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五竜岳・鹿島槍ヶ岳(後立山縦走/八方尾根~扇沢)

八方山1974m・丸山・唐松岳2696m・大黒岳2511m・白岳2541m・五竜岳2814m・北尾根の頭2560m・鹿島槍ヶ岳[北峰]2842m・鹿島槍ヶ岳[南峰]2899m・爺ヶ岳2670m( 北アルプス・御嶽山)

パーティ: 4人 (イガドン さん 、ほか3名)

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行程・コース

天候

利用した登山口

八方池山荘   扇沢  

登山口へのアクセス

この登山記録の行程

【1日目】
八方池山荘(07:35)・・・第三ケルン(08:40)・・・丸山(10:15)・・・唐松岳頂上山荘[休憩 30分](11:00)・・・唐松岳[休憩 10分](11:50)・・・唐松岳頂上山荘[休憩 30分](12:20)・・・最低鞍部(13:30)・・・五竜山荘(15:05)

【2日目】
五竜山荘(04:30)・・・五竜岳[休憩 10分](05:35)・・・口ノ沢のコル(08:00)・・・八峰キレット[休憩 60分](09:15)・・・北峰分岐(11:40)・・・鹿島槍ヶ岳北峰[休憩 10分](11:45)・・・北峰分岐(12:00)・・・南峰[休憩 20分](12:30)・・・布引岳[休憩 20分](13:20)・・・冷池山荘(14:15)

【3日目】
冷池山荘(04:25)・・・赤岩尾根分岐(冷乗越)(04:40)・・・爺ヶ岳南峰[休憩 20分](05:45)・・・種池山荘[休憩 20分](06:40)・・・柏原新道登山口[休憩 30分](09:10)・・・扇沢(10:00)

