。おもな著書に『鳥海山・ブナの森の物語』『鳥海山・花と生きものたちの森』『鳥海山・花図鑑』(無明舎出版)、『森のいのち』(メディア・パブリッシング)、『山と高原地図 鳥海山・月山』(昭文社)などがある。

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