より一層秋も深まる11月、標高2000m級の山々では雪の便りもちらほら届き、紅葉前線は1000m付近まで下がり、行楽地でも見頃を迎え始める。この時期は空気も澄んで視界が開けてくるため、展望を楽しむのに最適だ。今回は、山梨県・甲府盆地の奥に広がる奥秩父前衛の山をピックアップしてご紹介する。

ここで改めて注意点だが、秋は登山道が落ち葉で不明瞭となる場合もあるので、こまめに現在地確認を忘れずに。また日没も早いため、早めに下山するよう計画を立てることが望ましい。なお、天候によっては凍結などの場合もあるので、事前に状況を確認・判断の上、必要に応じて相応の装備で臨みたい。
塩山の恵林寺を開山した夢窓国師が修行した山。恵林寺の乾(いぬい。北西の意味)の方角にあり、徳和地区にあるので乾徳山(けんとくさん)と呼ばれるようになったといわれている。森、草原、岩場、展望と変化に富んでいるのが魅力だ。標高は2031mで、奥秩父前衛でも人気の山のひとつ。日本二百名山に選ばれている。

乾徳山登山口から、銀晶水、錦晶水、扇平を経て山頂へ。北側に下りて水のタル、国師ヶ原、道満尾根を経て徳和に帰ると、8の字周遊コースとなって変化があって面白い。頂上手前にはスリリングな岩場があるが、岩場に自信が無い場合は、迂回路を利用しよう。その他、大平高原からのコースも人気がある。

高低図
茅ヶ岳(かやがたけ)は、『日本百名山』の著者・深田久弥が急逝した山としてよく知られている。山麓にある深田記念公園では、4月に「深田祭」が催される。山容が八ヶ岳に似ているので、「ニセ八ツ」という俗称もある。二百名山に選ばれている。

登山起点は深田記念公園。背後にある金ヶ岳の方が標高がやや高く、せっかくなのでこの2山を縦走したいが、深田記念公園起点の周回は後半の林道歩きが長いのがネックなので、往復コースでもよい。なお、茅ヶ岳から金ヶ岳への道はやせ尾根歩きや急降下があり険しい。初級者の場合は茅ヶ岳のみの往復がよいだろう。

高低図
甲府北方に位置する昇仙峡は、花崗岩の奇岩や滝、渓流が美しい景勝地。その昇仙峡の西にそびえる山が羅漢寺山(らかんじやま)だ。羅漢寺山は付近の峰々の総称で、最高峰は弥三郎岳(やさぶろうだけ)。近くのパノラマ台までロープウェイで行けるため、こちらも観光地になっており、昇仙峡とともに紅葉の時期には多くの観光客で賑わう。この羅漢寺山まで、ロープウェイを使わずに歩いてみよう。

長潭橋(ながとろばし)そばの登山道入口から登り、いったん車道に出てからまた山道に入り、外道ノ原に向かう。途中、展望がよい白山に寄り、白砂山の分岐を過ぎてパノラマ台へ。パノラマ台までロープウェイが通じているので、観光地の様相となる。ここからは観光客に混じって弥三郎岳を往復しよう。一枚岩の山頂からは素晴らしい展望が広がる。
パノラマ台から先、喧噪を離れ金峰山の里宮・金桜神社まで御嶽古道を歩く。かつて、金桜神社まで参詣道として歩かれていた道である。神社からは、車の通行に注意しながらロープウェイ駅まで車道を歩く。

高低図
棚山(たなやま)は、かつてはあまり知られていない山だったが、ほったらかし温泉から登山道が整備され、よく登られるようになった。山梨市方面から見ると、立派な山容をしており、山中には大岩が点在して興味深い。

ほったらかし温泉の駐車場を利用する場合は、その旨断ってから登ろう。ほったらかし温泉からスタートして、道標に従いながら展望が開けた林道を進む。林道終点から少し下がって舗装路が合流し、山道に入る。重ね岩コースから登り、山頂へ。山頂からは南アルプスの展望が良い。下りは山の神コースからほったらかし温泉へと戻る。
高低図
高低図
「たちおかやま」と読む。山名は、日本武尊が東征の帰路に山頂に太刀を残したという伝説が由来とされている。茅ヶ岳の東側に位置し、岩がそそり立つような山容が特徴の山。山中には岩が露出している箇所が多く、クライミングのゲレンデとしても知られるハサミ岩が圧巻。

太刀岡山登山口から急登、ハサミ岩を経て南峰に到着する。最高点の北峰は灌木に囲まれている。急坂を下り、越道峠からはなだらかに平見城集落に出て、登山口まで車道をたどる。越道峠から黒富士、曲岳をつないで歩く健脚者もいるが、急な登り下りや岩場がある上、長丁場の行程となる。初級者の場合、無理は禁物だ。

高低図