麓では気温30度超えでも山には雪が残っています。最新情報を確認して適切な装備を 島崎三歩の「山岳通信」 第400号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第400号では、雪渓上での滑落事故が多発していることを説明、最新情報を確認して適切な装備品を準備することを推奨している。
6月26日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第400号では、期間中に起きた10件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
- 6月17日(火)、北アルプスの常念岳で、2人パーティで入山した71歳の男性が、常念岳から常念乗越に向けて下山中にバランスを崩して転倒、負傷した。
- 6月17日(火)、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した69歳の男性と48歳の女性が、猿倉登山口から白馬岳に向けて大雪渓を登山中に、小雪渓付近で技量不足のため行動不能となった。
- 6月18日(火)、浅間連峰の黒斑山で、2人パーティで入山した67歳の女性が、黒斑山から蛇骨岳に向けて縦走中に木の根に足を取られて転倒、負傷した。
- 6月18日(火)、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した48歳の女性が、猿倉登山口から白馬岳に向けて大雪渓を登山中に小雪渓付近で技量不足により行動不能となった。
- 6月19日(火)、北アルプスの白馬岳で、単独で入山した50歳の男性が、猿倉から白馬岳に向けて大雪渓を登山中に、小雪渓付近で技量不足により行動不能となった。
- 6月19日(火)、北アルプスの白馬鑓ヶ岳で、2人パーティで入山した25歳のアメリカ人の男性が、白馬鑓ヶ岳の天狗ノ頭から白馬鑓温泉に向けて下山中に技量不足により行動不能となった。また、同行者の24歳のアメリカ人の男性が滑落、死亡した。
- 6月20日(火)、北アルプスの西岳で、8人パーティで入山した48歳の韓国人の女性が、西岳から槍ヶ岳に向けて縦走中に滑落、負傷した。
- 6月21日(火)、塩尻市の高ボッチ山で、単独で入山した61歳の男性が、高ボッチ山から下山中に疲労により、行動不能となった。
- 6月22日(火)、北アルプスの奥穂高岳で、2人パーティで入山した43歳の女性が、奥穂高岳から涸沢に向けて下山中に滑落、負傷した。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
白馬大雪渓では、滑落による負傷や技量不足による行動不能となった山岳遭難が3件発生しています。いずれも携行していた装備が万全ではなく、準備不足による遭難でした。
麓では、気温30度超えの暑い日が続き、山に雪が残っているとは想像しにくいところですが、標高の高い山域ではまだまだ雪の残った場所があり、滑落や転倒に備えたアイゼン・ピッケルの装着・携行が必要です。斜度が強い箇所での滑落は、止まらずに下部まで滑り落ち、岩にぶつかったり、シュルンドに落ちれば、大ケガや最悪の場合、死に至る可能性もあります。
この時期は、アイゼンやピッケルの携行を迷うところですが、登山計画の際には、行き先の山域やルートの最新情報を確認し、少しでも不安がある場合には、行き先の変更や装備品を見直しましょう。また、自身や仲間の技量に見合った山域を選定し、無理のない安全登山を心掛けましょう。
長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ
御嶽山の登山道の通行規制について
御嶽山の登山道の立ち入り規制は、7月1日(火)から規制の解除(緩和)が予定されています。ただし、王滝村によると王滝頂上~剣ヶ峰ルート、王滝頂上~黒沢十字路ルート(二ノ池トラバース)は、積雪などの状況により、登山道の安全が確保できないため、規制緩和を延期するということです。今後の火山活動や残雪の状態によっては、さらに変更される可能性があります。詳細については、木曽町、王滝村などにご確認ください。
⇒【黒沢口・開田口】木曽町役場 総務課危機管理室 0264-22-4280
⇒【王滝口】王滝村役場 総務課 0264-48-2001
白馬大雪渓(猿倉登山口)につながる県道の通行規制について
県道白馬岳線(猿倉登山口~二股ゲート)は、白馬館ヘリポート(猿倉登山口の手前、車両転回場)と二股ゲートとの間の車両の通行規制が解除されました。この区間は、タクシーや路線バスなどの車両に限って通行できます。一般車両の通行はできません。
ただし、この区間における歩行者の徒歩による通行は可能です。現在、県道の復旧工事が行なわれていますが、全面復旧の見通しはたっていません。 詳細は関係機関のウェブサイトでご確認ください。
⇒白馬村ホームページ
⇒大町建設事務所
⇒(株)白馬館
北アルプス地域に「ツキノワグマ出没注意報」
北アルプス地域における6月8日から6月14日までの里地でのツキノワグマ目撃件数が、前週の1.5 倍以上と増加するなど、クマの移動が活発になっています。みなさんにあらためて注意いただき人身被害を回避するため、北アルプス地域を対象に「ツキノワグマ出没注意報」を発出します(長野県林務部)。
発出期間: 6月19日(木)~7月31日(木)
対象区域: 北アルプス地域
人身被害: 令和7年度(6月18日現在) 5件 8名
①朝夕の行動はできるだけ避け、複数人で行動する
②クマ鈴、ラジオ、笛などを携帯する
③クマのいる場所に近づかない
④子グマを見たら立ち去る
⇒ツキノワグマ出没注意報
「登山計画書」を作成・提出しましたか?
登山のリスクを意識し、自分の体力や技術に見合ったゆとりある山行計画をたてましょう。登山計画書は必ず提出してください。その際、山小屋・地元自治体・観光協会などを通じて、登山口までの道路や登山道の状態、残雪の状況など、現地の最新情報を事前に把握しておきましょう。そのうえで、家族や知人などにも詳細な予定(行き先・登山ルートなど)を伝えましょう。登山計画書を提出し、情報を共有しないと、入山場所や遭難地点の特定に時間がかかり、捜索活動が遅くなってしまいます。
⇒詳細はこちら
「信州 山のグレーディング」登りたい山よりも登れる山を!
「体力の低下を意識できない中高年者」や「山の怖さを知らない初心者」が、県内の急峻な山岳を訪れ、遭難増加の一因となっています。「信州 山のグレーディング」は、長野県内の登山ルートの難易度の情報を提供し、登山者が「自分の力量に合った山選び」をすることによって、山岳遭難の防止に役立てようと、考案されました。夏山登山を計画する際は、ぜひとも参考にしてください。
次に登る山はどこにしよう? 「信州 山のグレーディング」を「自分に合った山選び」の参考にして下さい。
⇒詳細はこちら
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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