連休の登山の計画の立て方、教えます ゴールデンウィーク登山のススメ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今年のゴールデンウィークは、4月29日から5月7日まで、最大9日間の大型連休。この連休でどう山を楽しむか。ゴールデンウィークの登山の楽しみ方とモデルプランを紹介する。

連休の登山を最大限に楽しもう

大和葛城山周辺からの眺め。背景に見えるのは金剛山

2023年のゴールデンウィーク(以下、GW)は、4月29日(土)から5月7日(日)まで最大9日間の休暇となる。9日間すべて、とまではいかずとも、少しでも長く山に登っていたいという人は多いのではないだろうか。

長期の休みだからこそできる山行スタイルが「縦走」だ。荷物を背負って山に分け入り、ひとつ山を越えてはまた山が目の前に立ちはだかる。次の山頂から見える景色はどんなに美しいのだろうか。そんな想いを抱きながら歩けるのは至福のひと時。週末休みではどうしても前後の仕事が気になってしまうが、GWならその心配もない。

また、ひとつの山脈をどっぷり楽しむ縦走ではなく、エリアに点在する山を数多く登るスタイル、「周遊登山」もいいだろう。名山同士が近いのに、移動とコースタイムを計算すると週末では1山しか登れない、という歯痒い経験をした人も多いだろう。エリア内の名山を登っては移動し、また登る、という山行が可能だ。

ここではGWの山行のアドバイスと、山行のヒントとなるモデルコースを紹介する。

GW登山で気をつけたいこと

1、高山はまだ雪が残る

GWは4月末〜5月上旬、街中はすでに春から夏へと移り変わる季節だ。しかし、山域によってはまだ雪が残っている場所もある。日本アルプスや東北・北海道の山などは、残雪があり、5月頭では季節外れの降雪に見舞われる可能性もある。特に長期で山に入る縦走の場合、装備の不備や気象判断ミスが重大な事故につながりやすい。自分の登山レベルを把握し、身の丈にあった登山計画を立てよう。

2、水場や小屋の位置、エスケープルートの確認を

長期で山に登る場合、水場の確認が特に大切。水場があるのか、水場に至るまでどのぐらい水を持っていく必要があるのか。事前のシミュレーションが大切だ。荷物はできるだけ少なくしたいので、小屋は積極的に使いたいが、GWは小屋の予約が集中するので、事前の予約ができるかどうかが焦点になる。また、縦走の場合はいざというときに、迅速かつ安全に降りられるようにエスケープルートを設定しておこう。

3、柔軟な対応ができるように!

せっかくのGWなのに、計画していたルートの天気予報が悪く山行を断念・・・。そんなことにならないように、天気に応じて泊数を減らす、縦走を周遊に変更する、山域を変更するなど、サブプランを決めておくと、長期の休みを無駄にせずに済む。何らかのトラブルで縦走を諦めることになっても、翌日に近辺の低山を登ることができるかもしれない。登る山を決めた後に、異なる山域で第二候補を決めておくとよいだろう。

長期山行 モデルコース

大阪府県の名山をつなぐ

ダイヤモンドトレール縦走/3泊4日

近鉄南大阪線上ノ太子(かみのたいし)駅〜ダイヤモンドトレール北入り口〜二上(にじょう)山〜大和葛城(やまとかつらぎ)山~金剛(こんごう)山~岩湧(いわわき)山~施福寺(せふくじ)/計23時間

大和葛城山の山頂付近は多くの登山者でにぎわう

大阪府と奈良県・和歌山県の府県境を通る長距離自然歩道のダイヤモンドトレール。二上山、大和葛城山、金剛山、岩湧山と名山が連なるほか、標高も1000m前後の低山なので、GWは、ちょうど歩きやすい季節。大阪府下では貴重なブナ林もあり、新緑を楽しみながら歩いてみたい。

大阪府と奈良県・和歌山県の府県境に通る長距離自然歩道・ダイヤモンドトレールを縦走する。

1日目は行動時間が7時間を超えるので早立ちを心掛ける。出発は上ノ太子駅。40分ほど歩いてダイヤモンドトレール北入口へ。以後トレールをたどるが、二上山の山頂はトレールを外れて踏み、尾根伝いに竹内(たけうち)峠へ。さらに、岩橋(いわはし)山を越え、大和葛城山へ。宿泊は、葛城高原ロッジまたは葛城高原キャンプ場へ。

2日目は、やや短くて大和葛城山から水越(みずこし)峠を越え金剛山へ。宿泊はちはや園地金剛山キャンプ場となる。3日目はトレールを紀見(きみ)峠に向かう。中葛城山や千早(ちはや)峠などの峠を経由、紀見峠からトレールをいったん外れ、紀見峠駅近くの紀伊見荘に宿泊する。4日目は紀見峠駅を経由して越ヶ滝林道から岩湧山3合目に上がり、再びトレールと合流、岩湧山を越え、いったん滝畑ダムまで下ってボテ峠、番屋(ばんや)峠を越えて西国札所の施福寺でトレールは終了。30分ほど下ると槇尾(まきお)山バス停がある。(文=加藤芳樹)

