行程・コース
天候
4/30晴れ後吹雪 5/1吹雪 5/2晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
白馬五竜スキー場駐車場に駐車
この登山記録の行程
4/30
8:30アルプス平・・・13:00五竜山荘到着
5/1
2度の下山敢行も失敗、小屋にて停滞
5/2
6:00五竜山荘発・・・6:45アタック失敗、撤退・・・8:00五竜山荘
・・・12:00アルプス平
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
4/29
強風の勢力圏にすっぽり収まった関東圏、翌日の天気を憂いつつ一路西進、深夜23時過ぎに道の駅白馬に到着、車中泊としました。
車中泊組は多いようで深夜にも関わらず8割の駐車率でした。
4/30
翌日は道野駅から数分で着く白馬五竜スキー場駐車場へ。8:15始発のテレキャビンに乗るべく準備を整えます。
駐車場にはトイレはありませんがテレキャビン乗場1Fに公衆トイレがあります。
7:30には乗場へ。チケットは乗場で買えますが、シーズン券を持つスキーヤーとは列が違うので(階段右手の列)注意が必要です。
朝から登山指導員の方が登山届の受付と山情報の提供をしてくれています。
8:15定刻に出たテレキャビンに乗りアルプス平へ出発。アルプス平では当初はリフトに乗ろうと考えていましたが、ふと上を見上げればすぐそこにリフトトップの地蔵ノ頭。歩いても15分かからない程度の距離です。
スキー場を少し登り地蔵ノ頭へ。ここから小遠見への稜線が始まり、そして五竜の頂上部が少しと白馬三山が遠望できます。
登山道はところどころ夏道が出ているところがありますが、9割は雪上を歩きます。しばらくはストック・壺足で十分。私達は大遠見先の池塘地帯でアイゼン・ピッケルに装備変更しています。
小遠見の巻道は雪面が固く凍結しているのでアイゼンをしていない場合は頂上を経由するのが吉です。
爺ヶ岳の三又ピークがやがて鹿島槍に隠され、鹿島槍の南峰が北峰の陰から現れ双耳峰となり、ついにG峰群を従えた五竜岳本峰が現れます。
西遠見から白岳への雪壁は五竜山荘へのアプローチへの核心部。
尾根を外れれば谷底へ真っ逆さまの急登。トラバースして山荘へ直行する方法もありますが、道中出逢った知り合いのガイドさんから情報を仕入れ、白岳直登ルートを選択。
高度を上げるに連れ強まる風、そして併せて下降してくるガス。黒い雲に空が覆われ、五竜岳の上部が隠されていきます。
白岳を越えて山荘に入ったのが丁度13:00、風は横殴りになり、既に五竜岳は完全にガスの中。山頂アタックは翌日に持ち越しです。
その後天候は悪化、15:00頃にはあられ交じりの雪が降り始め、舞い上げられた雪煙とガスで視程距離数メートル。翌日多くの命を飲み込む、嵐がやってきました。
5/1
朝4:00、山荘をゆすぶる風の轟音、そして雷鳴。
外部の様子を伺おうと山荘の扉を揺するも着氷しておりビクともせず。ガラスも雪に覆われ外を見渡すことができません。
6:00にストーブでようやく動くようになった扉から外に出ると、一晩で40㎝は積もったであろう新雪、そして変わらぬ深く濃いガスと暴風。視程距離は10mもありません。
このまま滞在してもアタックチャンスは来ないと判断、下山を決行します。
7:00下山開始。山荘から一歩踏み出すと風速30mを超える暴風が体を襲います。まるで体を急流の中に入れたかのよう。
東から高圧の奔流が体を谷底へ引きずり込もうとします。
100mも進まない内に耐風姿勢を解除することができなくなり、山荘へ撤退。
下降開始の限界時間を11:00に設定、それまで様子をみて下降再開と判断し待機。
下降第1陣が10:00に下降開始。状況は好転しなかったものの10:30に第2陣として出発。
暴風で浮き上がるような体を制御しながら白岳の山頂へ。
ホワイトアウトした稜線はどこから谷なのか視認できず、先行隊のわずかなトレースを追います。
下降を開始したところで吹雪の轟音の向こうから妻の必死な呼び声が、、聞こえたような気がする。気配で着いて来ていないのはわかりました。
行ける!と手を振って呼ぼうと白岳山頂方向へ振り返ると・・・
何も見えない。
白い幕の向こうから私を止める声が聞こえるような気がします。既に退路もホワイトアウトで見えない中、妻の声を求めて山頂へ登り返し。
白岳山頂の妻の下に私が戻り、後続の第2陣は離散、それぞれがバラバラに下降を試みるも時すでに遅く第1陣のトレースは失われ追走不可能になり山荘へ戻りました。
その後五竜での遭難の報道もなく、第1陣は無事に雪壁を下降し、西遠見の安全圏へ至ったようです。
私達は下降しなかった後悔ではなく、無理に下降せず命を守る決断をしたのだと思います。
残された20名弱の登山者は吹雪に閉ざされた山荘でもう一晩を不安の中過ごすことになりました。
5/2
朝5:00、朝起きて見た小屋の窓からは五竜岳の頂上が!登れる日が来た!
朝6:15、装備を切り詰めて身軽にしアタック開始。G0に至るまでは夏道も目視でき、G0以降の雪壁もだいたいの夏道で検討を付けるとルートが見えてきます。
雪面はクラストして歩きやすく、ところどころ強風で凍結はあるもののアイゼンを弾くほどではなく快適な登り。
G2手前で妻の足が止まりました。どうも様子がおかしい。励ましながらも何とか先へ進み、G2に取り付いたところで後続していた妻の姿が見えなくなりました。
振り向くと妻ははるか下方のコルにうずくまって動く気配がない。恐怖に染まった顔。
目の間には真っ青な空を従え、純白の胸壁を聳やかす五竜岳。
トラバースで蹴り込むアイゼンの音、頂上直下の雪壁を息を切らして登り切り、最後は緩やかな雪稜のウィニングロード、全てが目の前にあるのに。
撤退開始。
恐怖にとらわれた妻は身に付けたピッケルワークもアイゼンワークも失ってしまい、一寸先に闇が待つ核心の下降行。
かなりの時間をかけて安全圏まで下降した後、デポ装備を回収。緊張の糸が切れる前にすぐさま継続して下降を続行します。
白岳からの下降を不安定ながらもこなし、無事に西遠見の安全圏に到達。
妻も完全に気力を枯らしながらもアルプス平まで歩ききり、最後は再挑戦を約束できるほど奮起してくれました。
きっと天はまた私たちに積雪期の五竜岳登頂のチャンスを与えてくれるでしょう。
最後に、同じ吹雪の中、力及ばず北アルプスに命を散らした方々のご冥福を祈ります。
決断が分けた結果か、それとも無謀な挑戦の結果かわかりませんが、私は常に夫婦二人で生きて帰る決断を選び、最後まで頑張ろうと思います。
それまで心身を磨き、挑戦の心を忘れない登山夫婦でありたいです。










