その腰痛は上半身から? 山でもできる腰痛解消法

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鍼灸師・活法師「からだ自然Labo空」院長の根本国彰先生が、みなさんの登山ライフの指針となるような情報をお届けする『鍼灸師 ネモ先生の山と身体の羅針盤』。「山=登る」を主軸に、登山やクライミングに関した身体の悩み、症例、対策などを紹介しています。第四回は、「上半身からくる腰痛の解消法」。簡単なので、登山中にも活用できますよ。

先日、とある山奥でまだ誰も登ったことがない岩を初登してきました。ホールド(岩の手がかり)を下から探し、ここのラインが登れるんじゃないかと見当をつけて取り付いたのですが、中間にどうしても届かない一手。三度目の正直で、それまで見えていなかった小さなホールドを発見し、なんとか初登できました。

「まだ誰も登っておらず、登れるかどうかも分からない所を登る」ということ。登山やクライミングのスタイルは様々ですが、私にとって〝冒険的な要素〟は、欠かすことのできない山の魅力のひとつなのです。

さて、そんな楽しみのある山に行くためにも身体のコンディションを整えていきましょう。

 

上半身からくる腰痛解消方法

腰痛をもたらす原因となっている筋肉の連鎖を解消するにはどうしたらよいのか。今回は上半身からくる腰痛の解消法を取り上げたいと思います。

登山でザックを背負うことによる腕の負担、クライミングでの腕の酷使、日常においてはデスクワークによる腕の疲れ、スマホの操作によるもの。腕が原因となって腰痛を引き起こしている例は多くみられます。この方法を知っておくと役に立つ場面は多いですから、ぜひお試しください。

 

腰の回旋チェック

①立位もしくは座位で、正面を基準に左右の腰の回り具合を確認する

左への腰の回り具合を確認したら、一旦正面にもどったところで静止し、一呼吸置いてから右の腰の回り具合を確認すること。そうすることで正確な左右差を確認できます。

②回りが悪い方の腕の後ろを手刀で打つ(下記写真参照)

腰の回りが悪かった方の上腕三頭筋を少し強めに手刀で打つ。このとき、打たれる方の腕はできるだけ脱力しておきます。リズミカルに10回ほど。

③ ①と同様の確認検査をおこなう

最初と比べて回りの悪かった方が回りやすくなっていればOK!

よく「沢山やれば早くよくなるの?」と聞かれますが、打つ回数を多くするほど、よく効くわけではありません。また、必要以上に多くやり過ぎると内出血を起こすおそれもあります。これで変化が全く無い場合には他の原因が考えられますので、あまり固執せずに取り組んでみてください。

 

人体の不思議!?

腰の痛みは、必ずしも腰に原因があるとは限りません。自覚している腰痛は、脳が錯覚している場合があります。これは解剖学的にも自明で、腰部だけに収まっている筋肉はなく、腰を支える筋肉は全て腰を中心に上下に放射状に伸びています。そのため、手や足の原因から生じた筋肉の緊張が連鎖し腰部にまで達すると腰痛として自覚することになります。

しかし、稀に錯覚痛へのアプローチだけでも治ってしまう人がいます。一見、人体の不思議に思えるのですが、決してそうではありません。

こうした経験のある人の特徴に、運動習慣があり体力があることが挙げられます。生物には必ず自己回復力があります。錯覚痛の軽減で身体に余裕が生まれている間に体力を自己回復にまわすことができるので、根本の原因を治癒することができているのです。

まぁ、このような例は理想的ですが多くの人には当てはまらないので、やはり本当の原因にアプローチする必要があるのです。

 

プロフィール

根本 国彰

はり・きゅう師、碓井流活法会員、日本森林保健学会会員
からだ・自然Labo~空【ku:】~院長
多くのクライマーや登山者のケガや症状を診てきた経験から、一昨年より関東周周辺のクライミングジムで「クライマー治療室」を定期開催している。『山と溪谷』や『CLIMBING joy』、その他山岳雑誌などでクライミングや登山に関する身体のケア方法を紹介している。

鍼灸師 ネモ先生の山と身体の羅針盤

鍼灸師・活法師の根本国彰氏が、登山やクライミングに関した身体の悩み、症例、対策などを紹介。登山ライフの指針となるカラダの情報を説明します。

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