冬山登山は夏山以上に様々なリスクが存在することを認識しよう。 島崎三歩の「山岳通信」 第99号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2017年12月27日に配信された第99号では、すっかり雪に包まれた県内の山での遭難事例について触れている。

 

12月27日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第99号では、11月22日~12月17日に起きた5件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

 

  • 11月22日、長野市戸隠連峰で、50歳の女性が単独で入山後に行方不明となる山岳遭難が発生。24日に心肺停止状態で発見となり、その後、死亡が確認された。

戸隠の遭難現場へ向かう救助隊員(写真提供:長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)11月22日付)

 

  • 11月26日、北アルプス白馬乗鞍岳で、バックカントリースキーのため入山した35歳の男性が、天狗原付近で熊に襲われ頭部などに重傷を負う山岳遭難が発生した。

  • 11月28日、北安曇郡小谷村大網峠付近で、72歳と73歳と74歳の3名の男性が、「塩の道」街道をトレッキング中に道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。29日に県警ヘリで救助された。

「塩の道」街道の遭難現場(写真提供:長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)11月28日付)

 

  • 12月17日、八ヶ岳連峰硫黄岳で、40歳の男性がジョウゴ沢付近でアイスクライミング中にバランスを崩し滑落・負傷する山岳遭難が発生。茅野署員及び諏訪地区遭対協隊員が救助した。男性は軽傷の模様。

硫黄岳ジョウゴ沢付近の状況(写真提供:長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)12月22日付)

 

  • 12月17日、中央アルプス木曽駒ヶ岳で、61歳の男性が頂上から千畳敷に向け下山中、中岳付近で何らかの原因により発病し、意識不明で発見となる山岳遭難が発生。駒ヶ根署員と中ア遭対協救助隊により救助されたものの、死亡が確認された。

木曽駒ヶ岳における遭難現場の状況(写真提供:長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)12月22日付)

 

山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

長野県内の山間地は、大町大北地域、中野飯山地域を中心に既にまとまった積雪があり、その他の山域でも今後降雪による積雪の増加が見込まれます。特に低気圧や前線の通過時は大雪などの大荒れの天候となります。入山する際は冬山装備を携行するとともに、天候や積雪情報を収集し慎重な判断と行動をお願いします。

11月28日発生した小谷村での道迷い遭難は積雪および当日の降雪により、登山道が不明瞭になったことが原因の一つにありました。冬山は夏山のような明瞭な登山道はありません。また、夏は通行できた登山道も雪崩の危険等により通行できない場合があります。これからの時期に登山に行く場合は、このような冬山の特徴を理解した上で十分な事前準備をしてから入山してください。

また、12月3週は2件の遭難が発生しました。いずれの事案も視界不良等により安全確保ができないためヘリコプターによる救助は断念し、地上部隊による救助活動を行いました。当然、このような場合は遭難者や同行者は救助隊と合流するまでの間、シェルターを構築したり、安全な場所へ移動するなど、自らの安全を自分たちで守らなければなりません。冬山登山は夏山以上に様々なリスクが存在します。それらをしっかりと認識し、万が一の備えをしておきましょう。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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