街は夏日でも山は極寒の可能性も・・・正しいレイヤリングで気象遭難を防ごう!
厳しい夏の暑さもようやく和らいできていよいよ秋山シーズンが到来。涼しく快適で景色もいいこのシーズンに山の予定を立てている人も多いのではないだろうか?しかし、山麓の街は夏日でも、山の上では氷点下ということも珍しくない。気候の変化による遭難事故が多発するのが、この時期の登山の特徴だ。正しい「重ね着=レイヤリング」を学んで、秋の魅力的な山を満喫しよう!
文・写真=高橋典孝
気象遭難が多発する秋山の落とし穴
① 山の上は冷え込む!
街ではまだまだ暑さを引きずる日も多い季節だが、山の上ではしっかりと秋が訪れている。秋になると山上では急激に気温が低下することがあり、夕方以降の冷え込みもとても強くなる。
② 天候の変化
秋晴れという言葉もあるように、秋は晴れの日が多いイメージだが、秋雨前線が停滞して冷たい雨が降ったり、温かい空気と冷たい空気が入り乱れて急な天候の変化も起こり得る。体が濡れることで低体温症のリスクが高まるの注意が必要だ。
レイヤリングとは?
「レイヤリング」とは衣類の「重ね着」のこと。
ただし、上記のように秋は、麓の街が温かくても山の上はまるで冬のように冷え込む可能性がある。とはいえ、ただ厚着をするだけだと日中天気に恵まれた場合には汗だくになり、そのあとに汗冷えをおこす原因になりかねない。雨による体の濡れからも、汗による体の濡れからも身を守り快適に歩くために、速乾性に優れた登山用の衣類を状況に応じて、着たり脱いだりと、こまめにレイヤーを調節しながら行動しよう。
一般登山のレイヤリングは大きく分けると4つに分類できる。
- ①ベースレイヤー
- ②ミッドレイヤー
- ③アウターレイヤー
- ④保温着
各レイヤーに関して、秋山ではどのようなウェアを選択するべきか紹介しよう。
秋山におすすめのウェアをレイヤーごとに解説!
① ベースレイヤー
秋山登山では気候の変化が激しく、特に泊数を重ねる登山では気温の予測が難しいのが現実だ。そんな状況で重宝するのが、メリノウールと化学繊維を混紡したベースレイヤー。化学繊維(ポリエステル)の速乾性によって、汗や雨で濡れても体が冷えるリスクを軽減し、メリノウールの保温性が外気の冷たさから体を守ってくれる。この2つの素材の長所を組み合わせたベースレイヤーは、秋の登山にぴったりの装備といえるだろう。サイズはなるべくぴったりしたものを選ぶことで保温性と汗取り効果が発揮されやすい。おすすめしたいのはティートンブロスの「アクシオ 3D L/S」だ。
TetonBros.(ティートンブロス)
アクシオ 3D L/S(Men)

アクシオ 3D L/Sは43%メリノウール、57%ポリエステルとメリノウールの保温性とポリエステルの速乾性のバランスが秋の登山にちょうどいい。天候に振り回されることなく安心して着用できるうえにメリノウールの抗菌防臭作用があるので、においの心配も少ないのがうれしい。
| 価格 | 15,400円(税込) |
|---|---|
| 重量 | 210g(Mサイズ) |
② ミッドレイヤー
ベースレイヤーの上に着る「ミッドレイヤー」は、標高や山域、秋の深まりによって気候・気温が大きく異なるためチョイスが難しい。本格的に秋が深まる前の低山であればまだまだ登っていて大汗をかいてしまうこともあるだろう。
私が推奨したいのは、通気と速乾、保温性に優れたウェアと薄手軽量のウインドブレーカーの合わせ技だ。前者はベースレイヤーが吸い上げた汗をすばやく拡散・放出しつつ、保温性も高いものがいいだろう。おすすめはマウンテンハードウェアの「エアメッシュロングスリーブクルー」だ。ウインドブレーカーは、次に解説するアウターレイヤーで代用することも可能だが、100g前後のウインドブレーカーを1着持っていると、脱ぎ着がしやすく、急に風が吹いてきたときに対応しやすい。私のおすすめはパタゴニアの「フーディニ ジャケット」だ。この組み合わせは、秋口、春先の気温や体感温度が変わりやすい季節にぜひおすすめしたいレイヤリングだ。
MOUNTAIN HARDWEAR(マウンテンハードウェア)
エアメッシュ ロング スリーブ クルー

