低山雪山を安定して歩く、快適に過ごすための装備と服装を考える

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積雪量がそれほど多くなく気候も比較的穏やかな山域で楽しむ「雪山低山」。行ってみたいけど気になるのは服装や装備のこと。何を揃えればいいだろうか。

文=西野淑子、写真=編集部

目次

【服装】服装は無雪期登山プラスアルファで考える

雪山低山を楽しむ場合の服装は、無雪期の登山をベースに、寒さ対策をプラスアルファする形で考えます。晴れているときや、風のない樹林帯の登りなどでは、歩いているとうっすら汗ばむことも多いです。

しかし、気温はそれなりに低いので立ち止まると寒さを感じますし、風があれば体感温度も低くなります。雪山用の保温性に優れたウエアは、雪山低山で身に付けると熱がこもりすぎて暑くなってしまう場合もあります。厚みがあるウエアより、保温性に優れた薄手のものを重ね着するほうが衣服の調節がしやすいです。

  • 帽子……フリースやウールなど、耳まで隠れるタイプのキャップ
  • グローブ……保温性のあるニットのグローブ
  • アンダーウエア……保温性の高いウール、ただし厚過ぎないものがよい
  • ダウンジャケット……防寒具はコンパクトに収納できる化繊綿や薄手のダウンジャケットを
  • ソフトシェルジャケット……防風性、透湿性に優れたソフトシェルジャケットは行動中も着用できる

帽子は耳まで隠れるキャップを用意しましょう。低温あるいは強風に耳がさらされると痛いですし、気温が著しく低ければ凍傷の原因にもなりえます。ネックゲイターがあれば、首周りから体温が放出するのを防ぎ、体を温かく保つことができます。

雨やみぞれが降ることも。雪山低山は濡れ対策も重要

雪山低山では、雪ではなく雨が降ることが多いですし、降り始めは雪でも、気温が高くてみぞれや雨に変わることもあります。そのため、雪山用のアウターシェルより、完全防水のレインウエアのほうが使いやすいです。雪山用のアウターシェルは、顔を覆う面積の広い襟やフードで保温性を高めたり、激しい行動による衣服内のムレを素早く放出するため、脇下などにベンチレーションを設けているものが多いです。

POINT

  • 雪山用のアウターシェルは保温性、通気性を重視。
  • レインウエアは防水透湿性を重視。雪山低山に適している。

ニットのグローブは濡れに備えて、替えを1組用意しておくことをおすすめします。雪山登山のグローブは完全防水ではないものが多く、本格的な雨に降られると中が濡れてしまう場合があります。

【装備】雪で固まった、凍った斜面を滑らずに歩くために

雪山低山では、滑り止めとして、軽アイゼンやチェーンスパイクを靴に装着します。

POINT

  • 傾斜の少ない固まった斜面にはチェーンスパイクが有効
  • やや積雪が多め、傾斜もあるときは6本爪アイゼンが有効
  • トレッキングポールで歩行を安定させる

積雪量は少なくても、多くの登山者に踏まれて固くなった雪や、溶けて凍ってを繰り返してカチカチに固まった氷は、登山靴では非常に滑りやすいのです。軽アイゼンは鋭く尖った爪がついています。積雪量がやや多いところのほうがしっかり雪面に刺さりますし、少し傾斜のあるところも安心して歩けるでしょう。4本爪と6本爪がありますが、足裏全体に爪を配置できる6本爪がおすすめです。

チェーンスパイクは足裏全体のチェーンと小さな爪が、斜面で摩擦を作ることで滑りにくくなっています。傾斜が少なく、雪や氷が薄く固まった雪面で威力を発揮します。

軽アイゼンやチェーンスパイクを装着したときは、トレッキングポールもあると、より安定して歩くことができます。

すんなり装着できるよう、本番前に使い方を確認!

雪が積もっているような場面では気温が低く、あまり長時間立ち止まっていたくないので、軽アイゼンやチェーンスパイクは素早く装着したいです。また、装着の仕方を間違えていると歩行中に靴から外れてしまうこともあります。他の登山用具でも同様ですが、軽アイゼンやチェーンスパイクは、本番で使う前に必ず事前に装着方法と、正しく装着された状態を確認しておきましょう。分かりづらい場合は、お店で購入したときにスタッフに確認しながら、その場で試着してみることをおすすめします。

トレッキングポールも、普段使い慣れていないようなら、セッティングが素早くできるように確認しておきましょう。また、雪面で使うときはゴムのキャップを外しておきます。凍ったり踏み固められて堅くなった斜面を歩くとき、キャップがついているとかえって滑ることがあり、危険です。

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プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

雪山低山の歩き方

雪の斜面を踏みしめ、山頂から真っ白く染まった山々を眺める。神々しい景観が広がる雪山登山。冬、いつもの日帰り登山の山で、雪山低山を楽しんでみませんか。

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