〝ヒトの身体の要〟を意識して。鍼灸師 ネモ先生の山と身体の羅針盤

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

鍼灸師・活法師「からだ自然Labo空」院長の根本国彰先生が、みなさんの登山ライフの指針となるような情報をお届けする『鍼灸師 ネモ先生の山と身体の羅針盤』。「山=登る」を主軸に、登山やクライミングに関した身体の悩み、症例、対策などを紹介しています。第二回は、「ヒトの身体の要」を説いていきます。

「登山やクライミングでの症状の専門鍼灸院」と看板を掲げている〝ネモ先生〟こと、鍼灸師の根本国彰です。当院の登山者やクライマーの患者さん達は、どんな症状で来院しているのかを紹介してみましょう。

下の図は来院時の主訴(しゅそ)をグラフにしたものです。主訴とは、患者さん自身が何に困って治療という行動までに至ったかというものです。一番痛みのある部分や、違和感を感じていて問題としている箇所になります。

登山者の場合、来院時の主訴は膝が圧倒的に多い症状で、次に足首の捻挫と続きます。膝や足首といった下肢の問題が6割を占め、続いて頭痛、肩こり、腰痛といったところです。

一方、クライミングでは、指の痛み、肘の痛み、肩の痛みの訴えが多くなります。

また来院時には、問診票に「主訴以外に気になる症状がある場合はご記入ください」という欄を設けて、記入してもらっています。

主訴以外の気になる症状には慢性的な訴えが多く、「年中、肩が凝って」とか「定期的にぎっくり腰を起こしている」とか「足首が固くて正座ができない」というように、「そもそも体質だから・・・」と本人が諦めている場合が多くなります。

主訴を診るのと共に、慢性的な症状も考慮して検査をしていくと、体幹部に異常を見つけるケースが多いです。最近、巷でよく言われている「骨盤の歪み」も、そのひとつになります。

人体はもともと左右対称ではないので歪んでいて普通なのですが、異常な歪みは修正する必要があります。主訴以外の症状も手当てをするのは手間が増えるように思えますが、それによって症状改善の近道になることが度々あるので軽視できません。

私が患者さんに説明するときによく使う言葉で「四十腰、五十肩、六十膝」というのがあります。

五十肩というのはご存じのように、50歳くらいの人が発症しやすい症状であることから付けられた症状名ですが、五十肩の人はその前段階で40代で腰の症状があったはずです。同様に60歳ぐらいで膝の症状が出た人は50代で肩の症状があったはずです。これは解剖学を学んでいたときに教わった言葉なので半ば受け売りなのですが、これほど人体の特徴を言うときに端的な言葉はないと思っています。

年齢はあくまでも目安として捉えていただいて、ここでは症状の発生には順番があり、肩の症状も膝の症状も大元に腰があると覚えておいていただきたいと思います。正に〝腰〟は人体の要なんですね。

それでは、腰の健康を保つにはどうしたら良いのでしょうか。次回は腰痛予防の効果的な運動方法をご紹介したいと思います。

プロフィール

根本 国彰

はり・きゅう師、碓井流活法会員、日本森林保健学会会員
からだ・自然Labo~空【ku:】~院長
多くのクライマーや登山者のケガや症状を診てきた経験から、一昨年より関東周周辺のクライミングジムで「クライマー治療室」を定期開催している。『山と溪谷』や『CLIMBING joy』、その他山岳雑誌などでクライミングや登山に関する身体のケア方法を紹介している。

鍼灸師 ネモ先生の山と身体の羅針盤

鍼灸師・活法師の根本国彰氏が、登山やクライミングに関した身体の悩み、症例、対策などを紹介。登山ライフの指針となるカラダの情報を説明します。

編集部おすすめ記事