コース

総距離
約25.6km
累積標高差
上り約3,084m
下り約3,500m
コースタイム
標準21時間5
自己18時間30
倍率0.88

高低図

標準タイム比較グラフ

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登山記録

行動記録・感想・メモ

【回想/1日目】(八方~五竜山荘)
気がつくと白馬駅に到着していた。ここで降りる人たちの物音で目が覚めた。カーテンを開けると外は明るい。青空も顔を覗かせている。好天が期待できそうだ。ほどなく八方バス停に到着した。予定時刻よりも1時間以上早い到着だ。始発までには大分時間があるため、先に朝食を済ませることにした。わずかであるが白馬三山の稜線も見えている。リフト駅まではここから徒歩10分程度だが、八方バス停で降りた登山客は車を乗り換え猿倉へ向かう人が多い。人気の大雪渓を経て白馬岳を目指す人たちだ。軽い朝食を済ませた頃にはすっかり山の方のガスも消え、白馬三山が手に取るように判った。山行初日としては上々の天気。今回惜しくも参加できなかった福井さんも好天を念じてくれているに違いない。今月から勤務地が異動となり、3連休のうち実に2日間も仕事が入っていては仕方がない。来年こそ全員参加を実現したいと思うばかりである。リフト駅に到着すると、すでに30人ほどが列をなしていた。朝の陽射しが眩しく暑い。夏の到来を思わせるそんな天候だ。運転開始の7時が近づくと窓口が開いた。もうその頃には後方も長蛇の列になっていた。窓口がとても混雑していたので、チケットは私が一括購入することとし、隊長たちには先に並んでもらうことにした。ほどなくチケットを購入し乗場へと向かう。最初は4人乗りのゴンドラアダム。隊長と私は前向き、支店長とクロヨンは後向きに座る。8分間で一気に高度をかせぐ。気がつくとリフト駅が小さくなっていた。後方には北信五岳が姿を見せ始める。続いてリフトに乗り換える。1つ目はアルペンクワッドリフト7分、2つ目はグラートクワッドリフト8分、白馬三山が間近に迫ってきた。終点からはいよいよ夏の陽光を背に受けての歩きが始まる。八方池までの道はハイカーも訪れる緩やかな道が続く。上空はすっかり晴れ渡り、谷から沸きあがるガスは白馬三山を包み込んでいる。天を突く白馬岳や鑓ヶ岳は我々の登頂欲をかきたててくれる。来年かそれとも再来年か?右手前方に八方池が見えてくる。池のほとりは尾根から一段下りたところにあり、ちょっとした園地になっている。青い水面に映る不帰嶮が美しい。池を俯瞰しつつ、いよいよ本格的な登山道に突入する。両側の開けた尾根道を暫く進むと、雲の切れ間からひときわ大きな五竜が姿を現した。一同五竜の迫力に思わず声を上げた。更に左手奥の鹿島槍の双耳峰もはっきりと見えてきた。近くの中年女性に山の名を問われ指差しながら答える。「浅間山や四阿山も見えていますよ。」と教えると驚いていた。ダケカンバの林を抜け、やがてハイマツ帯になると目前の不帰キレットが一層険しい山容に変貌していた。深く切れた谷には多くの残雪が残されている。照りつける夏の陽射しで火照った体に谷底から吹き上げる涼風が実に心地よい。ここからは唐松岳の頂上も見えている。最後の急登に差し掛かる。唐松岳頂上山荘はすぐそこだ。灼熱の急坂を登り詰めると待ち望んでいた絶景が一気に広がる。立山・剱が、その奥に薬師が。今回の山の神は初日から我々を大いに喜ばせてくれる。天候はすこぶる安定している。明日に取っておきたいくらいの快晴だ。唐松岳頂上山荘は増築工事中で、小屋の周りには建築資材や什器が置かれている。荷物を置き空身で唐松岳山頂を往復する。緩やかな越中側と切れ落ちている信州側はとても対照的だが、なだらかな登りは全く心配がない。まもなく唐松岳山頂に到着。急峻な不帰嶮はゾッとするが、目を南方に転ずると薬師の左手に赤牛岳、その奥に黒部五郎がわずかに見える。更に左には3年前に歩いた水晶と鷲羽。針ノ木と野口五郎が重なり、槍・穂まで遠望できる360度の展望を心ゆくまで堪能した。小屋まで戻ると昼食の準備にかかった。正午を過ぎ陽射しは真上から降り注ぎとても暑いのにもかかわらず湯気の立つカップラーメンをすする。下界ではとてもできない芸当だ。しばしの休憩の後本日の宿・五竜山荘へ向けて出発した。小屋からの道はいきなりの岩場の連続。しかも予想を遥かに超える急下降に驚く。岩場・鎖場を何度となく通過する。次第に目の前の五竜岳が迫力を増してきた。