好日山荘で聞いた! グレゴリーの「テクニカルパック」の選びかた

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銀座 好日山荘を訪ね、バックパックに詳しい飯田真仁さん、好日山荘おとな女子登山部のるんちゃんさんに、この春、いくつかのモデルがブラッシュアップされたグレゴリーの登山用バックパックについて、どのモデルがどんな登山に向いているのか、それぞれの特徴を聞いた。

写真=水谷和政、取材=編集部、協力=サムソナイト・ジャパン、銀座 好日山荘

 

飯田真仁さん(左)
大手書店に勤めていたが、地元・千葉の富山に登ったのをきっかけに登山に目覚めた。山好きが高じて10年前に好日山荘に入社。新潟勤務のときには飯豊山に、銀座店勤務の現在は奥多摩や谷川岳の山に登ることが多いという。槍穂高縦走や雲ノ平へのテント泊山行で、バルトロの前身モデルを使用した。次に狙っているのは残雪期の平ヶ岳だという。

好日山荘おとな女子登山部 るんちゃんさん(右)
観光で出かけた秋の中央アルプス・千畳敷で山に目覚め、登山開始からわずか1年で北アルプスの大キレットを縦走してしまったというはまりっぷりは、当サイトに掲載中の「好日山荘おとな女子登山部」のリレー連載で公開中。次の夏に行きたいのは? の質問に「休みが取れたらですが、北海道の大雪山からトムラウシ山へのテント泊縦走です」。

 

「ズール/ジェイド」:通気性重視。テクニカルパックの「売れ筋」モデル

グレゴリーのバックパックは、日常使いのデイパックなどが「ライフスタイルパック」と呼ばれるのに対して、登山用のバックパックについては「テクニカルパック」と呼ばれていますね。まずは、どんなモデルがあるのか、ラインナップについて教えてください。


まずは「ズール(ZULU)」と「ジェイド(JADE)」ですね。
男性モデルの「ズール」は、30、35、40、55リットル、女性モデルの「ジェイド」は、28、33、38、53の選択肢があり、これから登山を始めよう、初めて本格的な登山用のザックを買う、というような人にご案内することが多い「売れ筋モデル」です。日帰りから山小屋泊、富士登山の方なんかにもオススメしています。
男性なら、日帰り登山が多い方には30、山小屋泊なら35、カメラを持つ人や荷物が多い人、秋冬の防寒着が増える季節まで見据える場合は40、テント泊なら55、というサイズを提案しています。

「ズール/ジェイド」の最大の特徴は、背面の通気を重視した構造になっていて、夏でも背中が蒸れにくいことです。伸縮性のある全面メッシュに加え、各容量につき、背面長の長さで2サイズがあり、さらに背面長の長さをベルクロで微調整できます。

背面長がベルクロで細かく調整でき、身体によりフィットするようになった


背面システムも「フリーフロート・サスペンション」という優れたシステムを使っていて、全面の伸縮性のあるメッシュが背中にピッタリフィットします。通気が良い上に、伸縮性のあるパーツが付いているため、身体の動きにしっかり追随して、バックパックがブレたりしません。

ヒップベルトまでメッシュで一体化され、通気性に優れ、かつパックとの一体感を得られる構造に


女性モデルの「ジェイド」も非常によく売れているモデルです。背面長の設定で2サイズあります(XS/SM、SM/MD)。女性の体型に基づいたショルダーストラップ、ヒップベルトの形状になっていることはもちろんなんですが、背面長のサイズ、ショルダーストラップ、ヒップベルトの長さが、日本の女性の体格にもよく合っていると思います。よっぽど背の高い人でなければ、サイズは合わせられると思います。

グレゴリーの女性モデルは、日本人女性の体格にも背面長に合っていて、フィット感が抜群だという


外国ブランドのザックだと、ストラップを引ききっても、締めきれずに余ってしまい、フィット感を得られないことがありましたが、グレゴリーの場合はそれがなく、日本人に合っています。

男女モデルとも、一番小さいモデルは、雨蓋式でなく、ジッパーで大きく開くタイプです。また雨蓋タイプのモデルも、雨蓋を開けなくても本体の荷物を出し入れできるよう、大きく開くジッパーがついています。ボストンバッグのように開くことができるのも、このモデルの特徴です。

「ズール/ジェイド」は、ジッパーで本体を大きく開けることができ、荷物が取り出しやすい

 

「パラゴン/メイブン」:大容量ながら、軽さとフィット感を追求しリニューアル

次に「パラゴン(PARAGON)」と「メイブン(MAVEN)」は、大容量のテクニカルパックとして、男性用の「パラゴン」が、48、58、68リットルのモデル、女性用の「メイブン」が45、55、65リットルのモデル展開があります。

「パラゴン」の背面システム。通気重視のモデルとは異なるが、良いところは継承されている


この「パラゴン」と「メイブン」は、大容量ながら軽さと背負いやすさを追求したモデルです。
例えば、女性用で55リットルくらいのバックパックを探す場合、「ディバ60」のXSサイズ(容量56リットル)が、2313gなのに対し、「メイブン55」のXS/SMサイズ(容量55リットル)は、1550gと、約800gも自重が違います。

