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尾瀬-平ヶ岳-丹後山 残雪期縦走:関東地方境-山-群馬県境

大清水 三平峠 尾瀬沼山荘 沼尻 十字路 与作岳 景鶴山 大白砂山 白砂山 平ヶ岳 剱ガ倉山 滝が倉山 にせ藤原山 藤原山 大水上山 丹後山 丹後山避難小屋 三国川 十字峡トンネル 十字峡 三国川ダム 野中バス停( 上信越)

パーティ: 1人 (山車(dashi) さん )

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行程・コース

天候

全日程:晴れ

登山口へのアクセス

バス
その他: ●往路:沼田駅~大清水;バス
●復路:野中バス停~六日町駅;バス

この登山記録の行程

尾瀬-丹後山 縦走:関東地方境-山-群馬県境 2015年4月26日(日)~30日(木)
 ●全歩行距離: 53km  累積標高差:+3,220m -4,134m
 ●群馬/福島県境(沼尻-見晴十字路)歩行距離: 4.4km 累積標高差:+69m -319m
 ●群馬/新潟県境(景鶴山-丹後山)歩行距離:20.9km 累積標高差:+1,461m -1,655m
 ○記号:[--] 交通機関  [・・・] 徒歩
①初日:大清水~十字路 歩行距離: 13.1km 累積標高差:+696m -473m
 沼田駅(7:20)--(8:57)大清水(9:00)・・・(10:20)一ノ瀬・・・(11:20)三平峠・・・(11:50)尾瀬沼山荘・・・(13:24)沼尻・・・(15:28)見晴十字路
②2日目:十字路~平ヶ岳下P1936 歩行距離: 12.2km 累積標高差:+1,122m -605m
 見晴十字路(5:12)・・・(5:30)東電尾瀬橋・・・(6:00)県境C1500・・・(6:40)P1653・・・(8:00)与作岳・・・(9:00)景鶴山(9:35)・・・(10:46)P1898・・・(11:45)大白沢山・・・(12:47)P1920・・・(13:07)C1790・・・(14:20)白沢山・・・(15:20)P1936天場
③3日目:P1936~藤原山下1670P 歩行距離: 9.4km 累積標高差:+642m -905m
 起床(3:00) 天場(4:50)・・・(6:10)平ヶ岳(6:57)・・・(7:35)P2072・・・(9:10)剱ガ倉山・・・(11:04)滝が倉山・・・(11:56)P1740・・・(13:58)にせ藤原山・・・(15:17)C1620・・・(16:00)藤原山下H1670天場
④4日目:1670P~十字峡トンネル 歩行距離: 11.4km 累積標高差:+536m -1,763m
 起床(4:30) 天場(6:00)・・・(6:14)藤原山・・・(7:26)P1610・・・(9:53)大水上山・・・(10:57)丹後山・・・(14:40)三国川・・・(18:08)十字峡トンネル天場
⑤5日目:十字峡トンネル~野中バス停 歩行距離: 6.7km 累積標高差:+223m -388m
 起床(5:00) 天場(6:55)・・・(7:25)十字峡・・・(10:10)野中バス停(10:50)--(11:00)五十沢温泉(13:38)--(14:00)六日町駅

