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無道二千m峰12/126/768

白岩山( 南アルプス)

パーティ: 1人 (1357 さん )

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行程・コース

天候

快晴

登山口へのアクセス

バス

この登山記録の行程

ゲート(7:30)横岳峠(9:35~10:05)横岳(10:35)白岩山幕営(14:35/6:40)鞍部(2,015m/8:25)釜無山(10:25)林道(1,945m/11:15)程久保山(11:35)大河原(1,820m)入笠山(12:45)御所平峠(13:20)登山口(13:55)

コース

総距離
約21.1km
累積標高差
上り約1,753m
下り約1,719m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

 1年前、鋸岳で会った関西の人から「タクシーで林道の最奥まで入った」と聞いたのだが、途中にゲートが在って施錠されている。「あーあ、長い林道歩きになるなあ」と諦め顔でおにぎりを食べていると、レッカー車が来て錠を開けて進入し再び施錠して行ってしまう。「工事関係者がこれからやって来る!」と考えて手早く準備をしていると、ワゴン車がやって来て2つ返事で乗せてもらう。「今夏に砂防ダムの工事が始まり、ゲートが設けられた」と教えられる。
 工事のための迂回路を通って川原へ降り、ゴーロを歩いて行くと右岸寄りに確りした道が現われる。やがて左岸へ渡り、右に曲がって広い川原を行く。正面間近に横岳が現われ、右手の林ではモミの大木がポッキリと折れているのが目を惹く。
 大きな作業小屋が在り、その先の斜面は伐採されて朝日を浴びて明るく輝いているが、沢筋には雪が白く融け残っている。「ピーッ」と鋭い警戒音を発して、鹿の親子が斜面を軽快に逃げて行く。荒れた川原を横断して右岸沿いに徐々に高度を上げ、狭まった谷の左岸の道を登ると編笠山に突き上げている沢との出合に着き、一休みして水2ℓをポリタンに詰める。
 傾斜が増したガレの縁を登って三俣に着く。道は左俣寄りに更に傾斜を増して上へ続いている。「横岳峠へは中俣寄りの道を一直線に辿れる筈だ」と考えながら針葉樹林の中の確りした道に従って高度を稼ぐと、樹間の先が明るく開ける。稜線の上の空かと思って行くと、小さく開けた空間に白く雪が積もっている。
 この切り開きで道を見失うが、右の林の中に踏込んで適当に進むと直ぐに踏跡が現われ、やがて山道と出合う。間もなく落葉樹林となって一面の処女雪の上を歩くと、足元が滑り易くなる。栂の樹の間を抜け、陽光の小空間に飛び出して横岳峠に到着する。南面は戸台川に向かって急落しているが、峠の草原には陽が当って落着いた気持ちにさせられ、暖かい草の上に腰を下ろして食事を取る。
 昨年偵察した通り、横岳へは明瞭な踏跡が続いており、針葉樹の間を急登しておにぎり山みたいな横岳の山頂に着く。磁石で方向を定めて白岩岳への降り口を探し、尾根の上に付いた踏跡を忠実に辿る。植生はそれ程密ではなく、笹も生えていない。陽射しも程々にあって、薮漕ぎを覚悟していた身には拍子抜けする程楽な道で、行程が捗って有難い限りだ。
 鞍部へ急落する手前で一本立てる(11:05)。樹の間から仙丈ヶ岳が望見され、雪を着けてテラテラと光っている。崖を下って鞍部へ降りると白岩岳が緩く裾を広げ、頂上付近に白く岩が輝いているのが見える。