速乾を促すための8本の角をもった中空糸「オクタ」を使ったミッドレイヤーにぴったりの一着。ベースレイヤーが吸い上げた汗をすばやく拡散・放出するうえに、通気性も高いのでオーバーヒートしてしまうこともなく体感温度を一定に保ってくれる効果がある。
| 価格 | 9,900円(税込) |
|---|---|
| 重量 | 83g(Mサイズ) |
Patagonia(パタゴニア)
フーディニ ジャケット

ウインドブレーカーは風が強くなったときにサッと取り出せる軽量、コンパクトなものが便利だ。パタゴニアのフーディニ ジャケットは105gと軽量なうえにコンパクトに収納できるのでおすすめ。
| 価格 | 15,950円(税込) |
|---|---|
| 重量 | 105g(Mサイズ) |
③ アウターレイヤー
雨の多い日本の気候において防水透湿素材を使ったレインウェアの携行は必要不可欠。ただし、一概に防水透湿素材といっても運動時の湿気を比較的逃がしやすい高通気タイプのものから耐水性の高さに特化したものまでさまざま。季節や登山スタイルによって選ぶものも変わるが、夏と違って冷たい雨風にさらされることが多い秋の登山においては、高い耐水性と耐久性を兼ね備え、充分な透湿性をもったゴアテックス素材を用いたレインウェアを選ぶと間違いない。価格こそ高いが、1枚持っていれば万能的に使えるアウターレイヤーとなる。ここではモンベルのレインウェアのロングセラーである「ストームクルーザー」をおすすめしたい。
mont-bell(モンベル)
ストームクルーザージャケットMen’s

ゴアテックス3レイヤーを使用し卓越した防水性、透湿性をかなえたレインウェア。軽量・コンパクトながらもしっかりと雨風を防ぐので、秋の山行にぴったりの一着だ。このストームクルーザーに採用されているGORE C-Knitバッカーテクノロジーは雨具とは思えないしなやかさで、寒さが厳しい場合のウィンドブレーカーとしても活躍する。
| 価格 | 28,600円(税込) |
|---|---|
| 重量 | 254g(Mサイズ) |
④ 保温着
場合によってはとても厳しい寒さに見舞われることもある秋の山行において、たとえ日帰り登山であっても防寒着は必ず携行しよう。
保温着は主に「ダウン(羽毛)」と「化繊綿」に分けられる。ダウンは水鳥からとれる羽毛で軽量ながら嵩高性に優れ、持ち運びではとてもコンパクトになりながらも使用時にはしっかりと膨らみ寒さから身を守ってくれる。しかし、水濡れに弱く、水気を含むと保温性が著しく低下することから着用時だけではなく持ち運ぶときにも雨や湿気でのムレへの注意が必要。
その点、化繊綿は水気を含んでも保温性が低下しづらく、万が一濡れてしまってもフィールドで乾かすことができれば保温性が回復するし、使用後のメンテナンス(洗濯)も楽なのがメリットだ。
秋の山にぴったりの一着は、ダウンと化繊綿のハイブリッドで、使い勝手のよいザ・ノース・フェイスのサンダーフーディーだ。
The North Face(ザ・ノース・フェイス)
サンダーフーディー(メンズ)

ザ・ノース・フェイスの定番インサレーションであるサンダーフーディ―は優れたコンパクト性能からしっかりと温かさを保つ「ダウン」と水濡れにも強く断熱効果に優れたポリエステルファイバーのハイブリッドで使い勝手にとても優れた保温着。防水性にすぐれたスタッフバッグに入れかえて携行すればザック内での水濡れを避けることができ、着用時すぐに温かさを感じることができる。
| 価格 | 38,500円(税込) |
|---|---|
| 重量 | 320g(Lサイズ) |
悩んだら登山用品店で聞いてみよう!
秋のリスクを知って、しっかりと対応すれば、紅葉や秋空の広がる山を思う存分楽しむことができるだろう。こでは私のおすすめするレイヤリングのポイントを紹介したが、「今持っているウェアで充分か」「新しいアイテムをそろえるべきか」と不安に感じる方もいるかもしれない。そんなときはぜひ登山用品店に行ってみて店員さんに相談してみよう。最近では高機能なウェアが各ブランドから次々と登場しているので、自分にぴったりのアイテムがきっと見つかるはずだ。
プロフィール
高橋 典孝(さかいやスポーツ ウェア館)
山の世界で働いて20年のベテラン。ウェアに関する知識はオタク級だが山道具も大好き!!
ゆったりオートキャンプからガッツリ登山まで何でもこなすが特に最近は、トレイルランニング、テンカラ釣りに没頭中。
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