GWの金剛山山頂は人でにぎわう

施福寺はダイヤモンドトレールのゴール

⇒ヤマタイムで地図を見る

山行アドバイス

基本的に宿泊施設、キャンプ場を利用して縦走する。ルート中2日目、3日目は水場がある。2日目はキャンプ場しかないのでテント装備は持参しておこう。ちはや園地キャンプ場は要予約。岩湧山の麓にあった越ヶ滝(こしがたき)キャンプ場は、今は休止中なので、紀伊見荘を利用するしかない。葛城高原ロッジと紀伊見荘も予約しておく。無理に宿泊せず、1日目は葛城ロープウェイで下山、2日目は紀見峠からロープウェイ前バス停に、3日目は紀見峠に下山してもよい。

丹沢を南北に縦断。宿泊ならではの絶景が待つ蛭ヶ岳へ

丹沢主脈縦走/1泊2日

大倉(おおくら)〜塔(とう)ノ岳〜丹沢(たんざわ)山〜蛭(ひる)ヶ岳〜姫次(ひめつぎ)〜焼(やけ)山登山口/計12時間40分

鬼ヶ岩から見る新緑の蛭ヶ岳

日帰りで登られることが多い丹沢だが、山小屋が多くて縦走登山も楽しめる。定番はアクセスのよい大倉を起点に南から北へと山塊を縦断するコースだ。

出だしの大倉尾根はひたすら続く階段を登る。登山者でにぎわう塔ノ岳を後にすると、周囲の景観は一変。蛭ヶ岳まで続くササ原の尾根道は、ゴールデンウィークには新緑が始まって色鮮やか。展望も抜群で爽快だ。蛭ヶ岳から丹沢主脈縦走路に向かうと、次第に里山らしい雰囲気になって焼山登山口に下山する。この、歩くにつれて変わる山の雰囲気を感じるのも、縦走登山の楽しみのひとつ。

宿泊は、丹沢最高峰の蛭ヶ岳に立つ、蛭ヶ岳山荘がおすすめだ。ここは、富士山の展望スポットであり、夕暮れや日の出のときには雄大な景観が目の前に広がる。(文=木元康晴)

丹沢大倉尾根からは天気がよければ江ノ島方面の太平洋が望める

大倉尾根の階段を登り切ると木道歩きとなる

⇒ヤマタイムで地図を見る

山行アドバイス

コース上にキャンプ地はなく、山小屋に宿泊することになる。ここでは蛭ヶ岳頂上の蛭ヶ岳山荘(Tel:090-2252-3203)で宿泊を想定しているが、稜線上にはいくつも山小屋が点在しているので、自分のペースに合わせて自由に設定してもよい。また、丹沢ではヤマビル対策が必須。肌の露出は極力避け、ヒルが嫌う塩や忌避剤を準備しておこう。

九州を代表する名山3つをそれぞれ周遊で楽しむ

霧島・阿蘇・くじゅう周遊/2泊3日

高千穂(たかちほ)河原駐車場〜高千穂峰<往復>、草千里(くさせんり)駐車場〜阿蘇烏帽子(あそえぼし)岳<往復>、吉武台(よしぶだい)牧場登山口〜万年(はね)山<往復>/高千穂峰3時間25分、阿蘇烏帽子岳1時間55分、万年山3時間20分

美しい草千里ヶ原と烏帽子岳

九州を代表する山域といえば、霧島、阿蘇、くじゅうの3つ。今回はこれらの山域を一気にめぐる欲張りプランを紹介しよう。いずれの山も登山口まで行くには車での移動が便利なので、レンタカーを借りるとよい。

まずは、宮崎・鹿児島県境に連なる霧島連山の高千穂だ。天孫降臨伝説・天の逆鉾でも知られている。途中に迫力のある御鉢を眺めることができる。初夏にはミヤマキリシマが赤茶けた火山礫に彩りを添える。往復で3時間20分程度。

次にめざすのは熊本県のシンボル・阿蘇。5つの山々の総称である「阿蘇五岳」のなかでも、草千里からの烏帽子岳周回コースは一面の草原風景を見ることができる。往復で2時間10分程度。

最後は大分県玖珠町にある万年山に向かおう。玖珠地方にはメサと呼ばれるテーブル状の山が多い。中腹には九州最大級のミヤマキリシマの群生地がある。本ルートは往復で3時間20分程度で歩ける。(文=池田浩伸)

御鉢の火口から高千穂峰を眺める

万年山の山頂部は開けている

⇒ヤマタイムで高千穂山の地図を見る

⇒ヤマタイムで阿蘇烏帽子岳の地図を見る

⇒ヤマタイムで万年山の地図を見る

山行アドバイス

どの山も山麓は湯どころが有名で、山と温泉両方を楽しめる。高千穂峰の馬の背付近は強風に注意。阿蘇烏帽子岳で歩き足りなければ、近くの杵島(きしま)岳まで足を伸ばすことも可能だ。万年山は、反時計周りの周回が登りやすい。

ゴールデンウィークに登りたい山

2024年のGWは、4月27日(土)から4月29日(月)の3連休と、5月3日(金)から5月6日(月)の4連休の長期休みとなります。 この大型連休をどのように過ごしますか?  長距離縦走から登山と観光を混ぜた計画まで、GWだからこそできる登山のプランを紹介します。

編集部おすすめ記事