 P2,062へは細い尾根の背に道が付いており、傾斜が急になると側面の方に緩く登って行く獣道が派生している。「人間と獣と、果たしてどちらが急登を苦手とするのだろうか」等と、たわいのない疑問に捉われる。上部は落葉樹林に変わり、陽光が射して嬉しく休憩する(2,062m、11:40)。
 2,015mの鞍部へ下り、P2,114へ緩く登り返す。頂上の手前から仙丈ヶ岳や北岳、鋸岳がよく見え、中央アルプスと御岳山も姿を現わす。この頃になると風も止んで、頂上の雑木林の日溜まりで休憩して体力を養う(12:10~30)。p2,075の瘤へは東面が薮に覆われて踏跡が途切れるが、西面寄りの樹林と薮の境目を適当に登る。途中で一本立て、樹相がシラビソに変わって高度を稼いでいるのを実感するが、白岩岳までの道は以外と長く疲れを感じてくる。下生えが無くなって道がすっきりしてくると眼前が開け、草と雪と岩の明るい白岩山頂に着く。
 頂上に立つと予期しない大展望が開けて一瞬言葉を失う。水無川の向こうには八ヶ岳連峰の稜線が大地と天空を峻別して視線を惹き付け、小川山から金峰山へと連なっている。鋸岳の上には遂に甲斐駒ヶ岳が頭を現わし、北岳は両腕を広げて存在を主張し、大きな塊の仙丈ヶ岳は右翼の松峰へ尾根を伸ばしている。
 今日越えてきた横岳は、シラビソの尖った樹頂の上に垢抜けしない坊主頭宜しく存在を主張している。戸台川の上の尾根は紅葉が進んで遠く赤黒く輝いており、その向こうには中央アルプスと御岳山が顔を覗かせ、経ヶ岳のピークも黒々となかなか目立って見える。さらにその奥には乗鞍岳が認められ、十石山から焼岳へと辿ることが出来る。「穂高も見える筈だ」と背伸びをするが、山頂の樹の陰になって願いは叶わない。
 人臭少なく眺望絶景の頂上で夕日を浴びて暖かく休んでいるとここを去るのが勿体無く思われる。今少し距離を稼ぐ事を止め、今日の行動をここで打切る事にする。山頂からほんの少し下ると北の方には落ち着いた樹林が、東面には半ば以上雪に覆われているが明るい草原が広がって良いテント場がありそうに見えるが、「この頂に泊れば、中央アルプスの稜線に没する夕日と、若しかすると赤岳や北岳のアーベントロートが見られるかも知れない」と考えると、嬉しさにぞくぞくする。
 山頂の雪を除けたり踏ん付けたりしてスペースを作ってテントを張ると、エスパースが夕日を受けてライトグリーンに輝き、暖かさを感じる。エアマットを膨らませてシュラフを広げ、その上に体を伸ばすと落着いて心が満たされる。
 頂上には旧い石碑が2個安置してあるが、その一方は文字がはっきりしており、「天保五年 甲午八月吉日 五穀成就『通大天狗』 黒河内村 山本構中」と読める(後程、天保5年は1835年であることを知り、先人の足跡の古いのに驚敬する)。他方は角が取れて丸く、さらに年代が遡るものと思われる。その傍らの小さい落葉松に多色刷りの鮮やかな布テープを確りと結び付けて登頂の証とする。
 落日は実に見事だ。太陽の最後の一片が稜線の下に隠れると赤く、黒く、濃く、力強い色が中央アルプスの稜線を充たす。その左端に遥かに遠く儚げに盛り上がっている恵那山は、いっそう優しげな日没の様相を見せる。黄金と赤黒の落日が終ると鼠色の夜の中へと融け込んで山は形を無くし、星々が次第に輝きを増して天空を満たし『我が世界』の存在を誇示し始める。