見上げるとそれはまさに岩の塊。五竜岳といういかついネーミングにも納得できる。最低鞍部から今度は白岳の登りにさしかかる。途中なだらかな砂地で小休止する。昼過ぎまではっきり見えていた剱が一気に霞んできた。これは悪天の様相である。登り詰めたところが白岳山頂との分岐だが、そのまま進み五竜山荘に入った。小屋の内外はすでに人でごったがえしていた。予約をする受付周辺も人ごみと化し並んでいた私の脇で新たに列を作ろうとしていた人たちがいたので注意を促した。我々の寝床は上段なので梯子を上らなければならない。狭く薄暗い廊下の両側には下段の人たちの荷物がぎっしりと敷き詰められており余計に狭く感じられた。仕方なく荷物も上げて寝床を確保した。同じ上段にもすでに7人ほどの人たちがおり、早くも布団を敷いて寝息を立てている者もいた。我々の段には最大16名が雑魚寝できる(しなければならない)と書いてある。3年前の烏帽子小屋とは違い、やはり人気の山には大勢の人たちが集うのだ。夜のことを考えるといささか憂鬱な気分になってしまうのだが、それでも何とか最小限の寝床を確保しホッとしていたところで事態は暗転した。支店長がトイレに行った僅かな時間に新たな男性宿泊客が来て、支店長の寝床を半ば占領するかたちで陣取ってしまったのだ。男性も悪気があったわけではないが、一瞬の隙を突かれてしまった感じだ。戻ってきた支店長は梯子に近い側に移動を余儀なくされた。どことなく居心地が悪かったがお構い無しに車座になって飲み始めた。周りを気にしながら、いつもよりややトーンを下げての談笑となった。炊事場で食事を済ませた後白岳を往復した。19時を過ぎているのにまだ明るい。唐松岳のシルエットがはっきりと見える。しばし夕暮れの稜線を眺め、明日の好天を祈りつつ小屋へと戻った。
【回想/2日目】(五竜山荘~冷池山荘)
時計を見ると午前3時。無論真っ暗なのだが、もう動き始めている人たちがいた。小屋の中は人いきれでものすごく暑く、夜中何度も水を口にした。一度目が覚めてしまうと、もう眠る気にはなれない。徐々に寝床から出てくる人が増えてきた。急に炊事場のことが心配になり、場所を確保するため移動した。炊事場にはもう何人かの人たちが朝食の準備をしていた。何とか空いている席を確保できたが、もう少し遅ければ寒い屋外での朝食を余儀なくされたかも知れない。実は昨晩のうちにザック等をこの炊事場の一隅に移動しておいたのだ。寝床が狭いという理由もあったが、朝食に備えての措置である。コッヘルに火を掛け始めたところで隊長たちを呼びに行った。 隊長はすでに起きていて、支店長も我々の気配で起き上がった。眠っていたクロヨンを起こし、ヘッドランプに点された薄暗い炊事場でうどんをすすった。今回も乾燥わけぎや揚げ玉をふんだんに入れたたぬきうどんとなった。若干汁が少なめであったが。身支度をして小屋を出る。一歩外へ出るとそこは人の群れ。しかも宿泊していた40名ほどのツアー客が点呼を取り終わり、我々より一足先に五竜へ向けて出発していた。天気も曇。昨日とは一変、黒く立ちこめた雨雲はものすごく厚そうだ。歩き始めるとすぐに団体の最後尾に追いついた。かなりのスローペースの為、すぐに登山道は渋滞してしまった。にもかかわらず道をなかなか譲ろうとはしない。次第にイライラが募る。特に気の毒だったのは五竜から下りてくる人たちだった。何十人もの登山客が通り過ぎるまで立往生していたのだ。待つこと10分以上に達したに違いない。そんな場所で強引に進めば滑落事故の危険性が一気に高まる。人気の山に来るたびに思うのだが、経済中心、儲けのことだけを考えて危険と隣り合わせの高山にツアーを組むことはやはり望ましくない。3,000m級の頂に立つためには、それなりの体力と経験を備えた個人でなければならない。中高年登山者の中には観光気分、物見遊山で来ている人も結構多いのではないだろうか。装備だけは一人前だが・・・というのをよく見かける。私見を述べるならば、ひとパーティー最大で10名を超えないようにすべきではないだろうか。それ以上だと明らかに周囲に迷惑を掛けることになるからである。因みに私はこれまで6名以上のパーティーを組んだことはない。年齢に応じた分別を持っていただきたいと思うのである。岩場の狭い登りにさしかかり、やっと団体が谷と反対の左側に避けて休憩を取り始めた。横目で彼らをやりすごし、いよいよ五竜直下の連続する急登となった。巨岩をいくつも乗り越えているうちに雨粒が落ちてきた。