いつもの低山が雪をまとったら雪山低山でスノーハイキング。その魅力と、「本格雪山登山」との違いとは?
雪の斜面を踏みしめ、山頂から真っ白く染まった山々を眺める。神々しい景観が広がる雪山登山。冬、いつもの日帰り登山の山で、雪山低山を楽しんでみませんか。
文=西野淑子
標高や難易度により「雪山」もいろいろ
標高や難易度にかかわらず、雪が降り、積もれば「雪山」になります。
- 積雪が多く気象条件も厳しい本格雪山
- 積雪が少ない標高1000m前後の雪山低山
日本アルプスなど3000m級の山々は、11月には雪が降り積もり、5月頃まで雪に覆われています。大量の積雪や強風など気象条件が厳しく、雪山専用の装備や技術が必要となる「本格雪山」の世界です。
一方、私たちが普段楽しんでいる低山も、1〜2月には雪が降ります。奥多摩や丹沢の標高1500m前後の山は、山の中腹から上はうっすらと、しかししっかりと雪が積もることが多いです。標高600m程度の高尾山でも、都心で冷たい雨の降った翌日は雪景色になっていることがあります。関西なら金剛山や大和葛城山、比良山系の山々などが、同様の雪山低山になるでしょう。
日帰りでも雪の魅力を満喫できる雪山低山
雪山低山は日帰りでも楽しむことができます。街で冷たい雨が降った日の翌日、朝早くに出掛けて登山道にたどり着けば、踏み固められていないフカフカの雪の上を歩けるかもしれません。きんと冷えた空気のなか、きゅっきゅっと音を立てながら雪を踏みしめて歩くのは気持ちがよいものです。見上げれば木々も雪をまとっています。針葉樹にうっすら積もった雪が、日の光を浴びて輝いているのも美しいです。
歩き慣れたいつもの日帰り低山が、雪をまとうことでいつもと違った景色を見せてくれます。今年の冬は「雪山低山」を楽しんでみませんか。
アイゼン・ピッケルが必要か否かで区別する
夏山登山の場合は、低山ハイキングでも高山の縦走でも、基本的な服装や装備は変わりませんし、歩行技術や必要となる知識に大きな違いはありません。しかし、積雪が多く気候も厳しい「本格雪山」と、積雪がそれほど多くなく気候が比較的穏やかな「雪山低山」では、必要となる服装や装備、技術が大きく違ってきます。
雪山のレベル分けの大きな基準は「アイゼン・ピッケルが必要か否か」です。
- 本格雪山ではアイゼン・ピッケルの使用が不可欠
- 雪山低山では軽アイゼンやチェーンスパイクを使用
標高の高い山の森林限界を超えたところでは、大量に雪が降り積もり、さらに雪が固く締まる(あるいは凍る)ことで、登山靴で歩くのが困難になります。そのため、雪山専用の装備であるアイゼン・ピッケルが必要となります。アイゼンは登山靴に装着し、鋭い爪が雪面に食い込みます。ピッケルもまた鋭い刃や尖った部分を持ちます。本格雪山では、これらの装備を使いこなすための技術や知識も不可欠です。
低山の場合は積雪量がそれほど多くありませんが、一方で少ない雪が堅く踏み固められていたり、溶けたり凍ったりを繰り返して凍結していることがあります。このような雪面にはアイゼン・ピッケルより、軽アイゼンやチェーンスパイクとトレッキングポールの組み合わせが有効です。
山岳雑誌や書籍などを参考に、行きたい山を考えてみる
とくに行きたい山が決まっておらず、漠然と「雪山、よさそうだな、行ってみたいな」と思っている方は、『山と溪谷』など、山岳雑誌の雪山特集や、雪山登山のルート集などを見てみるとよいでしょう。こんな景色が見てみたい、こんなところを歩いてみたい…とイメージがより具体的になると思います。雪山のハウツウ本にも「初心者におすすめの雪山ルート」などの紹介ページがあれば参考になります。
歩いてみたい雪山低山の積雪状況を調べるには、山域のビジターセンターや山小屋が発信している登山道の情報を確認するとよいでしょう。また、登山者が山行記録を投稿しているサイトやSNSなどに掲載されている登山道の画像も参考になります。ただし、コースタイムや難易度の表現については、投稿者個人の体力・技術や感覚によるところが大きいので、計画時に情報を鵜呑みにしない方がよいです。
プロフィール
西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)
初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。
雪山低山の歩き方
雪の斜面を踏みしめ、山頂から真っ白く染まった山々を眺める。神々しい景観が広がる雪山登山。冬、いつもの日帰り登山の山で、雪山低山を楽しんでみませんか。