 山頂から北へも踏跡が続いており、順調に下ってP2,193へ登り返す。尾根はここで緩く右ヘカーブを描いており、膝から腰の深さの笹に覆われて踏跡が怪しくなり歩き難い。稜線上の小さな瘤は左が切れ落ちた岩場で、雪の上を慎重に歩くので時間を喰う。腰を下ろして一休みしているとカモシカが現われてキョトンとしている。
 P2,079付近から緩い尾根となり、笹原の中を適当に歩くうちに鞍部に達する(2,015m、8:25)。地図には笹ヶ平沢から山道が上がってきている筈だが、気付かないで通り過ぎてしまう。
 道は笹に覆われているが悩まされる程ではない。三角点2,129mからはっきりしない地形を林班の目印や旧い切り開きの痕跡を拾って歩き、P2,135に達して一本立てる(9:15)。疎らな岳樺の林には笹が旺盛に成長して踏跡が判然としなくなる。2,005mの鞍部付近は密生した笹原でタジタジとなるが、少し登って尾根の形がはっきりしてくると小笹の中に踏跡が明瞭になり、「ほっ」と一息吐く。
踏跡は2,100mの等高線まで続いており、「釜無山も近いし、頂上まで踏跡があるかな」と期待する間も無く、その先は踏跡も赤布も全く見当らなくなって笹の海を泳ぐ様にして進む。隠れた倒木が多く、体力を消耗するのに加えて時間の予測も立たなくなってがっかりする。
 P2,115で赤布を見付け、いくらか安心して東北東へ方向を変えて進むと、緩く下った付近から先に真新しい切り開きが断続的に現われて勇気付けられる。笹が幾分密度を下げて背丈も小さくなり、シラビソの高木の中を進むと踏跡が確りしてきて前方がぽっかりと開ける。笹原の向こうには落葉松林が広がり、八ヶ岳が大きく蓼科山も随分近付いて見える。
 ザックを広げて食料を取り出し、一息入れる。目の前に測量用のポールが立っており、「さては釜無山頂か」と考えて足元の雪を除けると三角点標石が現れる。よく見ると雪の上には人の足跡が幾つも残っており、「ヤレヤレ、やっと道のある所までやって来た」と気が楽になり、腰を下ろして体を休める。
 人里が近い道理で、烏の鳴声が五月蠅い訳だ。笹の中の雪道を快適に歩き出すと直ぐに雑木林に入り、岩の間を少し登った最高点に『釜無山2,116.5m』の標識が設置してある。落葉松の間を行くと積雪量は20~30cm程になる。暫くすると樹が切れて右下方に甲府盆地の一角が見え、気持ちの好い尾根を快調に歩く。笹丈が大きくなり、P2,003の西面を巻いて下ると標高1,950mで林道と出合う。
 ここに在るゲートまでジープで上がって来たハンターが犬を連れて逆行して来る。「獲物は何ですか」と聞くと「猪と熊」と言い、鹿は12月からが猟期との事である。「途中で熊の大きな足跡を見た」と言っても、驚く様子もない。
 林道の日陰の雪は凍って歩き難いが、陽当りはすっかり融けてしまっている。程久保山へは、林道の分岐点から電柱点検用の立派な切り開きを苦も無く進み、右折してのんびり行くと平坦な頂上部に着く。
 ハンターに誤射されない様に時々声を発しながら歩く。電線の切り開きが頂上から北の方に伸びており、これを辿って下ると四叉路に出る。車の轍は右方の道に濃いが、地図に従って正面の道を緩く登って行くと大阿原湿原の南側まで回り込んだ所で行止りになり、ガックリして引返す。
 林班の赤布を林の中に見付けて強引に笹の中をショートカットして下り、北上する林道に出て湿原の東の三叉路から立派な舗装道路を北へ進む。自転車の2人が喘いで登って来て、車が雪道を慎重に進んで来る。道の両側は落葉松林だが、日陰は寒々としてすっかり冬の様相を呈している。
 朽ち掛けた道標の所で林道を離れて雑木林の中を緩く登ると次第に傾斜が増し、林が切れて草地になると直ぐに裸地の入笠山頂に出る。2組4人が休んでおり、久し振りに人に会った気分を味わう。
 山頂の岩に腰を下ろして展望を楽しみながら食事を取る。八ヶ岳が目の前に広がり、北アルプスが遮る物も無く望まれ、経ヶ岳、鉢盛山と豪華な眺めが展開する。小入笠山の牧場になっている山肌の模様が美しい。釜無山の方の斜面は悉く落葉松林に覆われ、冬の陽を受けてピンボケの写真を見る様に柔らかく霞んで見える。
 足下に見える御所平峠への道はたっぷり雪が残っていて、膝には優しいがスリップしない様に気を使う。峠の広場にはジープが停めてある。写真撮影や展望を楽しむために車で上がって来るのも良い考えだ。小屋には人の姿が見えるが、そのまま砂利道を下って鈴蘭小屋まで行く。小屋は閉まっていて、「峠の小屋で電話を借りるべきだった」と一瞬後悔するが、公衆電話を見付けて安堵する。
 「下山口に2時」の約束でタクシーを頼み、沢入コースを下る。長い水平な巻道に「いったい、如何なっとるんだ」と思いつつ辛抱して歩くと急落して小さいコルに達し、緩く一下りして林道の屈曲点に出ると駐車場に着く。

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登った山

入笠山

入笠山

1,955m

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