まだカッパを着るまでには至らないが、せっかくの五竜山頂も展望は無く、雨混じりの記念撮影となった。ここから鹿島槍がいよいよ今山行の核心部。最大は八峰キレットの通過である。天候は悪化の一途をたどる気配で一同に緊張感が高まった。五竜の下りは岩場、鎖場、梯子そしていくつもの小ピークを越えるなかなか厳しいアルバイトの連続である。雨で濡れた岩石が滑るので慎重に歩を進める。かつて91年に歩いた時のイメージとはほど遠いハードな一面を見せつけられている。ずいぶん前のことなので記憶も定かではないが、天候によってこんなにも山の姿というものは一変するのかと思いながら歩く。それでも前を歩く隊長はさすが山慣れしている分軽快に足を運んでいる。すぐ後ろのクロヨンも厳しいコンディションの中黙々と歩いている。最後尾の支店長は自身のペースで滑りやすいコースを着実にこなしているように見える。なにしろ展望が無いために地図上のポイントまで達しないと現在位置がよくわからない。まだまだ先だと思っていた北尾根の頭が突如目の前に現れた。コースタイムよりかなり早いペースで来ている。隊長が全体をいかに牽引しているかがわかる。五竜~鹿島槍間の最低鞍部・口の沢のコルを過ぎると、時折越中側の谷底から強い風が吹き上がり一瞬だけ雲が晴れるようになってきた。先ほどまでの雨混じりの風とは違う乾いた風だ。好天を予感し、ほんの少しだけ期待する。しかしその期待は見事に裏切られた。折から叩きつけるような激しい雨が降ってきた。慌ててカッパを着込む。まさに試練の時。雨に濡れたザックが一層重く感じられた。「キレット小屋はまだまだだろう。」と思っていたところ建物が見えてきた。こういう時の山小屋は本当に有り難い。小屋の主人に一声掛け休憩室で暖を取ることにした。まだ誰も休憩している人はなく、一番乗りの我々は左手奥のテーブル半分くらいを占領した。しかしその後続々と避難してきた人たちですぐに休憩室は満員御礼となった。時刻はまだ9時すぎだったが昼食の準備にとりかかった。最大の難所・八峰キレットを無事通過するために、ここで体力を回復しようと1時間以上の休憩を取ることにした。あったかいカップラーメンが心まであったかくしてくれる。人間偶には厳しい環境に身を投じることも悪くない。満たされた生活に慣れてくると自然と感謝の気持ちが薄れてくるものだ。普段は「あれはまずい。」とか「こんなもの食えない。」なんて実に傲慢なことを言っていたことを反省する。まさに「吾日に三たび我が身を省みる」である。雨が幾分小降りになってきたところでキレット小屋を出発することにした。主人に礼を言い、今一度気合を入れて難所へと突入した。八峰キレットは、はじめ信州側を巻くように鎖が付けられている。そしてアップダウンの岩場に鎖と梯子の連続。滑る足元を気にしながら慎重に進む。悪天候の中の難所通過はそれなりの迫力があり是非写真に収めたかったのだが、危険を避けるためカメラの使用を控えることにした。最大の難所を過ぎ、ホッとしたところで一瞬ヒヤッとする事件がおこった。ガレ場を下っている最中、いきなり上部から大きな石が転がり落ちてきたのだ。それまで冗談で「ラク!」なんて言っていたが、頭の大きさほどの石が少し前を歩いている隊長目がけて転がってきた。支店長が大声で「ラク!」と叫んだ。一気に緊張がはしる。私の右横を過ぎた時にはもう隊長にぶつかると思った。しかし隊長は冷静だった。落ちてくる石に正対し、重心を低くして、石の転がり方を予測して次の瞬間右に跳んだ。石はやや左側の谷の方へそのまま転がっていった。安堵の空気に包まれると同時に思わず笑ってしまった。隊長の、実に軽快な身のこなし様に賛辞を送った。隊長は自分のことよりも、更に下方にいた2人の登山者のことを気遣いながらの判断だったことを明かしていた。思わぬところで思わぬアクシデントがあるものだとより一層気を引き締めた。雨は小降りになったかと思うと、又強くなるといった感じで一度脱いだカッパを再び着る羽目になった。やがて空がいくらか明るく感じられるようになった頃、吊尾根(鹿島槍北峰分岐)に到着した。ザックを置き、早速空身で山頂を往復することにした。鹿島槍ヶ岳北峰では一瞬青空が顔を覗かせたが、分岐から南峰へ向かい始めると再び厚い雲に覆われてしまった。南峰の最後の登りは急で、さすがの隊長もバテた様子だったが、何とか鹿島槍まで到達することができた。もちろん展望は皆無。雨混じりの風も強かったので、記念撮影のみで長居することなく山頂を後にした。鹿島槍の下りからは山の雰囲気が一変する。これまでの荒々しい岩場からなだらかな砂礫の道へと変貌した。布引山を通過するとハイマツ帯となり、やがて森林限界よりも下になるとナナカマドなどが現れる。大きなガレ地の先にテン場があり、更に下ると冷池山荘の赤い屋根が見えてきた。今日は悪天にかかわらず、隊長の軽快なフットワークによりコースタイムを大きく短縮して冷池に到着した。私が宿泊手続きをしている間に支店長が生ビールを人数分用意して下さり、一同小屋前で立ちながらの乾杯。長時間の厳しい歩きに耐え抜いたお互いの健闘を讃えあった。
