2017年の那須雪崩事故、栃木県と高体連の過失認める民事判決

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雪山歩行訓練中の高校生7人と引率教諭1人が死亡した那須岳雪崩事故から6年。遺族が栃木県や県高校体育連盟、教諭3人に計約4億円の損害賠償を求めた民事訴訟の判決が6月28日に言い渡され、宇都宮地裁は県と県高体連の過失を認め、計約2億9270万円の賠償を命じた。教諭3人は業務上過失致死傷の罪で在宅起訴され、刑事裁判が続いているが、今回の判決では公務員の職務によって損害が発生した場合は国や自治体が賠償責任を負うとした国家賠償法に基づいて請求を棄却した。遺族は控訴しない方針という。

事故のあった那須岳を望む(2018年3月撮影/さけもっとさんの登山記録より)

2017年3月に発生したこの事故をきっかけに、高校の山岳部・登山部活動の危機管理に関するさまざまな問題点が明らかになり、事故の当事者となった栃木県をはじめ、各地の高体連では山岳部活動の指導や大会運営などの体制の再検討が行なわれた。栃木県が作成し、今年3月に改訂された「登山計画作成のためのガイドライン」では、日本スポーツ協会のコーチや日本山岳ガイド協会のガイドが高校生の登山に帯同することや、登山ルートを難易度別に区分けし、高難度ルートの登山は認めないことが盛り込まれている。

現在、山岳部に限らず、教員や生徒への負担の大きさなどから、学校部活動の在り方が問われるようになってきた。中央教育審議会や国会では、部活動の取り組みを学校から地域へと移行する方針が示されているが、活動中の事故が参加者の生死に直結する山岳部については専門家の協力も必要になるため、ほかの競技スポーツよりも地域移行が難しくなることも予想される。

 

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この記事に登場する山

栃木県 福島県 / 那須・日光

那須岳・茶臼岳 標高 1,915m

 茶臼岳は那須岳ともいわれ、栃木県と福島県との県境から南北に連なる那須火山群の中央に位置する。最も新しくできた溶岩円頂丘(トロイデ)で栃木県内では唯一、噴煙を上げる山だ。 天空に白煙をたなびかせる雄大な姿は、まさに那須の盟主にふさわしい。 噴気孔は主に西斜面にあり、ゴーゴーと大きな音を立てている。周辺には硫黄の結晶が見られ、かつては硫黄の採掘が行われていたが、昭和28年(1953)の噴火を前に中止された。 朝日岳との鞍部にある峰ノ茶屋は、当時硫黄精錬所の従業員の休憩所として利用されていたが、平成7年に建て替えられ、登山者用として重要な役割を果たしている。 山頂直下までロープウェイが通じ、初心者でも楽に登れるようになった。山頂は360度の大展望で、春のツツジ、燃えるような秋の紅葉を楽しむ多くの観光客や登山者が訪れている。 ロープウェイを利用して40分も歩けば山頂に達することができる。山麓駅から登山道を峰ノ茶屋経由で登っても2時間ほど。 茶臼岳の南にある南月山まで足を延ばせば、別の角度からの那須を味わうことができる。また、山麓にはたくさんの温泉もある。 那須岳という場合、一般的には茶臼岳を指すが、広い意味では那須連山の呼称である。那須連山の中の顕著なピークに対して那須五峰や那須五岳という呼び方があるが、この場合、那須岳を仰ぐ場所によって若干異なるが、白笹山、黒尾谷岳、茶臼岳、朝日岳、三本槍岳を指す場合が多い。信仰登山の面からは南月山がはずせないし、展望のよさなら隠居倉が抜群である。

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