ヒップベルトの長さもベルクロで調整できる(中・大容量のモデルのみ)


背面のシステムは、大容量を背負うため、身体からバックパックの重心が離れないような構造になっているところが、「ズール/ジェイド」との違いですが、昨年改良された「ズール/ジェイド」の背面システムの良いところを踏襲して今年ブラッシュアップされ、ヒップベルト部分のメッシュや、身体の動きに追随する伸縮性のパーツが搭載されました。容量ごとに2 サイズずつ展開され、その中で背面長の調整ができるのも「ズール/ジェイド」と同じです。

「パラゴン/メイブン」はサイドが大きく開く構造で、荷物の出し入れがしやすくなっている


雨蓋タイプですが、サイドアクセスが大きく開いて、使い勝手がよいのも特徴です。
女性モデルの背面長の具合の良さや背面長調整ができるところ、ショルダーストラップ、ヒップベルトのよいところは、「ジェイド」と同じです。

背面長を調整できる点は「ズール/ジェイド」と同じ

 

「バルトロ/ディバ」:テント泊登山の重い荷物を背負うためのフラッグシップモデル

夏のテント泊縦走などで、長い期間15kgとか、20kgとかの重い荷物を背負って登る人に向けては、グレゴリーの大型バックパックのフラッグシップモデルとして、「バルトロ(BALTORO/男性用)」と「ディバ(DEVA/女性用)」というフラッグシップモデルがあります。

重い荷物を背負っても、腰に荷重をしっかり乗せることができて、頑丈な背面システムで支えてくれます。ショルダーストラップ、ヒップベルトがすべて独立して動くこと、腰の部分の「ランバーパッド」というパーツが腰部分にフィットして、荷物がブレることなく、背負って歩くことができます。S、M、Lとサイズがあるうえに、ショルダーストラップはさらに長さが微調整ができるなど、細かくフィッティング調整ができるのが特徴です。

大容量を支える「ディバ(左)」「バルトロ(右)」の背面構造。ショルダーストラップ、ヒップベルトが独立して動くことで、重心を安定して歩くことができる


さらに、中のハイドレーションスリーブが、取り外すと、サブザックとして使えます。グレゴリーのロゴも付いて、ジッパーポケットや、カラビナなどが付けられるデイジーチェーンもあるので拡張性が高く、テント泊でテントを建てたあと、ちょっと山頂を往復する、という時に使えます。

「バルトロ/ディバ」には、便利なサブザックが付属。知らない人も多いという


このサブザックのことを知らない人は多いので、お店で見せるとたいてい「あら、いいわねぇ」と言われます(笑)。収納可能なボトルホルダーは、斜めの向きに入り、背負ったまま出し入れができます。大型のバックパックを背負ってしまうと、荷物を下ろすのは億劫なのですが、背負ったまま取り出したり戻したりするのに、この位置と角度はよく考えられていると思います。

ボトルホルダーは、背負ったまま出し入れしやすいよう、斜めに設計されている


それから、ここまで説明した「ズール/ジェイド」「パラゴン/メイブン」「バルトロ/ディバ」のすべてのモデルには、ショルダーストラップにサングラスを止める機能があります。
サングラスって、外して帽子の上に乗せているのを忘れて、帽子をとった時にポーンと飛んでってしまうことがあるんですけど(笑)、これなら絶対になくすことがありません。

サングラスホルダーは確実に止めることができ、紛失を防ぐ

 

「スタウト/アンバー」:コストパフォーマンスに優れた「いいとこ取り」モデル

「スタウト(STOUT/男性用)」「アンバー(AMBER/女性用)」は、グレゴリーの各モデルのよいパーツを使いつつ、コストパフォーマンスを高めたモデルです。容量は、「スタウト」が35、45、60リットル、「アンバー」が34、44、55リットルのモデルがあります。
SからLまでの長さで背面長調整ができるため、各容量でサイズ展開はひとつだけです。つまり、お店に来て、サイズによる品切れがない、あるいは、選ぶ時にどちらのサイズを選んだらよいか迷うということがない、というのがよいところです。

コストパフォーマンスに優れたモデルだが、背面や細部の作りは、さすがグレゴリー、というもの


どのモデルでも採用されているフロントポケットですが、「スタウト/アンバー」のフロントポケットは、丈夫な生地と伸縮性のあるメッシュを組み合わせて使っていて、中に入れるものをしっかり押さえることができます。

フロントポケットは、メッシュとナイロン生地を組み合わせ耐久性がアップしている


ボトムからのアクセスは、オーソドックスですが、男女とも一番大きな容量のモデルは、トグルの付いた仕切りで区切ることができます。
ヒップベルトのポケットも長いジッパーのものが採用され、年々大きくなるスマートフォンでも余裕で入れられます。

