冬は温暖で晴天率の高い播州の名山へ。絶品の牡蠣を産する坂越から赤穂・雄鷹台山へ縦走

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摂津・播磨・但馬・丹波・淡路の旧五国からなる兵庫県。面積も広大だが、地域性も食文化も多様で、各地に個性的な山がたくさんある。なかでも、旧播磨の国は、穏やかで美しい瀬戸内海に近く、冬は特に温暖で晴れる日が多いのが特徴だ。日頃は六甲山がホームマウンテンの筆者だが、冬場は播州方面の山に行くことが多くなる。そんな中から、牡蠣の名産地にある絶景の縦走コースをご紹介しよう。

写真・文=根岸真理、カバー写真=雄鷹台山から海側の展望(写真=fukumona)

今回紹介する雄鷹台(おたかだい)山は、兵庫県西部の赤穂市に位置する。起点となるのは、赤穂市東部にあり、レトロな町並みとおいしい牡蠣の産地として知られる坂越(さこし)。今回のコースはショートコースなので、山とは反対方向だが、千種川の対岸にある坂越の古い町並み方面へ寄り道をしてみよう。

JR赤穂線坂越駅から南東方向へ直進、坂越橋を渡って、魚のイラストがかわいらしいトンネルをくぐって坂越大道(だいどう)方面へ。

メインストリートの坂越大道は、カフェや雑貨店、酒蔵などが点在するレトロなエリア
メインストリートの坂越大道は、カフェや雑貨店、酒蔵などが点在するレトロなエリア

坂越湾に面した海沿いの道を左へ進むと大避(おおさけ)神社。高台に建っており、参道の途中にある展望広場からは坂越湾が一望できるので、ぜひお詣りしていこう。坂越大道を引き返し、木戸門跡を右へ。旧坂越橋を渡って西山寺登山口からまずは後山をめざす。送電線に沿った尾根道を登り、登山口から10分ほどで坂越の海が見える。

南東側には坂越湾とその沖合の家島諸島が見える
南東側には坂越湾とその沖合の家島諸島が見える

広大な内海である瀬戸内海は、冬でも穏やかに凪いでいることが多く、多くの島々が「多島美」の景観を作り出しているのが特徴だ。また、兵庫県でも屈指の清流として知られる千種川が眼下をゆったりと流れており、赤穂の市街地と河口部付近を見渡すことができる。

眼下に見下ろす千種川の清流は、名水百選にも選ばれている
眼下に見下ろす千種川の清流は、名水百選にも選ばれている

樹林の中を登っていくと、最初のピーク、標高251mの後山だ。山頂に三角点があり、海を見渡すことができる。さらに、ゆるやかにアップダウンを繰り返しながら、標高253mの雄鷹台山へ。

雄鷹台山から海側の展望(写真=fukumona)
雄鷹台山から海側の展望(写真=fukumona)

雄鷹台山の山頂は、広々としていて、ベンチなどもたくさんあり、休憩するのにぴったり。目の前に千種川の河口と海、そして意外なほど近くに小豆島が見える。景観をたっぷりと堪能したら、大師堂登山口をめざして下ろう。

海を眺めながら歩けるナイスビュートレイル(写真=fukumona)
海を眺めながら歩けるナイスビュートレイル(写真=fukumona)

ずっと展望に恵まれた気持ちのいいトレイルで、道の両脇にはドウダンツツジの大群生が。初夏の花の季節や、秋の紅葉のころにも、また訪れたくなる。

〉ドウダンツツジの群落の中を行く(写真=fukumona)
ドウダンツツジの群落の中を行く(写真=fukumona)

〉ドウダンツツジの群落から河口方面(写真=fukumona)
ドウダンツツジの群落から河口方面(写真=fukumona)

また道沿いには、何合目なのかを書いた看板があるので、距離感がわかりやすくてありがたい。九合目と八合目の間に、「八合五酌」の表示があるのがお茶目だ。ぜひ探してみよう。ちなみに、以前は徳利が吊るしてあって、お酒が好きな同行者に好評だった。

〉2018年1月ごろの「八合五酌」
2018年1月ごろの「八合五酌」

二合目まで降りて来ると、「腰掛岩」という岩場があり、石仏が祭られている。標高は80mほどだが、なかなかの絶景スポット。ここを過ぎるとほどなくで大師堂があり、石段を下れば登山口に降り立つ。登山口からは、JRの線路を越えて、右へ進むとJR赤穂線播州赤穂駅だ。

ちなみに駅から南に赤穂城跡がある。駅から徒歩20分程度なので、時間があればぜひ訪れてみよう。また、赤穂の街中には、名産の牡蠣が味わえる店もいろいろ。冬が旬の牡蠣と、赤穂のブランド野菜である赤穂塩ネギの両方が味わえる蕎麦など、地元グルメもぜひ味わってみてはいかがだろうか。

MAP&DATA

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参考コースタイム

坂越駅~大避神社~西山寺登山口~後山~雄鷹台山~大師堂登山口~播州赤穂駅~赤穂城跡~播州赤穂駅:3時間40分

プロフィール

根岸真理(ねぎし・まり)

六甲山西端の神戸市須磨区生まれ。現在は六甲山東端の宝塚市在住。アウトドア系を得意とするフリーライター。親に連れられ、歩き始めると同時に須磨の山に登っていたため六甲登山歴60年。アルパイン歴は約30年。 神戸新聞「青空主義」欄で月に1回六甲山の情報(六甲山大学)を発信中。主な著書に『六甲山を歩こう!』『六甲山シーズンガイド春夏』『六甲山シーズンガイド秋冬』など。兵庫県立六甲山ガイドハウスで「山の案内人」ボランティア活動中。

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