コース

総距離
約52.0km
累積標高差
上り約3,132m
下り約4,045m

高低図

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

 このコースに道はないが、残雪のハイウェイを縦走し、藪漕ぎして可憐な花に出合い、縦走路で鶯の鳴き声を聞くなど、残雪の春を謳歌する旅となった。そして何より、丹後山と尾瀬が繋がったことがうれしい――連敗続きの巻機山から尾瀬までの縦走の半分ではあるが――。それで有頂天になった訳ではないが、大水上山で会った逆走者に諌められた三国川(さぐりがわ)に下り、大変な目に遭った。
 鶴舞う形の群馬県、その左翼の先端部県境が今回の旅の舞台である。先端は大水上山で、群馬県の最北端であり、利根川の源流でもある。この流域は矢木沢ダムなど首都圏の水瓶で、県境が分水界になっている。と同時に中央分水嶺(降水が太平洋に流れるか、日本海に流れるかの境界)でもある。今回の旅は景鶴山から大白沢山北峰までは日本海流域を歩き、その先は平ヶ岳、大水上山を経て、丹後山まで、中央分水嶺をトレースする。
 今回の旅は、先週に続いての尾瀬入りである。先週、尾瀬沼の県境横断に成功した。今回の旅で尾瀬沼が渡れなくなることを恐れてのものであった。沼田街道は大清水から、全面雪で、また尾瀬沼が渡れるかもしれない!という淡い期待をもたせたが、空しかった。尾瀬沼は“逆さ燧”を映し込むほどの水溜りができ、とても渡る気にはならなかったが、天気が良かった。群青の空と、白い湖面、くっきり浮き立った端正な燧ヶ岳に会うことができた。尾瀬沼から入山した目的がもう一つある。沼尻から見晴までの県境トレースである。これで群馬/福島県境は20km余りと短いが、完走となった。
 景鶴山には東側の肩から頂上まで、ピラミッドの階段を思わせる、真っすぐなスロープが架かっている。南には白い尾瀬ヶ原が拡がり、竜宮の名の由来になったかのように沼尻川が蛇行している。原の東西には燧ヶ岳と至仏山が尾瀬の守護神の様に鎮座している。否、守護神でもある尾瀬の創造主と呼ぶべきかも知れない。数百万年前には至仏山が隆起して準平原をなし、その後、景鶴山やアヤメ平などの噴火で、堆積と浸食を繰り返していた。最後に燧ヶ岳が噴火して只見川とその源流部を堰き止め、尾瀬ヶ原と尾瀬沼が誕生した(尾瀬保護財団、他の資料より)。そんなことに思いを馳せる眺めである。
 景鶴山の西への下りは山頂から、そのまま進むと、岩と灌木で厄介そうであったので、少し戻り、雪のついた北側を巻いた。ここから平ヶ岳までは、残雪のハイウェイが通っている。広からず、狭からず、見通しが利いて、適度に締り、踏み抜きもない。大した雪庇もなかった。困ったのは景色に見とれ、シャッターチャンスに追われ?!中々進めないことであった。残雪期のメリットを最大限に享受した1日であった。と同時に、大歓迎してくれた山の神様に感謝しなければならない。
 曙色という和色がある。北東の空をその色に染めて、会津駒ケ岳から朝陽が昇った。平ヶ岳の山襞が、ほんのりピンクに色付く。平ヶ岳は特異な山である。山体は花崗岩だそうなので、地下深い所(数km~数十km)で固まったマグマが隆起してきたことになり、もろい花崗岩が浸食に耐えて、大きな丸い山体を維持している不思議である。この時期になると雪が残っている山頂は少ないが、平ヶ岳には推定で70cm位の残雪があり、南東面の雪庇も小さく、崩落の形跡もないことから、雪の浸食が小さいのかもしれない。素人の戯言である。
 剱ガ倉山は平ヶ岳の手前から見上げると、マッターホルンの様に見え、果たして登れるのかと訝った。40年前の夏合宿で平ヶ岳から丹後山は縦走しているが、そのような記憶はなかったからである。平ヶ岳の先の2072mのピークから剱ガ倉山を見下ろすと、登りは問題なさそうであったが、手前のコルの雪の状態が悪く、取付きまでのルートが見いだせなかった。コルの雪は両側共、雪崩れかかり、稜線の中央に残った雪の壁は、万里の長城の側壁のみを高めたように5~60m続いている。幸いにも逆走者の新しい足跡があり、それを辿って、狭い所では蟹の横歩きを強いられたが、登りの岩場に取り付くことができた。
 剱ガ倉山を下ったところから、にせ藤原山まで、藪漕ぎとなった。でも大した藪ではない。灌木なので見通しは利き、そして何よりのご褒美は、藪を掻き分けると、そこに待っていてくれたかのように、咲き頃の可憐な花が微笑んでいる。ショウジョウバカマ(猩々袴)、イワウチワ(岩団扇)、藪が守ってくれたのか、花も葉も、全く傷んでいない。山で咲くマンサク(満作)の花も初めてみた。今日(3日目)は11時間歩いて、距離は9.4km。目標の丹後山は遥か遠い。藪が長かったし、平ヶ岳では50分も長居した。巻機山は諦め、明日は丹後山から下山することにした。
今日(4日目)も昨日と同様、ま~るい山の麓で朝を迎えた。昨日は平ヶ岳、今日はそのミニチュア版のような藤原山である。大水上山の登りにも岩や藪があり、通過するのに難儀したが、ここにも春一番を告げる花と鳥がいた。カタクリ(片栗)の花と鶯(春告鳥)である。こんな雪の中の僅かな藪で恋をさえずる。なんとも風流である。
 大水上山で、ここからは道がある安心感もあって、ゴールしたような達成感に浸っていると、十字峡から上がってきて、尾瀬に向かうという単独行者が現れた。彼曰く、十字峡からの三国川(さぐりがわ)沿いはデブリで通れない。中ノ岳を経由してきた。三国川に下らない方が良いと忠告してくれた。結果的にこの情報を無視することになった。一言で言うなら、情報の選択と判断の誤りであった。今考えると、ハイカーの情報なら、いざ知らず、単独で尾瀬に抜けようとする人が、今、体験してきた情報である。どの情報を選択するかは明白であったはずだ。
 丹後山の下りは快適だった。まだ雪が付いていて、適度に柔らかく、踵から蹴り込むと、衝撃も少なく、真っすぐ下れた。グリセードもできた。楽しい!高度を下げると、橅の若葉とタムシバ(田虫葉)の白い大きな花、雪の上に春がやってきている。
 三国川に降りた。最初はよかった。栃の木橋を渡り、一つカーブを曲がると、すごい光景が目に飛び込んできた。山のようなデブリが対岸まで伸び、ブリッジになっている。デブリに登り、先を見ると道路が見える。抜けたか、と思いきや、その先は林道がデブリに埋まり、すっかり元のV字谷の急斜面となって、雪解けの激流に雪崩込んでいる。雪の表面は10cm位、腐っていて、ステップを2度3度蹴り込まないと、アイゼンの歯は立たない。ピッケルは持ってこなかった。ストックでバランスを保つしかない。滑ったら終わりである。これを延々と2km余り、十字峡に辿りついた時には精も根も尽き果てていた。しかし、よくぞ、ここまで、集中力と体力が保(も)ったものである。自身の能力と体力を越えている。食事もとらずに(とれずに)トンネル内にテントを張り、眠りに落ちた。下山して、鏡を見て驚いた。人相が変わっていた。