ヒップベルトポケットはジッパーが長くなり、大型のスマートフォンも入れやすい形状に


価格も抑えていて、例えば「バルトロ65」が、税込み42,900円なのに対し、「スタウト60」は、税込み29,700円です。購入予算が限られ、ほかの道具も買わなくてはならない人にとっては、選択肢になるモデルでしょう。
初・中級者に向いたプライス重視のモデルですが、もちろん荷物を入れて背負ってもらえれば、グレゴリーのザックのフィット感や、背負い心地を体験してもらえるザックです。

サイドのメッシュポケットは、背負ったままボトルを取り出せるよう横からも入れられる(スタウト60とアンバー55のみ)


ほかに、ここで紹介したグレゴリーの8つのテクニカルバックパックに共通する機能としては、すべてのモデルに専用のレインカバーが付くこと。そして、緊急時に迷わず使えるホイッスルが付いたチェストベルトを採用していることですね。ほかにもグレゴリーのバックパックには、ここで紹介できなかったいろいろな機能があるので、ぜひお店で実物を見てほしいです。

紹介したすべてのモデルに専用のザックカバーと、チェストベルトのホイッスルが付く


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ありがとうございました。それぞれ細かく特徴がありますので、自分が登りたい山や登り方を考えて、お店の人に相談するのがよいですね。

ほぼ同じ容量の「パラゴン(左)」と「バルトロ(右)」だが、背面のシステムは大きく違う。それぞれの特徴をお店の方に説明してもらい、実際に背負ってみるのがザック選びのポイントだ


それでは最後に、初めて登山用のバックパックの購入を考えている方、あるいは、今年バックパックの買い替えを検討している方に、メッセージをお願いします。

「日帰りの高尾山から、北アルプスの縦走まで、お客様の使い方によってもお選びできます。登山に関する質問などもお気軽にお声掛けください!」(飯田さん)

「格好良いザックたくさんご用意していますが、ザックは、必ず重りを入れて背負い心地を確かめてから購入することをおすすめします。山好きのスタッフが一緒に選びますので、気軽に声を掛けてくださいね!」(るんちゃんさん)

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今回紹介したグレゴリーのバックパック

ズール(男性用)

モデル展開
30、35、40、55
サイズ
SM/MD、MD/LG※サイズによる若干の容量の違いあり
カラー
3色(55のみ1色)

 

ジェイド(女性用)

モデル展開
28、33、38、53
サイズ
XS/SM、SM/MD
カラー
2色(53のみ1色)

 

パラゴン(男性用)

モデル展開
48、58、68
サイズ
SM/MD、MD/LG
カラー
2色(68のみ1色)

 

メイブン(女性用)

モデル展開
45、55、65
サイズ
XS/SM、SM/MD
カラー
2色(55と65は1色)

 

バルトロ(男性用)

モデル展開
65、75、85
サイズ
S、M、L※サイズによる容量の違いあり
カラー
65は3色、75は2色、85は1色

 

ディバ(女性用)

モデル展開
60、70、80
サイズ
XS、S、M※サイズによる容量の違いあり
カラー
60は3色、70は2色、80は1色

 

スタウト(男性用)

モデル展開
35、45、60
サイズ
ワンサイズ
カラー
2色

 

アンバー(女性用)

モデル展開
34、44、55
サイズ
ワンサイズ
カラー
2色

 

 

グレゴリー公式サイトへ

 

プロフィール

飯田真仁さん

千葉県出身。大手書店に勤めていたが、地元の富山に登ったのをきっかけに登山に目覚め、10年前に好日山荘に転職。新潟勤務のときには飯豊山に、銀座店勤務の現在は奥多摩や谷川岳の山に登ることが多いという。次に狙っているのは残雪期の平ヶ岳。

るんちゃんさん(好日山荘おとな女子登山部)

新潟の自然豊かな田舎で育つ。20代後半の時、観光ポスターを見て秋の千畳敷に出かけ、山と出会う。以後、アルプスの山々に憧れて、山登りを始める。標高を問わず、長距離を歩く縦走登山が好き。最近のお気に入りは飯豊、朝日など渋めの山域。転勤してからは奥多摩に興味津々。現在、銀座店勤務。
⇒おとな女子登山部メンバーはこちら

銀座 好日山荘

日帰りハイキングから長期縦走、クライミング、雪山登山、沢登りまでさまざまな登山スタイルに対応する品揃えを誇る登山用品店。同じビルにはクライミングジム「グラビティリサーチ」が併設されており、ロープワーク講習や岩稜帯の歩き方など、さらなるステップアップを目指す登山者に向けてさまざまな講習会を開催中。

所在地/東京都中央区銀座6-6-1 銀座風月堂ビルB1・B2
TEL/ 03-6228-5018アクセス/銀座駅B7、B9出口より徒歩2分。有楽町駅南口より徒歩5分。
営業時間/月~金 12:00~21:00 土日祝 11:00~20:00
※コロナ禍で営業時間が変更になる場合があります
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