山岳・風景写真の教科書 第9回 色を究める

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

デジタルカメラはメニュー内のホワイトバランスや色味の設定次第で作品の色を変えられます。表現したい色をコントロールしてイメージどおりに撮影しましょう。

文・写真=菊池哲男

ホワイトバランスは撮影時の光源色に合わせて白を正確に再現するためのカメラ設定です。通常「オート」で設定されており、自動的に撮影環境の光源の色温度を検知して、適切なホワイトバランスに調整します。オートだと見た目に近い自然な色合いに表示されます。

色味の設定はメーカーにより名称・処理方法が違います。ピクチャーコントロール(ニコン)、ピクチャースタイル(キヤノン)などがありますが、今回は私が使用しているニコンの例を紹介しました。

デジタルカメラでは撮影後、JPEGという圧縮保存モードだと後からホワイトバランスやピクチャーコントロールの設定を変更できません。RAWデータだと後からカメラ内やパソコンでこれらを変更できるため便利です。一方で画像処理に専用ソフトが必要になることや、データサイズが大きくなることも知っておきましょう。

ホワイトバランス

ホワイトバランスを変えて撮影した下の4枚の作品を見比べると、残雪や気球の色味の違いがわかりますね。プリセットのホワイトバランスとして晴天、曇天、晴天日陰、蛍光灯、電球といったよく見かける光源別に設定できるようになっています。Kはケルビン値で「光の色合い」を数値化したものです。数字が大きくなると色温度は低くオレンジのような温かい色味になり、数字が小さいと色温度は高く青っぽくなり、冷たい印象になります。ちなみにオートは5500Kでしたので、晴天に近い結果になりました。「オート」は白を白く写そうとするので、朝焼けなどで見ている風景を撮影すると赤みが足りないことがありますが、このホワイトバランスを調整することで赤みを足したり、月夜で少し青みを帯びさせるなどイメージどおりに仕上げることができます。

ホワイトバランスの例

[作例]残雪の白馬三山と熱気球

■晴天(5200K)

■蛍光灯(4200K)

■晴天日陰(8000K)

■オート(5500K)


カラーコントロール

色味の設定を変えるとナナカマドの赤み(彩度)がかなり変わってきました。下の4枚の作品では「ビビッド」だとナナカマドが色飽和して、赤色が飛んでいますね。色調だけでなく、コントラストが強く、シャープネスがかかって、ハッキリとした印象に変わります。

主なカラーコントロールの種類

  • スタンダード
    標準的な色味でほとんどの撮影状況に適する
  • ニュートラル
    被写体の色味を忠実に再現する
  • ビビッド
    色味を強調したり、ハッキリした印象になる
  • モノクローム
    白黒やセピアなど、一色の濃淡で表現する

ニコン・ピクチャーコントロールの例

[作例]紅葉するナナカマドと白馬大池

■スタンダード

■ニュートラル

■ビビッド

■モノクローム

『山と溪谷』2025年1月号より転載)

プロフィール

菊池哲男(きくち・てつお)

写真家。写真集の出版のほか、山岳・写真雑誌での執筆や写真教室・撮影ツアーの講師などとして活躍。白馬村に自身の山岳フォトアートギャラリーがある。東京都写真美術館収蔵作家、公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員、日本写真協会(PSJ)会員。

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2026年1月号の特集は「美しき日本百名山」。百名山が最も輝く季節の写真とともに、名山たる所以を一挙紹介する。別冊付録は「日本百名山地図帳2026」と「山の便利帳2026」。

Amazonで見る
楽天で見る

山岳・風景写真の教科書

『山と溪谷』で2024年5月から連載の『山岳・風景写真の教科書』から転載。写真家の菊池哲男さんが山の写真を撮る楽しみをお伝えします。

編集部おすすめ記事