関連レポート
○関東地方境一周:群馬県境
 ・尾瀬沼横断:関東地方境-山-群馬県境 2015年4月19日
  < https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=117347>
 ・残雪の景鶴山に登る:関東地方境-山-群馬県境:2014年5月1日(木)~2日(金)
  <https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=117322>
 ・燧ヶ岳・至仏山・尾瀬一周の旅:関東地方境-山-群馬県境:2012年8月19日~20日
  < https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=117269>
 ・尾瀬から日光沢温泉を巡る、夏の終わりの静かな山旅:2006年8月18日(金)~20日(日)
  <https://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=117060>
 ・巻機-丹後、縦走 敗退記:2017年04月25日(火)~27日(木)
  <http://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=92462>
○日本アルプス縦走~日本弧状列島完全人力横断(御前崎~親不知)~
 ・全体版:2015年6月30日~2016年7月22日
  <http://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=72911>
 ・Round.1:御前崎スタート(御前崎~畑薙第1ダム) 2015年6月30日~7月5日
  <http://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=72732>
 ・Round.2:南アルプス・南部(畑薙第1ダム~三伏峠)2015年7月19日~25日
  <http://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=85112>
 ・Round.3:南アルプス・北部(三伏峠~駒ヶ根) 2015年8月8日~13日
  <http://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=85249>
 ・Round.4:中央アルプス・乗鞍岳・焼岳(駒ヶ根~西穂山荘下)2015年9月11日~17日
  <http://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=85409>
 ・Round.5:北アルプス南部(西穂山荘下~種池山荘)2015年10月2日~10日(土)
  <http://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=112065>
 ・Round.6:北アルプス・北部(種池山荘~親不知) 2016年7月17日~22日
  <http://www.yamakei-online.com/cl_record/detail.php?id=115955>

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装備・携行品

登った山

平ヶ岳

平ヶ岳

2,141m

景鶴山

景鶴山

2,004m

大水上山

大水上山

1,831m

丹後山

丹後山

1,809m

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