トワイライトタイムの涼風と夜景を求めて六甲山上プチ縦走

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連日の猛暑に、山の植物たちもぐったりしてはいないだろうか。まだまだ残暑が続きそうな季節だが、六甲の山上に涼風が立ち始める頃合いに、トワイライトタイムの雰囲気と夜景を楽しむハイキングプランを紹介しよう。公共交通機関でアクセスし、ある程度標高の高い地点から歩き始められる、六甲山ならではのコース設定だ。

写真・文=根岸真理

六甲ケーブル山上駅からのすばらしい夜景
六甲ケーブル山上駅からのすばらしい夜景

芦屋の奥座敷、奥池までバスで移動。標高500mまで一気に上がる形だ。奥池集会所前で下車し、まずは奥池へ。江戸時代、天保年間の頃、水不足に悩んでいた山麓の村々のために、20年の歳月をかけて谷を埋めて築かれた人造の池である。池のほとり、道路のカーブ地点から北西へ向かう踏み跡をたどる。草が繁茂する時期は少々取り付きがわかりづらいので注意。芦有ドライブウェイを横切り、山頂方向への道を登る。

約1時間の急登で、山上へ向かう県道16号に飛び出す。しばらくは車道歩きとなるが、すでに標高は700mを超え、日が傾けば日影も多く歩きやすい。夏の終わりごろ、このあたりの道の脇にはヒヨドリバナが咲いて、アサギマダラの姿を見ることもある。

車道脇に咲くヒヨドリバナとアサギマダラ
車道脇に咲くヒヨドリバナとアサギマダラ

六甲山地で多数のアサギマダラの渡りを見るのは例年秋の10月ごろだが、夏にもちらほらと見かけることがある。やがて車道の左側に赤い鳥居が見えてくる。くぐると山道へ入り、登り切ったところが六甲山神社(むこやまじんじゃ)、石の宝殿(いしのほうでん)。

車道に面して鳥居が立ち、ここから六甲山神社への山道がはじまる
車道に面して鳥居が建ち、ここから六甲山神社への山道がはじまる

この付近は芦屋川、住吉川、逆瀬川の源流となっており、古くから雨乞いのご利益があるとして信仰されてきた。境内の東側からは遠く白山が見えることもあるといい、御祭神に菊理姫命(白山比咩大神)を祭る。

石の宝殿には、今でも渇水が深刻になると麓のまちから水道局の職員がこっそりお詣りに来るとか・・・
石の宝殿には、今でも渇水が深刻になると麓のまちから水道局の職員がこっそりお詣りに来るとか・・・

社殿をあとに、西へと進む。車道に合流すると、六甲最高峰直下の一軒茶屋前までは15分ほど。大きな屋根が印象的な休憩所兼トイレがあり、その北西側から最高峰の山頂へ向かう新しい道が作られている。

数年前の眺望伐採ですっかり眺めがよくなった六甲最高峰は、さすがの人気スポットだけあって平日でも人がいないことはあまりないのだが、夕刻に来ると静かな景色を独り占めできる確率は高い。早くも夕景となりつつある西側には、これから向かう六甲ガーデンテラスが見える。

六甲最高峰からは北側に丹波の山々が一望できる
六甲最高峰からは北側に丹波の山々が一望できる

最高峰からガーデンテラスまでは六甲全山縦走路をたどる。意外とアップダウンがあるが、登山道は曲がりくねった車道を突っ切って直線的に延びており、車道を行くより歩きやすくて近い。ほぼ尾根道なので、日が傾けば風も涼しく、景色を楽しみながらのんびりと行こう。

ガーデンテラスの一つ手前のピークからは、大阪の街並みと大阪湾が一望
ガーデンテラスの一つ手前のピークからは、大阪の街並みと大阪湾が一望
ガーデンテラスの見晴らしの塔は夕陽を眺めるのに最高のスポット
ガーデンテラスの見晴らしの塔は夕陽を眺めるのに最高のスポット

ガーデンテラスからは六甲ケーブル山上駅行のバスを利用する。バスダイヤを確認してから、夜景へと移ろっていく景色と、山上ならではの心地よい夜風をたっぷりと堪能していこう。

六甲山上各所からは、阪神間から紀州まで、大阪湾一帯に広がる広大な都市圏の灯りが一望できる(冒頭写真)。これほどゴージャスな夜景が一望できる山というのは、じつはめったにない。また、六甲ケーブルの最終は21時10分。ケーブルカーで下山できるというのも、安心して夜の山を楽しむ重要な要素。気軽にトワイライトタイムと夜景が満喫できる六甲山へぜひどうぞ。

そろそろ、秋を告げる花も咲き始める頃合い。日が短くなる秋口は、夕景を見るにも適した季節。今年は春先から植物の開花時期が例年と違っていたり、気象がおかしい感じであったが、秋の訪れはどうだろう。

六甲山に秋の訪れを告げる花の一つ、ヤマジノホトトギス
六甲山に秋の訪れを告げる花の一つ、ヤマジノホトトギス
山道の足もとにひっそりと咲くツルリンドウ
山道の足元にひっそりと咲くツルリンドウ

今回は日没前後のプランなので、土地勘がない、あるいは夜間行動に自信がないなら、日没前にガーデンテラスに着くようにスタートすれば、気軽に歩くことができる。歩きやすく整備された縦走路ではあるが、真っ暗だと分岐を見落とすなど、間違えやすいポイントもあるので、無理のない計画が重要。もちろん、ヘッドランプなど基本装備は忘れずに。

※往路のバス便は、阪神芦屋、JR芦屋、阪急芦屋川の各駅から芦屋ハイランド行きに乗車。1時間2便。同じバス停から有馬温泉行きを利用すると、標高700mの宝殿橋バス停までバスで行ける。ただし土日祝日のみで、午後は12時台、14時台、16時台の3便のみ。

MAP&DATA

コースタイム:奥池集会所前バス停~芦有ドライブウェイ~石の宝殿~一軒茶屋前~六甲最高峰~六甲ガーデンテラス:約3時間30分

ヤマタイムで周辺の地図を見る

プロフィール

根岸真理(ねぎし・まり)

六甲山西端の神戸市須磨区生まれ。現在は六甲山東端の宝塚市在住。アウトドア系を得意とするフリーライター。親に連れられ、歩き始めると同時に須磨の山に登っていたため六甲登山歴60年。アルパイン歴は約30年。 神戸新聞「青空主義」欄で月に1回六甲山の情報(六甲山大学)を発信中。主な著書に『六甲山を歩こう!』『六甲山シーズンガイド春夏』『六甲山シーズンガイド秋冬』など。兵庫県立六甲山ガイドハウスで「山の案内人」ボランティア活動中。

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