【回想/3日目】(冷池山荘~扇沢)
昨夜の寝床は2階のロフト部屋だったため少し暑かったが、一区画に我々4人だけだったので、前日よりは快適に過ごすことができた。冷池山荘の炊事場は五竜山荘以上に狭いため、今朝も3時に起きる予定にしており、目覚ましを掛けずに3時ちょうどに起床した。辺りはまだ静まり返っており、昨日とは違いまだ動き始めている人がいなかった。それでも荷物をまとめ一足先に炊事場へ向かった。一番乗りではなかったが、まだ座席が空いていたので早速手前の一隅を陣取り、朝食の準備にとりかかった。今朝はスライス餅のしゃぶしゃぶ、これももう定番になっている。我々が食べ始めた頃には辺りも騒がしくなり、先ほどまで星空だった外も白々と明けてきたようだ。小屋より一段高いところは東側が開けていて御来光を仰ごうと待ち構えている人たちで賑わっていた。冷池山荘を出発すると暫くは樹林帯の涼しく足元の湿った道を進む。早朝のこういう山歩きは本当に気持ち良い。やがて少し開けてくると鹿島方面の下山路との分岐点に出た。ここからは爺ヶ岳の登りとなる。周囲の山々にはまだ昨日からの厚い雲が纏っていた。東の空にはガスの向こうに鈍い光を放つ太陽がその輪郭を現している。稜線上は徐々に風が出てきたので、そのうち雲を吹き飛ばしてくれるだろうと期待する。どんどん高度を上げ、ふと来し方を振り返ると、冷池山荘の赤い屋根が朝日を浴びて光り輝いていた。しかしその奥の鹿島槍は未だ雲の中である。上空のガスが風に吹き飛ばされ、くっきりと夏の空が現れてきた。そんな中、朝日を背に浴びたその瞬間、右前方・爺ヶ岳南峰にかかる薄いガスにブロッケンが映し出された。思わぬ自然からの贈り物に一同思わず声を上げた。ハイマツ帯を更に進むと、左手に爺ヶ岳中峰のルートが出てきた。ザックを置き空身でピストンすることにした。数分で爺ヶ岳中峰に到着。登りついたその瞬間、目の前のガスがパッと晴れ渡り、正面に槍・穂高の威容が、遠く南アルプス、八ヶ岳などの峰々が雲海に浮かぶ島の如く視界に入ってきた。今回も山の神は、我々に最後の最後にもう一度微笑んでくれたのだ。日本海方面から次々と沸いてくるガスに一時視界を遮られるものの、暫くすると又ガスを吹き飛ばしてくれる。最高の気分で南峰へと向かった。爺ヶ岳南峰も中峰に負けず劣らずの眺望で、三角点こそ無いがこちらの方が広く、どちらかと言えば南峰の方が山頂然としている感じだ。目前の蓮華岳は大きく、その左後方に槍・穂や大天井・常念が見事に屹立している。しかし鹿島槍と針ノ木の山頂部だけはなかなか雲が取れず全容を見ることができなかった。種池山荘までの下りは実になだらかな牧歌的雰囲気の漂うコースで、赤い屋根と白壁の種池山荘がとても印象的である。途中「鹿島槍の雲が切れるまで。」と10分ほど待っていたが切れる気配が無いので仕方なく下ることにした。小屋のすぐ手前にはまだ多くの残雪が残っており、クロヨンと隊長はお決まりの大の字ポーズで雪上に横たわり一時の納涼を楽しんだ。種池山荘の脇には種池という小さな池があった。冷池山荘のすぐ近くにも池があったので、たぶんそれが冷池だったのだろう。山々を覆っていたガスはすっかり姿を消し、そのかわりに夏の暑い陽射しが2日振りに我々を照らし始めた。下りは樹林帯の中をひたすら下り続ける。時折木の間ごしから蓮華と針ノ木を望みながら、何度か雪渓を横断した。我々の耳に沢音がはっきり聞こえ始めると下界に近づいた証拠だ。砂利道のゲートを抜けたところが下山口。歩き疲れて火照った顔を傍らの扇沢の水で洗う。さすがに源流水、足をつけると冷たすぎて5秒ともたなかった。ここから車道をバス停まで歩く。発車寸前のバスにギリギリで乗り込み信濃大町へ。予定より大幅に早い下山だったため乗車変更をし、松本からスーパーあずさ18号で帰宅の途についた。

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