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東京神楽坂で世界植物の旅、約5億5千万年~1億数千年前に存在した古代超大陸「ゴンドワナ大陸の野生植物」

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」
たしなみ 2020年11月04日

約5億5千万年~1億数千年前に存在したという古代超大陸、ゴンドワナ大陸。その大陸が分裂、移動して、植物たちも大陸とともに移動していった――。髙橋修写真展「ゴンドワナ大陸の野生植物」で不思議な植物、美しい野生花園などを楽しむ、植物の起源を探す心の旅へと誘われてみよう。

スベリヒユ(西オーストラリア)


私事で恐縮だが、2020年11月6日より、主に南半球の野生植物を撮影した「髙橋修写真展・ゴンドワナ大陸の野生側物」を神楽坂に近いBEHIND THE GALLERYで開く。

展示内容は、見渡す限りの花畑や、大地に置かれた花束のような植物、暗いジャングルに咲く極彩色の花、珍奇な形の植物、乾燥地の特殊な形の植物、昆虫に擬態したランなどの植物群だ。南アフリカや南米、オセアニア、インドなど、南半球を中心に世界各地で撮影している。この写真で心と気持ちだけは日本を離れて、世界の大自然を見に行く旅を感じて欲しいと思っている。

ゴンドワナ大陸とは、約5億5千万年~1億数千年前に存在した古代超大陸。この「ゴンドワナ大陸の野生植物」とは、現在は分裂してしまったゴンドワナ大陸が、それぞれ分裂、移動した大地に生える野生植物である。

リースフラワー(西オーストラリア)


野生植物が、なぜそこに生えているのか? この問いに答えるためには、大地の成り立ちや地質、気候、生態系を理解する必要がある。ゴンドワナ大陸は、多くは現在南半球にある南米、アフリカ、アラビア、オーストラリア、南極、ニューカレドニア、インドなどの大陸や島々のほとんどを含めた超大陸だった。プレートテクトニクス(大陸移動説)によると、ゴンドワナ大陸は1億8千年前に分裂が始まり、陸地はさらに何度も分裂を繰り返しながら、現在の南半球の大陸や島々へと移動していった。

1億数千年前に発生した花咲く植物(被子植物)は、ゴンドワナ大陸が分裂した大陸や島々によって、それぞれが箱舟のように運ばれた。ゴンドワナ大陸で地続きだったために、現在は遠く離れていても、近縁の植物が分布する結果になった。

実際、チリのアタカマ砂漠のピンクの花と、西オーストラリアの花は同じスベリヒユ科カレンドリニア属の近縁種だ。ニュージーランドとパタゴニアには、赤い花が咲く近縁のヤマモガシ科の木が生えている。これが大陸移動説の証拠になっている。遠く離れているのに近縁の植物があり、似ているのにそれぞれ少しずつ違う、この不思議がゴンドワナ大陸の野生植物の特徴のひとつである。

ガザニア(南アフリカ)


そして植物は、それぞれの大地で独自に進化を繰り返し、独特の生態と形質を持つようになった。ハチそっくりのラン、地面に置かれた花輪のように咲く植物、松ぼっくりのような形をしたスミレなど、変わった形の植物が多いこともゴンドワナ大陸の野生植物の特徴だ。

もうひとつの特徴は、期間限定の花畑が出現すること。南アフリカ、南米、西オーストラリアなどの大陸西海岸は、乾燥した、砂漠に近い気候だが、冬の間に雨が降り、春の一瞬だけ花畑が展開する。南半球なので8~10月が春になる。また、インド西海岸にもモンスーン明けの9月、1週間だけ花畑になる湿原がある。

ナマクワランドデイジー(南アフリカ)


大陸も、その上に生える植物も億年単位の長い旅をしている。この写真展は、その大陸と植物の長い長い旅を追いかけた、地球の記録でもある。撮影の旅は、延べ移動距離で地球を何周もできるほどの旅だったが、彼らの長旅に比べると、ほんの一瞬にすぎない。

この写真展の自然光景は、日本では見ることができない。未知の植物を撮影する場所はたいてい辺境地で、行くだけでも困難な場所ばかりだった。自生地や開花期の情報も少なく、撮影には探検的な要素もある。このような困難な旅を乗り越え、見たことのない植物と出会った瞬間、心が震える。珍しい植物の生える環境に身を置き、光や風、湿気など環境を感じ、植物の美しさと生態をじっくり観察する。そしてよく考え、その場所の環境がわかり、よい美しく、かつ生態がわかる構図を計算し、シャッターを押した。

ロゼットビオラ(アンデス山脈)

クリスマスツリー(ニュージーランド)


シャッターを押したときの感動が伝わるとうれしい。海外どころか、旅にも行きにくい時代である。旅に出かけられない今だからこそ、美しいお花畑や、珍奇な形の植物写真を見て、どんな植物なのだろうとか、どんな場所で撮影したのか、この花が咲くのはどの国なのだろうか、などと思っていただければ幸いである。

教えてくれた人

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

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